過度なカロリー制限でうつ症状悪化も、行き過ぎたダイエットに専門家が警鐘
行き過ぎたダイエットは心の健康に深刻な影響を与えかねないという研究結果が報告された/Sabina Eivazova/iStockphoto/Getty Images
(CNN) 行き過ぎたダイエットは心の健康に深刻な影響を与えかねないという研究結果が、3日の米医学誌に発表された。研究チームは摂取カロリーの減らし過ぎとうつや不安の症状悪化との関係を指摘している。
今回の研究では食生活とうつの症状について調べた全米健康栄養調査をもとに、成人2万8000万人あまりのデータを調査した。
その結果、カロリー制限のダイエットをしている人、中でも男性と体格指数(BMI)で過体重に分類される人は、うつの症状が重い傾向があることが分かった。
食事の質にも問題があった。超加工食品や精製炭水化物、飽和脂肪酸、加工肉、甘い物の摂取が多いほどうつの症状を訴える人が多く、地中海式の食事をしている人は一般的にうつのリスクが低い傾向があった。
論文を発表したトロント大学のベンカット・バット氏は「特に体重関連のストレスや問題を抱えている人は、過度な食事制限やバランスの取れていない食事に注意する必要がある」と指摘。「必要な栄養を摂取でき、個人の心理的影響を考慮したバランスの良い持続可能な食事に変えることで、気分に対する悪影響を抑えられる可能性がある」とアドバイスする。
過去の研究との違い
ただし今回の研究では関連性が示されたにすぎず、カロリー制限がうつの症状悪化を引き起こすと断定されたわけではないとバット氏はくぎを刺す。
過去にはカロリー制限のダイエットでうつの症状が改善したという研究も発表されていた。
2023年にそうした論文を発表した英キングス・カレッジ・ロンドンのジョアンナ・キーラー氏によると、今回の研究との違いは、医療専門家の指導に従って食事制限をしていたかどうかにある。
「つまり、専門家の指導を受けないダイエットは栄養不足につながり、うつの症状にとって良くない可能性がある」(キーラー氏)
カロリー制限と心の健康に対する悪影響との関係が指摘される理由は幾つかある。
過去の研究では、過体重または肥満と分類された人について、低カロリーのダイエットによる減量の成功とうつの症状改善との関係が指摘されていた。
これは精神状態が変化して、体が動かしやすくなったり周りからの好意的な反応が増えたりした影響も考えられるとキーラー氏は言う。
「体重減少を伴わないカロリー制限ダイエットを始めたり、『体重の反復変動』に陥ったりすると、うつの改善につながらない可能性がある。それどころか、イライラしたり失望したりしてうつの悪化を引き起こしかねない」
カロリーを制限しすぎたり、食事から十分な栄養が摂取できなかったりすれば、身体機能が妨げられて疲労や睡眠障害、集中力の低下につながることもある。
米ユタ大学のキャリー・ウッドラフ氏によると、極端なダイエットは不安感の増大や摂食障害のリスク増大につながることもある。
「何をどの程度制限するのかがカギを握る。健康な食生活を心がけ、カロリー制限は軽度から中程度にすれば、うつの症状や気分は改善する可能性がある。一方、極端な行動は精神的、感情的、身体的な健康を悪化させかねない」とウッドラフ氏は話している。