イランの高濃縮ウラン貯蔵量、過去最大の増加-IAEA報告書

国際原子力機関(IAEA)は、イランの核開発についてまとめた報告書で、核兵器に必要なレベルに近い高濃縮ウランの同国の保有量が過去最大の増加となったと明らかにした。国際社会の懸念を解消する平和的解決に向けた交渉が一層困難になる恐れがある。

  IAEAの報告書は、米トランプ政権とイランによる核協議開始以降では初めてとなる。それによると、イランの高濃縮ウランの貯蔵量は過去3カ月で約50%増加し、409キログラムに達した。イランが選択すれば、核兵器約10発の中核部分に相当するレベルに短時間で濃縮できる量だ。

  IAEAのグロッシ事務局長は報告書で、「高濃縮ウランの急速な蓄積は深刻な懸念事項だ」と指摘。「IAEAは、イランの核計画が完全に平和目的であるという保証を提供できる状況にない」とした。ブルームバーグが22ページに及ぶ報告書の内容を確認した。

  同報告書は、イランがIAEA査察官の懸念を払拭するには、依然として大きなハードルがあることを示している。イランは米国との核合意再建に向けた外交努力を続ける一方で、未申告の場所で検出されたウラン粒子に関するIAEAの調査には依然として非協力的な姿勢を取っている。

  「IAEAは、イランが3カ所の未申告の場所において核物質および核関連活動を申告しなかったと結論づけている」とグロッシ事務局長は報告書で説明。この結論は、イランへの対応を国連安全保障理事会に委ねる根拠になりうる。

  イランと米国の当局者は5月にローマで協議を行った。ある程度の進展があったと双方が表明し、トランプ大統領は「非常に良い」交渉だったと述べた。

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  IAEAの理事会は6月9日にウィーンで会合を開き、今回の報告書について議論する。欧州諸国は、イランの核問題を再び国連安保理に付託し、包括的な国際制裁を再導入する可能性を否定していない。

  イスラエル首相府は5月31日の声明で、IAEAの報告書は「極めて厳しい現状を示すものであり、明確な警鐘となっている」と指摘。イランの濃縮活動の規模は「憂慮」すべきものだと付け加えた。

  イランのガリババディ外務次官は6月1日の書簡で、IAEAの調査結果を否定し、「シオニスト政権によって提供された捏造(ねつぞう)されたデータ」に基づいていると主張。「イランは核兵器を追求しておらず、未申告の核物質や核活動も存在しない」と述べ、「一国の核活動がIAEAの監視下にある限り、懸念の余地はない」とした。

原題:Iran’s Near Bomb-Grade Uranium Stockpile Grows by a Record (1)Iran Says It’s Not After Nuclear Bombs as It Rejects IAEA Report(抜粋)

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