ソフトバンクの5G通信が速くなる「Fast Access」を試す 非対応回線と有意な差も、見えてきた“次の課題”:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
ソフトバンクは、6月に新料金プラン「ペイトク2」などを導入した。この料金プランにひも付くサービスの1つとして提供されるのが、優先制御でネットワークの快適さを高める「Fast Access」だ。同様のサービスは、KDDIが25年に導入しており、auユーザー向けの施策として成果を出していた。ソフトバンクも、ここに追随した格好だ。
とはいえ、ネットワークは目に見えるモノではないため、その効果が分かりにくいのも事実だ。特にFast Accessのような仕組みの場合、アンテナピクトにも変化がなく、同じ5Gで接続することもあって、ユーザー側がサービス利用前後でそれを比較するのが難しい。では、本当にFast Accessで通信は快適になるのか。ソフトバンクから端末を借り、山手線の一部駅前などでテストしてみた。
Fast Accessは、いわゆる優先制御と呼ばれるもので、基地局側がこのサービスに対応している回線に、通信のリソースを多く割り当てる仕組みを指す。利用できるのは、現状だとペイトク2や、データ容量が無制限の「テイガク無制限」に加入しているユーザーのみのため、数は限られてくるが、7月からは初代の「ペイトク」やそれ以前の「メリハリ無制限+」も対象になる。
上記の料金プランの他、5Gを単独で使う通信方式の5G SA(Standalone)に対応したSIMカードやeSIM、さらに5G SA対応端末が必要になる。5G SAに対応するSIMは必要だが、必ずしもSAエリアで通信しなければならないというわけではなく、4Gを組み合わせて使うNSA(Non-standalone)のエリアでも効果を発揮できるという。
ただし、4Gのみで通信している場合には、Fast Accessの対象にはならない。こうした仕様は、基本的にKDDIの「au 5G Fast Lane」と同じ。非適用のユーザーが、通信しづらくなってしまうほどリソースの割り当てを極端に変えるのではない点も、共通している。対応するユーザーの方が、より速くなりやすい仕組みといえる。
現状では、大手キャリア各社が通信品質で競争を繰り広げているが、こうした優先制御を上位ブランドのデータ容量が比較的大きな料金プランと組み合わせることで、満足度を上げるとともに、サブブランドなどの中・低容量プランとの差別化を図る狙いがある。Fast Accessを発表した際に、ソフトバンクの専務執行役員を務める寺尾洋幸氏は、「既存の利用者の品質をほとんど落とさずに提供できる」と自信をのぞかせていた。
では、Fast Accessでは、本当に通信品質に差が出るのか。ここでは、Fast Accessに対応した回線とそうでない回線をソフトバンクから借り、同じエリアで同時に通信して、速度を比べてみた。モデム性能やソフトウェアの違いによる速度の差を排除するため、2つの回線を利用する端末はGoogleの「Pixel 10」で統一。OSは、アップデートが始まったばかりのAndroid 17を適用している。
速度測定時には2端末とも、5G SAに接続した状態であることを確認するのと同時に、接続している周波数帯が同じかどうかもアプリでチェックした。端末やつかんでいる周波数などの違いがない状態で、純粋にFast Accessの効果を見極めるためだ。その上で、Ooklaが提供する「Speedtest」アプリを使い、接続サーバを日本の「Verizon」に固定し、偶然を排除するため3回連続でテストを行い、平均を取った。
テストは、山手線・浜松町駅そばのソフトバンク本社が入るビルで実施し、その後、山手線に沿って1駅ずつ飛ばす形で移動し、駅前で同様の測定を繰り返した。浜松町、高輪ゲートウェイ、大崎、目黒、渋谷と原宿駅前の計6カ所を対象にした。原宿駅は、ソフトバンク側から差が出やすい場所としてお勧めされていたので、あえて他の駅との違いを見るために訪れている。次ページで、その結果を紹介しよう。
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寺尾氏は「混雑しているエリアでは、そこまで差が出ない」と語っていたが、スクランブル交差点に人がひしめき合う渋谷の駅前でも、Fast Accessの効果はきちんと発揮された。対応回線は平均で131.3Mbps、3回の計測いずれも100Mbpsを超えていたが、非対応端末は72.2Mbpsにとどまった。特に遅かったときは、40Mbpsまで速度が低下していたが、これとFast Accessの最高速度だった151Mbpsでは、3倍以上の差がついている。ここまでの開きがあると、速度を計測していなくても、体感で違いが分かるかもしれない。
そのままソフトバンクから、差が出やすいと聞いていた原宿にも足を延ばし、2つの回線で速度を計測してみた。原宿は2か所、出入口があるが、人が多そうな竹下通り側で実施した。ここも通信品質は非常によく、非対応の回線でも3回中2回は300Mbpsを超えており、Fast Accessがなくても十分満足できる。
一方で、Fast Access対応の回線は、それをさらに上回り、2回目の計測では537Mbpsまで速度が上がった。もう1回も400Mbpsを超えており、速度差という観点では非常に大きな違いがあったといえる。平均値は、対応回線が463.3Mbps、非対応回線が271Mbps。正直なところ、ここまで速度が高いと一般的なユースケースで体感できる差はほとんどなさそうだが、リソースを多く割り振った結果が如実に出た格好だ。
今回のテストでは、目黒駅以外では全てFast Access対応回線の方が速いという結果になった。しかも平均値だけでなく、1回1回の計測もほぼ全て、Fast Accessが優位だった。ここまではっきり違いが出るとは想定していなかったので、この結果には少々驚かされたというのが率直な感想だ。特に渋谷駅前のケースでは、Fast Accessのあり、なしで体感まで変わる可能性がある。データ通信の利用が多く、品質にこだわるユーザーであれば、この違いでメインブランドを選ぶ価値もありそうだ。
Fast Accessとは直接の関係はないが、5G SAのエリアの広さにも感心した。今回、比較のための通信方式を5G SAで統一したのは、NSAだと差が出にくいからではなく、テストしたエリアの全てが5G SAになっていたからだ。さらに、移動中もほぼ常時、5G SAに接続したままだった。人口カバー率などの数値は明かしていないソフトバンクだが、日々同社の回線を利用する中でも、5G SAが相当な範囲まで広がっていることがうかがえる。
もっとも、5G SAにしても、Fast Accessにしても、それをユーザーが認知する手段がほとんどない。アンテナピクトのアイコンはNSAとSAを区別しておらず、どちらで接続しても「5G」か「5G+」としか表示されない。通信方式の違いは専用のアプリをインストールすれば識別できるが、Fast Accessに至っては、通信しているタイミングで優先制御されていることが全く分からない。ユーザーが認識するための“証拠”がないというわけだ。
せっかくこれだけの差が出ているにもかかわらず、ユーザーがそれに気付けないのはもったいない。アンテナピクトの文字を変えるのはメーカー側やプラットフォーマー、さらには他キャリアとの合意も必要になってくるため簡単ではないが、Androidでは接続状態が分かるウィジェットをキャリア側で用意するなど、取れる手はある。これは、KDDIのau 5G Fast Laneにも共通した課題。電波は目に見えないものだけに、認知をどう広げていくかの手腕が問われるといえそうだ。
(製品協力:ソフトバンク)
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