ECBの追加利下げ余地は限定的、慎重促す-シュナーベル理事
欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事は、今後の利下げには慎重になる必要があるとの考えを示した。借り入れコストはすでに景気を抑制しないレベルに近づいており、これ以上引き下げると悪い結果が生じる可能性があると指摘した。
シュナーベル氏はインタビューで、ECBは金融緩和を継続することはできるが、いわゆる中立金利を下回る水準に金利を引き下げることのないよう、緩和は徐々に行うべきだと述べた。緩和し過ぎは貴重な政策余地を無駄に費やすことになりかねないと警告した。
「インフレ見通しを考慮すると、今後発表されるデータがわれわれの基本シナリオを裏付けるものであれば、徐々に中立金利に近づけていくことができると思う」とシュナーベル氏はフランクフルトのオフィスで述べた。「行き過ぎて緩和的な領域にまで引き下げることに対しては警告したい」と語った。
中立金利を正確に測定することはできないが、同氏は2-3%と推定している。ギリシャ中銀のストゥルナラス総裁やポルトガル中銀のセンテノ総裁のようなハト派的な政策委員が示唆しているよりも高い数字だ。
中銀預金金利は今年に入ってから3回の0.25ポイント利下げにより3.25%となっている。シュナーベル氏は、今や中立金利から「それほど遠くないかもしれない」と述べた。
シュナーベル氏のコメントを受けて、短期金融市場ではECB利下げ観測が後退し、2025年末までの利下げ幅を146ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と織り込んだ。発言前は150bpだった。ユーロは上昇し、0.5%高の1.054ドルを付けた。ドイツの2年物国債利回りは低下を帳消しにした。
ECBの利下げペースに関する議論は活発化している。特にドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに復帰した後に関税が課される可能性が高いことから、世界的な不確実性も増している。
投資家は中銀預金金利が来年1.75%程度まで低下するとみているが、シュナーベル氏はこれに異を唱えた。
「市場は、緩和的な領域に踏み込む必要があると想定しているようだ」が、「今日の観点から見ると、それは適切ではないと思う」とシュナーベル氏は述べた。また、0.5ポイント刻みの利下げに関する臆測を退け「段階的なアプローチへの強い支持がある」と強調した。
インフレ率が目標を下回ったとしても、その原因が経済の根本的な問題にある場合には、利下げは逆効果になりかねないとも警告。
「そのような状況では、緩和的な領域に踏み込むことのコストは、恩恵よりも高くなる可能性がある」と述べた。「将来において、金融政策がより効果的に対処できるような衝撃に経済が直面した時に必要となる貴重な政策余地を、使ってしまうことになる」と解説した。
成長については、今月の購買担当者指数(PMI)の予想外の落ち込みを重大視することはせず、欧州の政治的混乱と米大統領選のトランプ氏勝利に起因する不確実性の高まりが理由だとの見方を示した。数字は弱さの度合いを過大に示している可能性があると述べた。
「ハードデータと併せて考えると、ユーロ圏経済は依然として停滞していることが調査から示唆される」とした上で、現時点では景気後退のリスクは見られないと述べた。
インフレに関してシュナーベル氏は、サービスセクターの物価上昇圧力高止まりにもかかわらず、来年には目標の2%達するだろうと確信している。ただ、目標達成の正確な時期にこだわることには否定的で、2025年になっても「不安定な状態」が続く可能性があると述べた。
Source: Eurostat, Bloomberg survey of economists
一部の当局者は、高金利が過度に長引けばインフレ率が低くなり過ぎるリスクがあると警戒を示し、フランス中銀のビルロワドガロー総裁は、当局はそうした危険性に対して「細心の注意を払う」と述べている。
一方、シュナーベル氏はそのリスクは大きくないとの見方で、ECBが12月に公表する最新予測は、インフレ率が「中期的に目標付近」で推移するとの見通しを示すとみている。
原題:ECB’s Schnabel Sees Only Limited Room for Further Rate Cuts (1)(抜粋)
原題:ECB’s Schnabel Sees Only Limited Room for Further Rate Cuts (2)(抜粋)