大阪桐蔭、苦しかった1年 西谷監督「主将中心に良いチームだった」
2025年7月27日16時02分
(27日、第107回全国高校野球選手権大阪大会決勝 東大阪大柏原6―5大阪桐蔭)
昨夏の大阪王者、大阪桐蔭にとって苦しかった1年間が終わった。
甲子園が終わった後、昨秋は11年連続で近畿大会出場を決めた。だがその前の大阪大会決勝はライバルの履正社に敗れて、2位での出場だった。
その近畿大会も1回戦で負けてしまい、選抜大会出場が5年連続で途切れた。
毎年のように甲子園に出場してきた大阪桐蔭に対する周りの評価は、厳しい。選手たちの耳に「弱くなった」という声が聞こえてきた。
昨年から主力の宮本楽久(3年)は「今までの先輩方が強い大阪桐蔭を作ってきたからこそ、逆に負けたときの反発は大きいとわかっていた。だからこそ、見返したい気持ちでやってきた」。
そんな宮本たちの目標は、一点に絞られていた。「自分たちが最高学年になって、甲子園に出たい」
西谷浩一監督の思いも一緒だった。
「このチームでは甲子園に出られていない。出られないまま、終わりたくない」
夏までの長い準備期間で、打撃改造に着手した。新基準の低反発バットよりさらに細い特注のバットで練習。あえて大きなスイングを意識させてから、打撃のフォームを作り直す「荒療治」にも取り組んだ。
西谷監督は「こぢんまりするんじゃない。形を1回潰して、(バットを)振るところからスタートした」。
その成果は夏に出た。
準決勝までの6試合で計71安打72得点。ライバル履正社とは準決勝で対戦し、8―1で七回コールド勝ちした。
5大会連続でたどり着いた決勝。東大阪大柏原に対し最大4点差を追う展開となったが、七回には内野安打と四死球をからめて追いついた。
だが、最後は延長十回タイブレークで力つきた。
西谷監督は試合後、健闘した選手たちをたたえた。
「接戦になったので、やっぱり監督が勝たしてやれなかったと思っています。主将を中心に良いチームだった。甲子園に導けない監督の力不足を感じています」
その主将の中野大虎(3年)は、準決勝で7回101球を投げた。決勝は四回から救援して十回まで124球を投げた。
攻撃中は何度も選手たちに駆け寄って笑顔で励ました。マウンドからも守備陣やベンチに向かって、「もっと声を出せ」と身ぶり手ぶりで盛り上げるように促した。
最後の打者が二ゴロに倒れると、中野はうなだれた。だが、最初にベンチを飛び出して、落ちたバットを取りにいった。
試合後、中野は「今年の夏の目標は日本一までやりきることだった。そこまで泣かないでおこうって決めてたんで……」と語り、少し言葉に詰まった。
「力を出し切れたかどうかは、自分次第になると思う。でも、チームとしては最後までやりきれた」
重圧と戦い続けた大阪桐蔭の主将は、後悔を口にしなかった。=GOSANDO南港(室田賢)