なぜ女性は男性より長生きなのか?「そりゃそうだ」と思える納得の理由

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一般的に女性は男性より長生きする、と言われている。また過酷な状況下では、女の子の乳幼児の方が男の子の乳幼児よりも、より生き残りやすいのではないかという仮説もある。男性より女性のほうが非常時の生存率が高まる傾向があるのは、一体なぜなのか。そのメカニズムを生物科学の教授が解説する。※本稿は、黒岩麻里『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

基礎代謝の男女差には 男性ホルモンが関係していた

 男性よりも女性の方が長生きである理由には、その他基礎代謝の違いがあるのではないかとも考えられています。

 基礎代謝とは、覚醒している状態で生命活動を維持するために最低限必要なエネルギーのことです。1日の活動において消費されるエネルギーのおよそ60%は、基礎代謝によるものといわれています。

 この基礎代謝は、一般的に女性よりも男性の方が高く、男女ともに加齢にしたがって下がっていきます。若い頃は痩せていたのに、年齢とともにダイエットが必要になってきた、そしてダイエットの効果がなかなかあらわれない……私は基礎代謝の衰えを実感している1人です。

 基礎代謝が下がると、太りやすくなったり、基礎体温が低下して免疫力の低下につながったりすることもあるので、一般的な健康指導としては、基礎代謝を上げることが推奨されています。

 体内で一番多くエネルギーを消費しているのは骨格筋ですので、基礎代謝は筋肉量と強く関係しています。基礎代謝を上げるには筋肉量を増やすことが効果的であり、男性は女性よりも筋肉量が多いため、基礎代謝が高いと考えられています。

 男性の方が筋肉量が多いのは、男性ホルモンが筋肉の肥大を促す働きをもっているからです。男性ホルモン量の少ない女性は、男性に比べると筋肉が発達しにくいため、その分基礎代謝も低いというわけですね。

男性より基礎代謝が低いなら 女性の方が飢餓に強いことになる

 ここまでの話から考えると、ならば男性の方が長生きできるんじゃないのかと想像したくもなります。確かに日常生活においては、健康のことを考えると基礎代謝が高い方が良いように思えますが、ある研究報告によれば非常時においては必ずしもそうではないようです。

 江戸時代後期の1833年から1839年頃(天保4年から10年)、江戸三大飢餓のひとつともいわれている天保の大飢饉が起きました。飢饉の主な理由は、大雨による洪水や冷害による大凶作と考えられており、当時の日本の人口減少にも大きく影響したといわれています。

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