上達の鍵は「振り返り」~セルフリフレクションのすすめ(TED)

セルフリフレクション(自己内省)をすすめるTEDトークを紹介します。

内省は、自己成長や日々の暮らしをよくするために欠かせない行動です。

タイトルは、Self-Reflection: A Journey to Improvement (セルフリフレクション:向上する旅)。学生の Maria Li(マリア・リー)さんの講演です。

セルフリフレクション

収録は2022年、動画の長さは7分。動画のあとに抄訳を書きます。

☆TEDの紹介はこちら⇒TEDの記事のまとめ(1)ミニマリスト的生き方の参考に

長さは7分ですぐに終わるし、内容はシンプルなのでとっつきやすいと思います。

試合でいいスコアが出せなかった

私はゴルフをやっています。まあまあ上手なほうだと思っています。

練習中はいいスコアが出るんです。78とか、76とか、最高で75を出したこともあります。ゴルフのスコアとしてはかなりいい方です。

だから、こう思うでしょう? 「練習でうまくいくなら、本番でもうまくいくはずだ」って。つまり、試合でも同じようにプレーできる、と。

でも、どうだったと思いますか?

トーナメントでは、80、85、さらには90というスコアを出してしまいました。

これはたとえるなら、30メートルの距離からゴールを決められるサッカー選手が、大事な試合になるとゴールを大きく外してしまうようなものです。

それもちょっと外すとか、ゴールキーパーに止められるレベルじゃなくて、ボールがとなりのグラウンドまで飛んでいってしまうような感じ。

私がゴルフの話をしているのは、みなさんにもこういうことがあるから。日常やっていることで、得意なこともあれば、あまり得意じゃないこともありますよね。

やってみて、やっぱり自分には向いてないと気づくこともあります。

だから、私たちは「上達したい」「もっとよくなりたい」と思います。でも、思ったようにうまくいくとは限りません。

人生には、いろんなことが起きます。たとえば私の場合、課外活動、大学出願の準備、新しいプロジェクト、おまけに、週末に親戚が訪ねてくるとか。

じゃあ、どうすればすべてをこなせるのでしょう?

今あることをこなすだけでなく、もっと上達したいと思っていることに対して、どうやって向き合えばいいのでしょうか?

鍵はセルフリフレクション

ここで、皆さんがすべきことをお伝えします。

それは 内省(self-reflection)です。

内省は、いま自分がやっていることをいったん止めて、一歩引いて、自分の生活を振り返ることです。

「手を止めたら、生産性が落ちるのでは?」と感じるかもしれません。でも内省は意識的に行う分析的なプロセスです。

具体的には、次のような問いかけをします:

・今、自分は何をしているのか

・そのことに満足しているのか

・どういうやり方でそれをしているのか

こうした振り返りをすると、パフォーマンスが向上します。

私の話を裏付ける研究があります。

2016年に『ハーバード・ビジネス・レビュー』で発表されたある研究です。

コールセンターの社員のパフォーマンスを測定したものですが、毎日終業後に15分間内省をしたグループは、そうでない人たちに比べて、10日間で23%も仕事の成果が向上しました。

これはすごいですよね?

こんなふうに振り返ってみた

セルフリフレクションってどんなふうにやるの?と思いますよね。

私は、トーナメントが終わったあと、特にひどいスコアだったときには、自分のパフォーマンスを振り返る時間を取りました。

そして、自分自身にこんな質問をしました:

・練習のときと比べて、どうだったか?

・体調やメンタルの状態はプレーにどう影響したか?

・朝ごはんはちゃんと食べたか?

・十分な睡眠はとれていたか?

こうした問いは、一見当たり前すぎるように感じるかもしれません。でも、出てきた答えはけっして心地よいものではありませんでした。

たとえば:

「睡眠はどうだった?」

──アートの課題で夜遅くまで起きてて、睡眠時間は5時間。朝はエスプレッソを3杯飲んだ。

「メンタルの準備はできていた?」

──試合前に廊下で友達と「セラフィムってマジでかっこいいよね」とかいう話に夢中になっていたから、準備どころじゃなかった。

こんなふうに考えることは、正直ちょっと胸にちくりと来ます。でも、答えてみて、自分のプレー内容に納得できました。

内省の結果、変わったこと

内省とは、「こうだったらよかったのに」と過去の理想を思い巡らすことではありません。

実際に何が起こったのか見つめ直すことです。

「こうなればよかった」「こうなるはずだった」と空想することではありません。

内省は、自分の行動を変えるための原動力であり、あなたを次のステージに押し上げる力です。

内省を始めたら、ゴルフのプレーがよくなりました。

大会中の不安も減って、今や、行動に集中できるようになりました。

不安にとらわれず、やるべきことに意識を向けられるようになったのです。

その結果、練習ラウンドのベストスコアに限りなく近いプレーができるようになりました。

ある大会では、「パーより2打多いスコア(2オーバー)」というベストスコアを出し、ピカピカの新しいトロフィーを獲得することもできました。

だから、私の経験から皆さんも学んでください。

セルフリフレクションの始め方

内省する本当の目的は、あなた自身の人生を取り戻し、自分が望んでいることに気づくことです。

セルフリフレクションは、今のやり方を見直し、無限の成長につなげるためのツールです。

うまく内省するコツをお伝えします。

1.改善したい分野に関して、広い視点で見つけた質問を10個書き出します。

2.以下のような問いかけをして、目標を明確にします。

 - 私は何を達成したいのか?

 - なぜ、それを達成したいのか?

3.自分のニーズに合わせて目標を調整します。

4.内省するとき、成功体験にも目を向けましょう。

5.ちょっと居心地が悪くなる質問にも向き合ってください。

たとえば、やらなきゃいけなかったのに、やれなかった本当の理由とか。

やりやすい方法を見つける

何より大事なのは、自然にセルフリフレクションできる方法を見つけることです。

それは、ノートに書くことかもしれません。

ボイスメモに録音することかもしれません。

あるいは、一人で静かに散歩しながら、心の中で問いかけることかもしれません。

大切なのは、いつでも、どこでもできるということです。

次に公園を歩いているとき、あるいはキッチンでコーヒーを飲んでいるときに、ぜひ、いろいろな角度から回答ができる、深く考えないと答えられない質問(open-ended contemplative questions)を自分にしてください。

そして、自分自身の無限の成長を感じてください。

////抄訳ここまで////

補足:オープンエンドの質問

リーさんが語っているセルフリフレクションのやり方の最初のステップを、「いろいろな角度から回答ができる、考えないと答えられない質問を10個する」と訳しましたが、これは、イエス・ノーで答えるのではない、文章で答えるタイプの質問をすることです。

たとえば、家を片付けてスッキリ暮らしたいという思いがあるとき、以下のような質問が考えられます。

1.すっきりした暮らしの何がいいのか?

2.理想の空間とは?どんな部屋で、どんな気持ちで過ごしたいか?

3.片付けができた日と、できなかった日の違いは?(時間?気分?外部要因?)

4.片付けを後まわしにしてしまう原因は何?

5.ものを手放すときに、ひっかかるのはどんなとき? どんな感情がある?

6.片付いた部屋で何をしたい?

7.「片付けなきゃ」と思うたびに何をしている?

8.1年前と比べて、暮らしはどう変わった?

9.増えたものや減ったものはあるか?

10.片付けられる私ってどんな人だろう?

これはあくまで例で、自分の課題にまつわることなら、どんな質問をしてもいいと思います。いろいろ質問しているうちに、目指しているものが見えてきます。

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1日15分のセルフリフレクションのすすめ

リーさんがプレゼンで語っていることは、そんなに目新しいことではありません。

セルフリフレクションが人生の質を向上させる強力なツールだと知っている人は多いと思います。

ただ、それを習慣にしている人は意外に少ないかもしれません。

忙しさに追われて、振り返る時間が取れない人もいれば、そもそも自分の行動をじっくり見つめるのが苦手な人もいます。また、「考えるより行動!」というタイプの人は、立ち止まって振り返ることをあまり重要視しないかもしれません。

さらに、振り返っているつもりでも、ただ単に自分を責めていたり、うまくいかなかったことを後悔しているだけのこともありますよね。

セルフリフレクションを習慣にすると、日々の選択や行動に意識的になるので、目的に向かってより効果的に進めると思います。

私も、毎日、夕方か夜に、1日の振り返りをして、「今日は何がよかったか?「どこか改善できることはないか?」と考えています。

そして、改善できそうなことは、翌日試してみます。

簡単に振り返るだけでも、次の日の行動が変わるので、ぜひやってみてください。

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