「天使」マスク氏の声を聴いて-クルーズ議員がトランプ氏に呼びかけ

米政府が過去1世紀余りで最も厳しい関税政策の発動を計画する中、クルーズ上院議員はトランプ大統領の関税政策への批判をさらに展開し、政権内部に影響力を争う「天使と悪魔」がいると指摘した。

  クルーズ議員は「天使」の1人として、世界一の富豪でトランプ氏の最大献金者でアドバイザーでもあるイーロン・マスク氏に言及した。週末にマスク氏は、最終的には米国と欧州の間に「自由貿易圏」が実現することを望むと述べていた。

   7日に配信した自身のポッドキャストでクルーズ氏は、「イーロンは天使の1人だ」とし、「これは米国の雇用を重視した良い意見であり、大統領が耳を傾けてくれることを期待している」と語った。

  テキサス州選出の共和党員であるクルーズ氏は先週のポッドキャストで、トランプ大統領とは珍しく意見を異にし、関税が長期間維持された場合の米経済への「巨大なリスク」を警告。その影響で共和党は来年の中間選挙で「惨敗」する恐れがあると述べていた。

  トランプ氏と支持者らは関税について、米国の輸出業者に対する貿易障壁を低減するための交渉を促進すると主張している。しかし、ホワイトハウスのナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)は英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)への寄稿文で、相互関税は「交渉ではない」と述べた。

  クルーズ議員が大統領と話したかどうか議員事務所にコメントを求めたが、回答はなかった。

  クルーズ議員は最新のポッドキャストで、「私が強く求めているのは、大統領が大きな取引を迅速に行うことだ。株式市場を落ち着かせるには、迅速にいくつかの大きな取引を行うことが実に役立つ」と述べた。

  世界の株式市場の時価総額が約10兆ドル(約1480兆円)も消失したにもかかわらず、共和党やトランプ氏支持者からの大統領批判は控えめにとどまっている。しかし、ヘッジファンド運用者のビル・アックマン氏は、トランプ氏が関税政策を中断しなければ「経済的な核の冬」が訪れるとソーシャルメディア上で警告した。

  マスク氏の弟でテスラ取締役のキンバル・マスク氏も関税を批判し、トランプ大統領の最近の動きを「米消費者に対する構造的かつ恒久的な課税」だと指摘した。

  キンバル氏は「関税によって米国内に雇用を呼び込むことに成功したとしても、物価は高止まりし消費への課税は物価上昇という形のまま残る。われわれは全てを製造するのには向いていないからだ」とXに投稿。消費と雇用の減少サイクルにつながりかねない政策だと論じた。

原題:Ted Cruz Urges Trump to Listen to ‘Angel’ Elon Musk on Trade (1)Elon Musk’s Younger Brother Criticizes Trump’s Tariff Strategy (抜粋)

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