宝塚星組トップ礼真琴「宝塚は自分を作った、すべての青春」 サヨナラ会見一問一答全文
宝塚歌劇団の星組トップスター、礼真琴の退団公演「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」が10日、東京宝塚劇場(千代田区)で千秋楽を迎えた。〝令和〟という時代と歩調を合わせるように星組を率いた実力派スターは、退団会見にタカラジェンヌの正装、緑の袴姿で臨み、「宝塚は今の礼真琴という人間を作ってくれたすべての青春」と、命を燃やした17年間を振り返った。退団会見の一問一答は、以下の通り。
宝塚は唯一無二
―――千秋楽を終えた
「無事に千秋楽を終えることができました。私自身、お客さまの熱い思いと、星組のみんなの熱過ぎる思いを毎日毎日、感じながらの6週間でしたが、本当に気が付けばあっという間に過ぎていきました。こんなに幸せなことは、人生生きてきた中でない、と思うような1日を過ごすことができ、今はとても幸せいっぱいでございます。本当にありがとうございました」
―――礼さんにとって宝塚とは
「私が初めて宝塚を見たときに感じた、唯一無二の(存在)、飛び込んでから自分が学ぶ日々の中で、芸事はもちろん、それ以上に人との関わりの中で、宝塚がこれだけ愛される場所になっていることを、17年間かけ、学ばせていただきました。今の礼真琴という人間を作ってくれた、全ての青春です」
「宝塚はすべての青春」とすがすがしい表情で語った宝塚歌劇団星組トップスター、礼真琴=10日午後、東京都千代田区の東京宝塚劇場(梶山裕生撮影)―――在団中、さまざまな葛藤をどう乗り越えたか
「本当にありがたいことに、下級生のころから上級生に混じって、場面を作る経験をさせていただきました。その中で、自分の経験が、与えていただくものに全く追いつかないという経験を、幾度となくしてきましたので、できない自分と向き合って過ごしてきたと思います」
「一番大きな出来事は、トップになってからのコロナ禍だったと思います。誰もが経験したことのないことに、立ち向かう恐ろしさを目の当たりにし、その中で星組全員とお客さまと前に進んだ道のりがあったから今、こうして全てに感謝の思いがあふれ、(それが)自分の成長にもつながっております」
男役は宝塚一番の魅力
―――男役の魅力は
「17年、男役をさせていただくと朝、目覚めた瞬間からきっと男役なんですよね(笑)。しぐさ一つ、声の低さ一つとっても、自然に染みついてしまった男役というものを、改めて振り返りますと、私もたくさんの険しい道のりを歩んでまいりました。もがいても、もがいても、到底たどり着けない素晴らしいスターさんたちのもとで育てていただいて、この女性だけの劇団で、男役というものがあること。世界中のどこにもない、この宝塚で自分が作り上げる男役像、今、礼真琴という男役がここで終着地点を迎えられたことは、私の一番の誇りですし、男役だからこそ、リアルに心を大事にしていきたいという思いで、最後まで駆け抜けてきました。男役というものは、本当に完成のない、でも最高に楽しい、宝塚の一番の魅力だなと思います」
「礼真琴という男役がここで終着地点を迎えられたことは、私の一番の誇り」。退団会見で終始、笑顔を見せた宝塚歌劇団星組トップスターの礼真琴=10日午後、東京都千代田区の東京宝塚劇場(梶山裕生撮影)―――ショーでの黒燕尾に、到達点はあったか
「何も飾りのない黒燕尾で、大階段で踊らせていただくのは、(前星組トップスター)紅ゆずるさんのサヨナラ公演以来でした。男役は全員1人ずつ黒燕尾を持っていますので、自分も最後の瞬間は、どうしても自分だけの黒燕尾を着て、最後の姿をお客さまにお見せしたい、という男役のこだわりが詰まったレビューを(作・演出の)生田(大和)先生が作ってくださいました」
―――ショーで舞台に手をつく振りがあるが、今日はどんな思いを込めたか
「3時間の舞台の、最後のシーンですし、この振りをつけていただいてから日々、舞台への感謝の思いを手のひらに込め、少しでも私の思いを残していけたらという思いでした。この後のサヨナラショー、そして(タカラジェンヌの象徴)袴を着て、無事に最後の幕が下りますように、という願いも込め、手を添えさせていただきました」
―――今後、礼さんの歌声を聴ける機会はあるか
「この先、私自身が一番不安でございます。明日からの自分自身、朝起きたら髪が伸びるわけでもないし、このたくましい筋肉がなくなるわけでもない(笑)。女性初心者として、どう生きていくかっていうところから、向き合わなきゃいけないなと思います。でも、宝塚に入ったからこそ、本当に歌うことが大好きになりましたので、どこかでまた、自分の歌声を聴いていただける機会があったらいいなという夢はありつつも、新たな人生で、もがきながら、また色々なことに挑戦できたらと思っております」
―――〝宝塚の礼真琴〟に今、かけたい言葉は
「ほんっとにお前は、こんなにもたくさんの方のおかげで、今、こんなに幸せなんだぞと。今、この辺(肩上)から見ているちっちゃい礼真琴は、この礼真琴に叫んでおります。本当に出会ってくださった全ての皆さまのおかげで、最高に幸せな宝塚人生だったと胸を張って言えます」(飯塚友子)
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礼真琴
れい・まこと 東京都出身。平成21年、宝塚歌劇団に首席入団し、星組に配属。アイドル的容姿に加え、歌、ダンス、芝居と3拍子そろった実力派男役スターとして、抜擢が続き、令和元年トップスターに就任。現役タカラジェンヌ3人目となる日本武道館でのコンサートを成功させるなど、高い人気を誇った。