東京都赤十字で血液製剤1・3万本使用不能に…冷凍庫の電源喪失で、日赤は1か月後に厚労省に報告

日本赤十字社

 東京都赤十字血液センターで今年5月、血液製剤を保管していた冷凍庫の電源が落ちるトラブルが起き、血液製剤「新鮮凍結 血漿(けっしょう) 」(FFP)約1万3700本が輸血用に使えなくなったことがわかった。機器の故障が原因という。日本赤十字社は各都道府県の血液センターに今回のトラブルを伝え、血液製剤の管理を徹底するよう指示した。

 FFPは献血で集めた血液から作られる血液製剤。血液凝固を助ける作用があり、患者の血液を固める「凝固因子」が不足した時などに使われる。これほど多くのFFPが一度に使用不能になるのは異例だ。

 関係者や都赤十字血液センターによると、5月11日午後10時半頃、血液製剤を保管している同センター辰巳供給出張所(江東区)で、冷凍庫の電源が落ちて警報が作動した。通報で駆け付けた業者が修理して約4時間後に復旧した。

 だが、温度監視システムを確認したところ、冷凍保管の基準温度(マイナス20度以下)を上回る状態が2時間半続いていたことが判明。120ミリ・リットル容量の1691本、240ミリ・リットルの1万1796本、480ミリ・リットルの261本のFFPが使えなくなった。

 同センターは取材に対し、昨年5月の設備更新工事の際、冷凍庫の温度をコントロールする制御盤内に電圧規格の異なる端子台が誤って設置されたことがトラブルの原因だと説明した。これにより、規定を超えた電圧が継続的に電気回路に加わり、端子台の基盤が焼損した可能性があるという。

 日本赤十字社の事業報告書によると、2024年度に医療機関に供給されたFFPは215万単位(1単位=120ミリ・リットル)。今回の約1万3700本を換算すると約2万6300単位に相当し、年間供給数の約1・2%にあたる。

 同センターは、「代替のFFPを全国の在庫で融通することができ、医療機関への納品に影響はなかった」と強調した一方、国内11か所の製造施設で今後のFFP製造を強化するとした。また、今回使えなくなったFFPについては、保管温度がより高い別の血液製剤の原料に転用するという。

 日赤は今回のトラブルについて、読売新聞から取材を受けるまで厚生労働省に報告せず、発生1か月後の6月10日に報告した。同省幹部は「日赤には医療機関への供給に影響が出ないよう万全を期してもらい、速やかな情報共有を求めたい」と話す。

 血液事業に関する厚労省の委員会で委員長を務める湘南鎌倉総合病院輸血・再生医療センターの田野﨑隆二センター長は、「血液事業は一般市民の善意で成り立ち、何よりも信頼が大切だ。日赤は再発防止策を徹底するべきだ」と指摘。また、同省への報告まで1か月かかったことについて、「同様の事例が起きた場合に備え、速やかに国や委員会に報告する仕組みづくりが必要だ」と述べた。(浜田喜将)

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