「戻れよ!」「終わってないよ!」兵庫・斎藤知事 質問答え切らぬまま会見を“強制終了”に記者ら激怒…怒号飛び交う事態に
兵庫県・斎藤元彦知事(写真:時事通信)
12月3日、兵庫県の斎藤元彦知事(48)が定例会見を行ったが、終盤には怒号が飛び交う紛糾する事態となった。
12月2日、兵庫県議会に「インターネット上の誹謗中傷、差別等による人権侵害の防止に関する条例案」が提出された。法案が成立すれば、不当な差別等に対して県が削除要請・発信者への行政指導を実施することが可能となる。
会見後半、フリーランスの記者が、上記の条例案について「これそもそも2023年の10月に、ご自身の明石市長との電話のやり取りが漏れて、それを泉房穂氏のSNS発信で広まったことについて、『誤った内容が数十万人に拡散したことが恐ろしい』という風に感じられたことから、制定に向けて動き始めたと認識しております」と経緯を説明。
前明石市長の泉房穂氏(62)は’23年9月11日、自身のXに《斎藤知事から明石市に本日、お詫びの電話があったとのこと。「県からの提案が遅れていて申し訳ない。明石市が検討していただけるなら、ありがたい」との趣旨だったようだ。マスコミの皆さん、よく確認のうえ、報道してくださいね。悪いのは、明石ではありません》と投稿。
斎藤氏は翌12日の会見で「今回の件は、あくまで知事と現役の市長との電話の内容なので、これが外部に、前市長とはいえ伝わり、それが誤った内容でSNSを通じて数十万人に拡散した形になるので、これ自体はやはり恐ろしいことであり、大変遺憾」と発言し、泉氏の投稿は削除された。
こうした経緯から、先の記者は、「この経緯とか当時の知事の発言を読んでいると、今回の条例案というのは当初想定されたものよりもだいぶ異なる、いわば後退した内容になったように思えるんですけど、そこら辺はいかがですか?」と質問。
すると斎藤氏は、今回の条例案について専門家と議論してきたといい、「インターネット上における誹謗中傷の中で、特定の地域や特定の人種などに対する差別などについては、条例に基づいて適切に対応していくという趣旨」とし、「もう一方で、誹謗中傷などに関しては、被害を受けられた方が相談や対処していくための体制を構築していくということで、条例案としては今できることをしっかり踏まえたうえでさしていただいた適切な内容だと思います」と従来通りの説明を繰り返した。
続けて記者が「削除要請とか、そこに対して慎重になる、表現の自由とか、配慮とか行政の介入を抑制するっていうスタンスは理解できる」としたうえで、担当の部署からは「パブリックコメントでは、個人に対する誹謗中傷やプライバシー侵害の対応が不十分ではないかという内容のパブコメが多かったと聞いている」とし、「県民の受け止め方とのギャップがどこから生じるか」と考えを質問した。
斎藤氏は「さまざまな意見があったことは承知している」としつつ、「その辺りもやはりご指摘いただいた個人間の案件については行政がどこまで介入できるのかという指摘も、専門家の方からご指摘、懸念もあった」と説明。相談窓口の拡充やSNSなどにおける誹謗中傷などは止めるべきだと啓発する趣旨を「条例の中で明記させていただいた」と発言。
これに対し記者は、斎藤氏の当時の会見での発言を見ると「主に個人間の」SNS上での誤情報や安易な拡散、ネット上での誹謗中傷など「名誉、プライバシーなどの侵害が大きな問題になっている」と発言していたと指摘。「これはまさに昨年の兵庫県知事選で起こったことであり、斎藤知事を応援した立花孝史被告が竹内県議についての発信で行っていたこと」だと追及した。
昨年11月の兵庫県知事選挙でNHKから国民を守る党の立花孝志氏(58)は自身の当選を目指さない2馬力選挙を行い、斎藤氏を応援。斎藤氏の疑惑を追及する百条委員会の委員を務めた故・竹内英明県議(享年50)を「黒幕」などと名指しし、名誉毀損の容疑で現在逮捕、起訴されている。
ところが斎藤氏は、刑事告発されている立花氏による個別の誹謗中傷などについては「個別の投稿にはコメントしない」「承知していない」などとこれまでコメントを避けているため、記者は「今回の条例案というのは、あくまでも一昨年の明石市とのやり取りをめぐることを踏まえた条例であって、知事選のことは関係ないということ?」と質問。
これに斎藤氏は「質問の趣旨があんまり理解できていない側面もありますけど、そこは申し訳ないですけど」といい「これまで申し上げてきた通り、ネット上における誹謗中種はやるべきではない」と、従来通りの一般論と条例の趣旨を繰り返した。
記者が「ちょっと何をおっしゃってるのかわからないのですけど」と遮るも、斎藤氏は「今の時代に応じた適切な趣旨」などと意に介さず説明を継続。
呆れた記者が「えっと、『ご質問の趣旨がわからない』という非常に挑発的なことを言われたのでわかりやすくいいます」と、条例案は「兵庫県知事選挙を踏まえた内容ではないのかと聞いています」と簡潔に質問。「斎藤さんのご自身の恐怖を感じたことから始まった条例ですが、その後に起こった兵庫県知事選挙における誹謗中傷、あなたを応援した立花孝志の行為等は反映されていないということでいいですか」と改めて聞いた。
すると、斎藤氏は「前回の選挙については私自身は自分ができることを精一杯させていただいた」と発言。質問に正面からは回答するのを避け、話を続けたところ、これに業を煮やした別のフリーランスの記者が、質問に明確に答えていないことを会見の幹事社に注意するよう割って入った。
これに対し斎藤氏は「幹事社さん、また私の発言中に質問者以外が大きな声を出されてますが、その点についてご見解を」と、逆に “ルール違反”をもとに幹事社に迫る。
幹事社は記者の不規則発言をたしなめつつも、「知事におかれましても、我々の質問の趣旨を的確に捉えていただいて、率直にご回答いただけるようお願い申し上げます」と依頼した。
すると、斉藤氏は「“これまで通り”しっかり答えさせていただきたい」と反応。思わず記者たちからは「回答になっていない」などと一斉に苦情が。しかし、斎藤氏は「幹事社さん、また大きな声を出された方がおりますけど」と、再び記者の不規則発言を幹事社に言いつけたが 、会場からは「知事が答えないからこうなってる!」などと怒号が飛び交った。
それでも斎藤氏は動じる様子を見せることなく、最後まで回答を要求する記者の”不規則発言”に問題があるスタンスを貫き、「じゃあよろしいですか」と会見を半ば強制的に終わらせた。これに「終わってないよ!」「戻れよ!」と記者たちからの怒号が飛び交うも、斎藤氏は気にすることなく会場をあとにしていた。
2馬力選挙で再選してから1年以上が経過したが、斎藤氏が記者の質問に”率直”に答える日は来るのだろうか。