豊永利行&加藤和樹 長い付き合いが生んだふたりの厚い信頼関係「一緒にお芝居するのが心地いい」
映画
インタビュー
左から)加藤和樹、豊永利行 (撮影:堺優史)
続きを読む不朽の名作『ベルサイユのばら』が50年以上の時を経て、完全新作で劇場アニメ化される。 長く愛され続けてきた『ベルサイユのばら』はフランス革命という激動の時代の中で、自分の信念を胸に生き、そして心から誰かを愛した人たちの物語だ。 物語の中心になるのは将軍家の跡取りで、“息子”として育てられた男装の麗人・オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(以下、オスカル)と、隣国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット(以下、アントワネット)。彼女たちに心を惹かれる男性ら、オスカルの従者かつ幼なじみで、平民のアンドレ・グランディエ(以下、アンドレ)と、アントワネットに心惹かれる、容姿端麗で知性的なスウェーデン伯爵のハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(以下、フェルゼン)。どんなに時を経ても色あせない魅力的な登場人物たちに劇場アニメ『ベルサイユのばら』で再び出会うことができる。
アンドレ役の豊永利行さんとフェルゼン役の加藤和樹さんにこの名作、そして新作の劇場アニメとどのように向き合ったのか、そして20年来の付き合いだというふたりの信頼関係に迫った。
加藤和樹(以下、加藤) 姉の影響で、小さいころにマンガを読んだ記憶があります。でも、宝塚の印象が強いですね。フランス革命という史実的には痛ましいできごとの中で、オスカルとアンドレが中心だった話というのは美しくも儚い物語というイメージがありました。
豊永利行(以下、豊永) 作品自体はもちろん知っていましたけど、中身までは知らなかったです。TVアニメのオープニングテーマは印象に残っていたんですが、今回、劇場アニメのオーディションの話をいただいてから作品を読ませていただいた新参者です 。 実際に『ベルサイユのばら』を拝見して、リアルな史実も含め、貧困や階級格差 、フランス革命期 の社会における問題点とともに、その中でも気丈に生き抜いた人たちの物語なんだということを知りました。美しいだけではない作品だな、と。
加藤 今、我々が生きている日本とは違って、(物語の世界観では)男女問わず、誰かのために命をかける覚悟ができます。フェルゼンだったら、アントワネットのためにこの身を賭してでもお守りする。でも、それが叶わないからオスカルに託す。守りたくても守れないその悔しさや、葛藤している彼の身上を想像すると、心を引き裂かれるような思いですよね。その葛藤の中で苦労しながら、自分の運命に抗いながら生きている姿は魅力的だと思います。
豊永 限られた時間の中で、どうしても描き切れない部分もあることは踏まえつつ、アンドレは、原作だとわりと感情的に動いたり、言わなくていいことを言ってしまう人だと思います。今回の劇場アニメでは、彼の中の男らしさに焦点が当てられている印象がありました。彼自身、オスカルの影となる決意の強さだったり、それが愛と認識するまでの時間だったり、愛と認識したあとのアンドレなりの愛情表現が今の時代にはみない方法なんですよね。不器用ゆえのアンバランスな彼の感情の揺らぎを今回ピックアップされているんだな、と感じました。 オスカル役の沢城みゆきさんに「とっしーの演じるアンドレは影だけど、光を出してるよね」と言われたのですが 、影ではない、彼が本来持っている力が今回の作品では彼の魅力になっていたらいいな、と思います。
――アンドレを豊永さんが、フェルゼンを加藤さんが演じられたことでどんな魅力がプラスされたと思われますか?
加藤 オスカルとの絶妙な距離感ですね。 最初はお互い友であり仲間であるというところから、時を経て、オスカルにも言えない心の部分をうまく表現しているというか……本当に切ないんですよね。明るいからこそ切ない。もう思い出して泣きそうです(笑)。
彼が声に息を吹き込んでいるからこそ、重いシーンを重く感じないんですけど、だからこそグッと切なくなるっていう。もう最後まであんなに想ってさ……もうやだ!あんな人いる!?
豊永 急に親戚のおばちゃんが出てきたけど(笑)。 和樹は純粋に心を動かして出す言葉、というところにすごくウエイトを置いて表現する人 だと僕は勝手に思っていて。
アントワネットへの想いや、その想いをオスカルに託すシーンはフェルゼンという人間が揺らぐときで 。その揺らぐ瞬間の説得力の高さが、和樹が演じることによって増しているな、という気がしています。本作を観たときに、フェルゼンが揺らぐ瞬間の度合いが、表面上で見るとそんなに大きいものではないかもしれない。でも、和樹が演じることによって、その心の振れ幅がグンと広がっているのが伝わってくるんですよね。その伝え方というのが、体も使った表現をする役者、表現者だからこそできる表現というか。ハイブリッドの表現というものを今回、フェルゼンを通して見させてもらっているな、と思いました。
――本作では、なんといっても歌唱シーンが印象的です。歌唱シーンの収録についてもお聞かせいただけますか。
豊永 実は、楽曲はアフレコが始まる1年ぐらい前に全部録っているんです。自分たちの芝居の方向性を決める前に録っているので、そこである程度、自分の中に役を落とし込んでおかないとまずいよな、と。 劇場アニメでは20年のできごとを2時間超えの尺に短縮しているので、「この楽曲をいつのアンドレで歌えばいいんだろう」と迷っていました。でも、レコーディングの際に監督といろいろディスカッションさせていただいて、「あのシーンで使われるんだな」と考えながら、年齢感をとらえて歌っていました。
――珍しいパターンですよね。
豊永 そうだと思います。あとからアフレコをするので、ちゃんと考えて役を組み立てていかないと破綻してしまうな、と思いながらやっていましたね。
加藤 僕は作品は違えど、過去ミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』でフランス革命に身を投じた経験が生きたかな、という感じもありました。ただ、フェルゼンのアントワネットに対する思いも、新たに自分の中で生み出さないといけないと思っていたので、アントワネットとのデュエットに関しては、その点を考えてやっていましたね。 あとは、キーの問題もレコーディング前にありました。最初は高すぎて役の声とかけ離れてしまうところもあったので、作曲の方と相談してバランスのいいところでやらせていただきました。なので、フェルゼンからは離れない発声の仕方と感情の入れ方のバランスをとるという面で、なかなか難しいレコーディングでした。
——おふたりはお付き合いも長いかと思うのですが、本作での共演を踏まえて、お互いのお芝居の好きなところを教えていただけますか。
豊永 いやぁ、20年来の付き合いなので、いまさらそんな話をするのは恥ずかしいんですけど。同い年ですし。改めてお互いのここが好きです、みたいな話も……(笑)
加藤 僕はやっぱり……
豊永 するんだね!?(笑)
加藤 (笑)。初めて共演したのが『テニスの王子様』というミュージカルで、一年生トリオで一番若い役をやっていたんです。ずっと高い声を出していたので、そのイメージがあったんですけど、そのあと共演したり、作品の声を聞いたりすると、語弊があるかもしれないんですけどすごく男らしいんです。
豊永 ははは! ありがとうございます。
加藤 自由度が高いというか。それは当初から思っていたんですけど、楽しんでお芝居をしているからこそ、その役が生きるということはご一緒させていただく中で毎回思っているところですね。
豊永 光栄です。和樹 は初めて会ったときからイメージはあまり変わっていないんですけど、度胸があって、堂々とした立ち方ができる人だと思います。でも、いろいろと話をしたり、和樹の本音を聞いていけばいくほど、不器用な部分があったり、実はすごく緊張しているんだということに気づくこともあるんですよね。そういう点を踏まえた上で、それでも気丈に振る舞える胆力やルックスなど、いろいろと武器がある中で、その武器だけに頼らずに表現の幅を広げる努力を惜しまない人なんだな、って。そういう志を持っている役者さんと共演できて幸せだな、と思います。 幅のあるお芝居で掛け合ったときにもきちんと僕が投げた球を受け止めて、返してくれる信頼感のある表現をしてくれ るので、僕は安心して自由にできるし、その自由に対しても締めたり、放牧したりね。取捨選択してやってくれる人です。
加藤 ははは!(笑)
豊永 一緒に芝居をしていて、心地の良い人です。
加藤 ありがとうございます。
——尊敬しているところについても、お聞きしてもいいですか?
加藤 イベントだとか、みんながいると普段はふざけるタイプなんですけど、声優さんの現場でご一緒させていただくと、ちゃんとしてるんですよ。
豊永 ははは!(笑)
加藤 ちゃんとしている、と言うと語弊があるかな。プロ意識がすごいんです。みんなが気づかない細かい修正ポイントだったりをすごく大切にしていて。多分、中途半端が嫌なんですよね。でもそれってすごく大事だなと思うんです。 僕は、あんまり言わずに自分がちゃんとやればいいか、と思ってしまうタイプなんですけど、言わないと、分からない人たちもいるじゃないですか。言ってくれることでみんなで共有できるんですよね。違うことは違うだとか、これはきちんとしないとダメだということだったり、そういうことを言葉にできる素晴らしい人です。今の時代、誰も言わなくなってるじゃない?
豊永 そう。40歳になって考えるわけですよ。僕らが若いときって、それこそ40代ぐらいの先輩方が言ってくれていたよな、って。そう考えると、僕らはもうそのラインに来てるんですよね。厳しく言うというわけではないけど、ちゃんと伝えないと品質に関わってきますし。
加藤 知らないまま進めちゃうからね。
豊永 そうそうそう。というところはね、そろそろやらなきゃいけないのかな、と、おじさんなりに思ったんです(笑)
加藤 素敵な人なんですよ。
――豊永さんは加藤さんの尊敬するところはどういったところですか?
豊永 とにかくストイックです。自分を高めることに対してのある種、どMさというか。
加藤 (笑)
豊永 この業界の人ってある種、一定量自分に対してMっ気がないとできない仕事だと思っていて。それが和樹はすげえなって思います。自分を追い込むというか。
加藤 追い込まないとやらないんだよね(笑)
豊永 それをすることで自分を奮い立たせるし、プラスαで自分に自信もつけるし、みたいな。だからそのパフォーマンスが本番で出せるんだな、と感じます。僕はどちらかというとある程度のところまでいったら、「もういいっしょ」ってなれちゃう人なんですよ。あとは現場の空気感で何とかなるし、という精神で臨むタイプなので、とことんまで追求するストイックさを僕は持ってないんです。本当にすごいな、という気持ちになりますね。 現場を見て僕がいろいろ言うのと同じように、自分のやるべきことをやって言葉にせずとも周りに影響を与えられる姿勢だと思います。僕は僕の役割をすると、和樹は和樹の役割をしてくれているので、そこは本当に安心できますね。
――キャラクタービジュアルが公開された際、オスカルのキャッチコピーは「進め、情熱の命ずるままに」でした。おふたりが最近、情熱を傾けたものを教えてください。
豊永 この間、和樹の40歳誕生日を記念したバースデーライブにゲストで出させていただいたんですが、サプライズで誕生日プレゼントを選んでいまして。その誕生日プレゼント選びに情熱を注ぎました。
――どんなプレゼントをされたんですか?
豊永 機能性のあるパジャマです。どう渡せば一番おもしろいか考えて、昼の部と夜の部、2ステージあったんですけど、昼の部にパンツだけ渡して、夜の部にもパンツだけ渡しました
――2回とも下だけ!?
豊永 豊永 そうです(笑)。上は裸で寝るだろうという勝手な推測で渡すのが一番おもしろいかなと思って、そこに全情熱を捧げました。
――加藤さんなら、上裸で寝るだろう、と。
豊永 そしたら上裸で寝ないと言われたので、終わってから上も渡しました。
加藤 情熱かけすぎだよ(笑)
豊永 どうしたら一番おもしろくなるか考えて。
加藤 めちゃくちゃおもしろかったよ!
豊永 よかった(笑)
――本当に仲がいいんですね。
加藤・豊永 ははは!(笑)
豊永 どうでしょうか、何をもってして仲いいというのか……。でもプライベートではほとんど会わないよね。
加藤 全然、会わないです。遊ぶ、遊ばないんじゃないんですよ。
豊永 仕事仲間として信頼感みたいなものがあれば、正直プライベートにそんなに興味はなくて(笑)。
加藤 そうそう。だってほとんど知らないもんね。
豊永 知らない、知らない。
加藤 でも、やっぱり『テニスの王子様』を一緒にやっていたのは大きいね。
豊永 そうだね。長かったし。
加藤 密だったし、あの時代に一緒にやっていた人とはいつでもそのときに戻るみたいな感じ。本当に心強い存在です。
――加藤さんは情熱を傾けているものはありますか?
加藤 推し活です。ラーメンが好きなんですよ、特に二郎系が。家で作っちゃうぐらい。
豊永 もうプロです。お店を出せるんじゃないかというぐらいのクオリティ。
加藤 いえいえ、僕なんてまだまだ。 でも好きなものに情熱をかけられるのは素敵だと思います。やっぱり自分を応援してくれている人たちを見ると、すごく楽しそうだし、好きなものを好きっていうのはやっぱりステキなことだな、と思うので僕も声を大にして、好きって言っていきたいですね。
取材・文:ふくだりょうこ 撮影:堺優史
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劇場アニメ『ベルサイユのばら』 1月31日(金)全国ロードショー
原作:池田理代子 監督:吉村 愛 脚本:金春智子 キャラクターデザイン:岡 真里子 音楽プロデューサー:澤野弘之 音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO アニメーション制作:MAPPA 製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会 配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき マリー・アントワネット:平野 綾 アンドレ・グランディエ:豊永利行 ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 アラン・ド・ソワソン:武内駿輔 フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也 ベルナール・シャトレ:入野自由 ルイ16世:落合福嗣 ジャルジェ将軍:銀河万丈 マロン・グラッセ・モンブラン:田中真弓 ナレーション:黒木 瞳 主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』
(c)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会