今最高コスパ。グラボは「AMD Radeon RX 9070 XT」を推します

Image: Adriano Contreras - Gizmodo US

AMDがRadeon RX 9070 XTを発売しました。米GizmodoのKyle Barr記者がベンチマークしてますので、以下どうぞ!

4Kでのゲームプレイを最大限楽しむには、GPUにいくらかければいいんでしょうか? 「安上がり」なんて方法はないのが現状ですが、AMDのRadeon RX 9070 XTは、今一番コスパの高い手段です。600ドル(約9万円)で、4KでMax設定でも滑らかにプレイできるフレームレートを実現できるんです。もはや、Nvidiaのマルチフレーム生成やDLSS 4の凄さも(ほぼ)忘れてしまうほどです。

AMDの攻めた値付けは、ふたつの製品に強烈なパンチを見舞っています。ひとつはNvidiaのGeForce RTX 5070 Ti(定価750ドル、日本価格14万8800円)、もうひとつはAMD自身のRadeon RX 9070(定価550ドル≒8万2000円)です。

RX 9070がNvidiaのRTX 5070と同等の性能だとしたら、より高性能を求める人は50ドル足してRX 9070 XTを買うでしょう。RTX 5070 Tiは、ゲームによってはRX 9070 XTのパフォーマンスを多少上回るかも知れませんが、NvidiaのGPUの在庫が消えて価格高騰中の今、若干の差だけでは選ぶ理由になりません。

RX 9070 XTの成否は、AMDが需要に見合う供給をできるかどうかにかかっています。在庫が買い占められず、ほしい人が定価で買える状態を維持できれば、今年買えるグラフィックスカードの中で最大のコスパを実現するはずです。Nvidia RTX 5080 Founders Editionのような華やかさはないかもしれませんが、4Kでゲームするために1,000ドル以上出すべきじゃありません。AMDが正しいのは、ハイエンドよりミッドレンジのGPUにフォーカスしたことです。

とはいえ、RX 9070 XTにも問題がないわけじゃありません。AMDのドライバー(Adrenalin Edition)のプレリリース版では、映像がバギーだったりフレームが引っかかったり、ゲームによってはクラッシュしたりしました。この点Nvidiaの最新カードでは、ベータ版ドライバーでも大丈夫だったんですが…でももちろんどちらのカードにも課題はあるので、AMDがとくにバグが多いとかではないです。

50ドルの差で大違い

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このレビュー用に、AMDはXFX Swift AMD Radeon RX 9070 XTを提供してくれました。スマートな外見の3ファンのカードで、角度の付いたエッジがPCの中で超高層ビルのように見えます。3.5スロットと、かなり大きなカードでもあり、僕のPCのマザーボード上ではPCIeスロット全体を使い切るくらいでした。

RX 9070も9070 XTも、RAMは16GBのGDDR 6で、帯域幅は644.6GB。どちらもRDNA 4アーキテクチャで、これはNvidiaのRTX 50シリーズにおける生成AIチップアーキテクチャ・Blackwellに相当するものです。RDNA 4は、従来のRX 7900シリーズのようなカードからリデザインされた演算ユニットで構成されていて、より高いクロック速度を実現、電力効率も改善しました。

RX 9070・9070 XTともにPCIe 5.0バスで動作しますが、9070 XTではクロック周波数を2.9GHzにまで高められます。同じメモリを入れているとはいえ、RX 9070 XTは演算ユニット数が64基(9070は56基)に対し、9070は56基と、スピード感はだいぶ違います。ベンチマークにも違いが現れていて、9070 XTのほうがグラフィックスもAIもより高性能です。

ベンチマークはRTX 5070 Tiも一部上回る

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600ドルという価格でこのパフォーマンスを出せるGPUは、現在他社にはありません。2023年に550ドル(約8万2000円)で発売されたAMD Radeon RX 7900 GREより高性能なのはもちろんですが、今年発売されたばかりの750ドル(日本価格14万8800円)のNvidia RTX 5070 Tiと同等以上のフレームレートを叩き出せるんです。

以下にベンチマーク結果を列挙していきますが、テスト環境はOrigin PC Newron 3500Xで、Intel Core Ultra 9 285K CPUと32GBのDDR5・6400 MT/sのRAM搭載です。Nvidiaのグラフィックスカードも、同じ条件でテストしてあります。

3D Markでの人工ベンチマークでは、実際のゲームでのパフォーマンスは測れませんが、ハードウェアの能力はわかります。3D Mark Steel Nomadでのテストでは、RT 9070 XTはNvidiaのRTX 5070 Tiより200ポイントほど高いスコアを出しました。

が、レイトレ性能が求められるテストではちょっと違う結果です。3D Mark Port Royalでは、RT 9070 XTはRTX 5070 Tiより1,260ポイント低く、3D Mark Speed Wayでは1,535ポイント低いスコアとなりました。

一方AI系では、Geekbench AIでのRX 9070 XTのスコアは26,645で、RTX 5070 Tiの22,022を軽く上回りました

4Kで(ほぼ)全般に十分なフレームレート

実際のゲームプレイのさばき具合も見てみましょう。『サイバーパンク 2077』を4Kでプレイするテストでは、RX 9070 XTはFSRなしでもRTX 5070 Tiと実質肩を並べ、FSR 4とDLSS 4をそれぞれ使った場合でも同等のFPSを出せていました。1080pではRTX 5070 Tiより数フレーム少なくなりましたが、プレイはまったく滑らかです。『Horizon Zero Dawn: Remastered』では、AIアップスケーリング有無にかかわらず、1080pと4K両方で、RX 9070 XTがRTX 5070 Tiを数%上回りました

ただ『黒神話: 悟空』に関しては、AMDのカードはNvidiaに比べて不得意という評判通りで、これはFSRを有効にしても変わりませんでした。最高設定で4Kにすると、AMDのアップスケーリング技術を以てしても25FPSを超えることがなく、RTX 5070 Tiの平均52FPSにはまったく及びませんでした。

最近のゲームではどうでしょうか。『Avowed』で、一番重い部分(Emerald Stair)だと、RX 9070 XTは4K・ウルトラ設定で平均して50〜53FPSを出しました。『Kingdom Come Deliverance II』の最初の部分では、FSRなしで55FPS前後、FSRありで80FPS前後でした。

RX 9070 XTが、RTX 5070 Tiをかなり上回るゲームもいくつかありました。『Marvel's Spider-Man 2』では4Kで60FPS以上(このゲームの特徴として、パフォーマンスが上下しつつも)出していました。この数字は、RTX 5070でも5070 Tiでも出せなかったものです。

ただし、タイトルによってはひどい部分もありました。RX 9070 XTで『ホグワーツ・レガシー』をプレイしたときは、屋外でも屋内でも、突然理由なくFPSが下がることがありました。『Dragon Age: The Veilguard』でも、最初の部分でフレームがずっとガタガタしていて、プレイしにくくなりました。

これらの問題は一部のタイトルでしか起こっておらず、ドライバーの問題だろうと考えています。AMDにも確認してみましたが、この記事執筆時点ではまだ原因がわかっていません。テストしたときはまだドライバーがベータ版だったので、正式版で再度確認してみたいです。

FSR 4サポート拡大を

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AMDはNvidiaに対し、ハードウェアの性能だけでなく、アップスケーリング技術でも対抗する必要があります。その答えがFSR 4(FidelityFX Super Resolution 4)で、新AIアクセラレーターが組み込まれたRDNA 4アーキテクチャでのみ使える技術です。フレームを増やしつつ、AIによるノイズを低減し、より精細なディテールを表現できるという触れ込みです。

僕はFSR 2対応のゲームとFSR 3対応のゲームをRX 9070 XTでプレイしてみましたが、そこには歴然とした差がありました。FSR 2対応の『Alan Wake II』では、FSR 3対応の『Marvel's Spider-Man 2』ほどパフォーマンスが上がりません。『Marvel's Spider-Man 2』ではFSR 4をバランス設定にすることで、4K・ウルトラ設定・レイトレ設定ハイでも60FPS以上を出せました。

FSR 3.1以前のモデルはもっとハードウェア非依存でしたが、FSR 4はRDNA 4アーキテクチャでないと使えません。そういう意味で、NvidiaのDLSSモデルの限定的な側面とも直接競合しています。従来のAMD Radeonのカードでも、FSR 4が使えません。

そこで問題は、FSR 4を今使えるゲームが30タイトルちょっとしかないことです。『コールオブデューティ:ブラックオプス6』や『ウォーハンマー 40K:スペースマリーン2』といったビッグネームが入ってはいますが、DLSS 4対応タイトルはローンチ時点で75本あったのと比べると寂しいです。FSR 4タイトルも増やすそうですが、Nvidiaのほうもどんどん追加しています。

RX 9070 XTの場合、ゲームがFSR 4対応しているかどうかで、快適にプレイできるかどうかが全然変わってきます。プレイしたいゲームによって、AMDかNvidiaか、快適に使えるGPUが違ってくる感じです。

「まさにお探しの4Kアップグレード」になるGPU

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AMDはマルチフレーム生成モデルを「テストした」とは言いましたが、実用性が低く、必要ないとも言っていました。でもマルチフレーム生成は、ハードウェアにお金をかけられないゲーマーにとっては有効な手段です。

DLSSは(FSRも)、元々60FPS近く出ているときに真価を発揮できます。だから4Kで60FPS出せないRTX 5070にはがっかりさせられましたが、1440pではしっかりしたフレームレートが出ます。DLSS 4を使って、60FPS前後から150FPS以上まで駆け上がっていく感覚はすごくスリリングでした。この感覚は残念ながら、AMDでは得られません。

600ドルのRX 9070 XTが4Kでも高い性能を見せたことで、750ドルでも性能に大差ないRTX 5070 Tiや、550ドルでちょっと心もとないRX9070は、立つ瀬がなくなってしまいました。問題は、RTX 5070 TiとRX 9070 XT、買うならどっちか?ですが、結局はどっちの在庫があるか?という話かもしれません。RX 9070 XTの在庫がいつまで続くかわかりませんが、Nvidiaのほうはしばらく入手困難、価格高騰が続きそうです。

今すぐ新しいGPUを買いたくて、Nvidiaの在庫復活を待てない人は、RX 9070 XTは単なる間に合わせではなく、まさにお探しの4Kアップグレードです。ただその場合、ゲームによってはDLSS 4や100FPS超えのワクワクを味わえず、損したように思うかもしれません。でもRTX 5070 Tiとの価格差は定価でも150ドル(約2万2000円)、市価ではその倍にもなりうるので、それくらいのデメリットは全然ありなんじゃないでしょうか。

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