大阪万博:大屋根リング「ゆがんでいる」…万博めぐりSNSでデマや不正確な情報、実際は梁も斜めになるよう設計 : 読売新聞
大阪・関西万博を巡り、SNSで不正確な情報が拡散し、いたずらに不安をあおるような投稿も相次いでいる。専門家は「主催者側は正確な情報を発信することが重要だ」と指摘している。
■不具合「ない」
人工島・ 夢洲(ゆめしま) (大阪市此花区)の会場にある世界最大の木造建築・大屋根リング(1周約2キロ、高さ約20メートル)。開幕日の13日以降、X(旧ツイッター)では、格子状に組まれた木材の 梁(はり) の写真が投稿され、その後、「ゆがんでいる」などの指摘が相次いだ。
開幕に合わせて万博会場を訪れた大勢の来場者(13日、大阪市此花区で、読売ヘリから)=前田尚紀撮影13日は、大勢の来場者がループ状の遊歩道になっているリングに上がっており、「一気に壊れて大惨事」「崩落するのでは」といった反応が広がった。
日本国際博覧会協会(万博協会)によると、夢洲は埋め立て地のため沈下しないよう地盤を固めているが、それでも沈下した場合に建物に影響が出ないよう、一部の柱の高さを変えており、これに伴って梁も斜めになるよう設計している。担当幹部は「決して(重みで)ゆがんでいるわけではない」と説明する。
施工会社の清水建設も取材に「設計に沿ったもので、不具合はない」と回答した。
リングを巡っては、2月頃から、使用される木材の大半がフィンランド産だとのうわさも広がった。ネット記事が発信源で、リングを設計した建築家の藤本壮介氏はXで「国産材を約68%使用しており事実と異なる」と反論した。
万博協会は、柱に使う集成材にフィンランドやスウェーデンから調達した木材が含まれるとしつつ、「ほぼフィンランド産なんてことはあり得ない」と否定。公式サイトでも「国産(スギ、ヒノキ)が約7割、外国産(オウシュウアカマツ)が約3割」としている。
■税金投入「13兆円」
「万博に13兆円の税金が投じられている」との言説も流布している。国と大阪府・大阪市が会場建設費として公金で負担するのは全体(2350億円)の3分の2の1566億円。日本館の建設費(最大360億円)などを含めても、隔たりが大きい。
万博が開幕し、関係者に感謝を述べる吉村知事(大阪市中央区で)「13兆円」の出どころとみられるのが、経済産業省などがまとめた資料「大阪・関西万博に関連する国の費用について」。ここには「その他の費用」として、国費負担がある関西圏の高速道路や鉄道、南海トラフ巨大地震対策といったインフラ整備事業約10兆円などが記載されている。
同省博覧会推進室は「すでに進めていた事業も多く、万博のためだけに使った費用ではない」と説明。万博に13兆円の税金が投じられているとするのは、不正確な表現と言える。
法政大の藤代裕之教授(ソーシャルメディア論)は「注目度が高いイベントにもかかわらず、万博協会側の公式な発信が少ないことが、真偽が定かでない情報の拡散につながっている。特に安全性にかかわる話は不信感にもつながり、来場しない人も出てくるだろう。協会にはより丁寧な説明が求められる」と指摘する。