FRBは夏の冷や汗、トランプ関税ようやくCPI反映へ-発表前予想

トランプ関税は米インフレを押し上げると、エコノミストらは長らく警告してきた。その信頼性は次の米消費者物価指数(CPI)で問われる。CPIは5月まで、4カ月連続してエコノミスト予想を下回った。6月統計では家具や玩具、自動車など関税の影響を受けやすい品目の価格上昇が予測され、これまでの穏やかな物価推移の連鎖に終止符が打たれる見通しだ。

  関税によるインフレ加速を見据え、今年は利下げを見送っている連邦準備制度理事会(FRB)にとっては、やっかいな状況だ。インフレの数値が再び鈍いものとなれば、トランプ大統領からの利下げ圧力とパウエル議長への個人攻撃はますます強まりそうだ。

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  エコノミストやFRB当局者らの間には、夏には関税のコストが消費者に転嫁され、インフレは加速するとの共通認識がある。企業は在庫でやり繰りして関税を吸収してきたが、そろそろ限界が来る見通しだ。EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏はインフレ率の前月比上昇について、その3分の1は関税が原因になると予想。夏が終わりに向かうにつれ「その影響は大きくなる」と述べた。

  トランプ氏は先週、銅やカナダ、ブラジルを標的とした関税攻勢を強化し、8月に発動すると表明した。BMOキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「大統領が複数の国を相手に新たな高率関税を脅している現在、関税インフレの脅威が続いていることは間違いない」と述べた。

6月米CPI 5月の数値 6月の予想 CPI前月比 +0.1% +0.3% コアCPI前月比 +0.1% +0.3% CPI前年同月比 +2.4% +2.6% コアCPI前年同月比 +2.8% +2.9%

  ニューヨーク連銀の5月調査では、企業の7割強が関税によるコストを価格に転嫁していた。トヨタは今月、ナイキは秋に値上げを予定している。サービス部門でも航空運賃やホテル料金などで、インフレ圧力が強まる可能性がある。

FOMC

  6月17-18日開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、当局者の間で金利見通しに開きがあり、その主な要因は関税の影響に関する見解の違いだった。パウエル議長は1日のイベントで「夏にかけていくらか数値が上がると予想している」と述べ、その影響が「想定より高いのか低いのか、あるいは遅いのか早いのか」は今後明らかになる可能性があると話した。

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  市場は今月末の利下げ確率をほぼゼロと見ている。トランプ氏が指名したウォラー、ボウマン両理事はインフレが低いままなら7月の利下げ検討の余地はあると述べているが、大半の当局者はもっと遅い時期を予想している。

  パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トムズ氏は最新の関税引き上げ示唆について、トランプ氏がこれまでのように、また緩和の方向に動く可能性があると指摘。「極めて高い関税水準が数週間意識され、一時的に懸念が再燃する可能性はあるが、企業やサプライチェーンは進化しており、こうしたボラティリティーを考慮することに慣れてきている」と述べた。

原題:Tariff Impact Seen Ending Streak of Benign US Inflation Readings(抜粋)

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