欧州中銀3行が24時間内に利下げ、トランプ関税で政策対応に難しさ
過去24時間余りの間に、欧州の中央銀行3行が利下げを発表した。トランプ米大統領の予測不能な通商政策がもたらす影響に対し、金融政策当局者が難しい対応を迫られていることが浮き彫りになった。
スイスとスウェーデンの中銀当局者は3月時点で、金融緩和はほぼ終了した可能性が高いとの見解を示していたが、スイス国立銀行(中央銀行)は19日、政策金利を0.25ポイント引き下げた。前日にはスウェーデン中央銀行が同様の措置を取っていた。
さらにノルウェー中央銀行も19日に0.25ポイント利下げを発表した。ブルームバーグが調査したエコノミストの誰もこの結果は予想していなかった。
今週中に政策決定を予定している中銀は少なくとも18行に上り、世界経済の40%以上を占める。欧州の一部中銀は利下げしたが、世界的には様子見の姿勢が広がっている。
米連邦公開市場委員会(FOMC)や日本銀行、イングランド銀行(英中央銀行)はいずれも金利を据え置いた。パキスタンやトルコ、チリといった国の中銀も同様の対応を取っている。
その背景にあるのは7月9日に期限を迎える米国による上乗せ関税の猶予措置だ。これを過ぎると各国に厳しい関税措置が発動される恐れがある。さらに、今も続くウクライナの戦争を巡る不確実性や米国による対イラン攻撃の懸念もあり、金融政策当局者は次の一手を打ちにくくなっている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のグローバルエコノミクス担当ディレクター、ジェイミー・ラッシュ氏は「英中銀とFOMCが他の中銀よりも利下げに慎重な理由は、関税の影響や労働市場における状況の違いである程度説明できる。現在はイランでの戦争も新たな要因になっている。シェール資源が豊富な米国では、原油価格の上昇がインフレを押し上げても国内総生産(GDP)への打撃が少ないため、FOMCが利下げを行うのは難しくなる。一方、原油を輸入に頼る欧州では、成長が鈍化する中でインフレが進めば、利下げの判断はより容易になる」と指摘した。
スウェーデン、ノルウェー、スイスは各国で状況は違うものの、利下げ理由はいずれもインフレに関連している。さらに、同3カ国は今後も利下げする可能性がある。
原題:Three Rate Cuts in 24 Hours Show Europe’s Tariff Challenges (1)
(抜粋)