2025年ルマン24決勝 最終結果:クビサのフェラーリが総合優勝、トヨタは一時首位も「圧倒的ペース不足」
2025年FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦・第93回ル・マン24時間レースが、6月14〜15日にサルト・サーキットで開催され、33万2000人の観衆が見守る中、ロバート・クビサがトップチェッカーを受け、フェラーリが3年連続の総合優勝を達成。通算勝利数を「12」に伸ばした。
クビサ、苦難のキャリアを乗り越え悲願の栄冠
AFコルセの83号車フェラーリ499Pには、ロバート・クビサ、イェ・イーフェイ、フィリップ・ハンソンの3名が搭乗。ポルシェ・ペンスキーの6号車(ケビン・エストレ/ローレンス・ファントール/マット・キャンベル)に14.084秒差、ワークス・フェラーリの51号車(アレッサンドロ・ピエール・グイディ/ジェームス・カラド/アントニオ・ジョビナッツィ)に28.487秒差をつけ、栄冠を手にした。
クビサにとって今回の優勝は、まさにキャリアの頂点を極めた瞬間となった。2011年、ラリー競技中の事故で右腕と手に深刻な損傷を負い、F1キャリアは絶たれたかに見えた。だが、幾度もの手術とリハビリを経て2013年にWRCへ参戦。2019年にはウィリアムズからF1に復帰し、2021年イタリアGPを最後にF1を去った。
今回の勝利により、クビサはポーランド人として初のル・マン総合優勝者となり、チームメイトのイェ・イーフェイは中国人初の優勝者となった。
Courtesy Of FIAWEC / DPPI
総合優勝を果たし、表彰台に上がったAFコルセ 83号車フェラーリ499Pのロバート・クビサ、2025年6月15日(日) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース(サルト・サーキット)
今年のル・マンは、例年のような大波乱はなく、またクラッシュも少なく、セーフティーカーの導入はわずか1回という異例の落ち着いた展開となった。まさに「耐久性」と「集中力」が勝敗を分けた24時間だった。
8つのマニュファクチャラーによる21台のハイパーカーが争った今年のル・マン。TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は通算6勝目を狙ったが、主導権を握ったのは終始フェラーリだった。
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
サルト・サーキットを走行するトヨタ・ガズー・レーシングの7号車GR010ハイブリッド(マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ニック・デ・フリース)、2025年6月15日(日) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース
7号車GR010 HYBRID(小林可夢偉/マイク・コンウェイ/ニック・デ・フリース)は、予選16番手に沈み、スタート直後の1周目にプジョーと接触する波乱の滑り出しとなった。さらに、リミッターの設定ミスにより、ピットレーン速度違反(19km/h)を犯し、50秒のストップ・アンド・ゴー・ペナルティで大きく後退した。
それでも小林の懸命な追い上げにより、キャデラック12号車との5位争いに食らいつく場面もあったが、終盤にドライブスルーペナルティを受け、最終的にトップから1周遅れの6位でフィニッシュした。
デ・フリースは「今回は終始ドライコンディションで、セーフティカーも1度しか入らない比較的クリーンなレースだった。だからこそ、上位を争うにはレースペースが必要だったけど、僕らにはそれがなかった」と振り返った。
6位という結果についてコンウェイは「もちろん期待していたものではない」としつつも、「スタート位置を考えると、これが精一杯だった」とコメント。チーム代表でもある小林は「厳しいレースを予想していましたが、実際、本当に厳しい戦いでした。来年はもっと強くなって、違うマインドで戻ってきたいと思います」と語り、雪辱を誓った。
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
トヨタ・ガズー・レーシングの7号車GR010ハイブリッドをドライブするマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ニック・デ・フリース、2025年6月14日(土) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース(サルト・サーキット)
一方、8号車(セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)は好調なペースを保ち、夜間中に表彰台を争える位置まで浮上。さらに、セーフティーカーの恩恵も受け、200周到達を前に一時は首位を走行した。
だが残り4時間、平川がピットアウト直後に左フロントタイヤの脱落に見舞われる不運に遭遇。3輪走行でピットに戻り修復したものの、20分以上をロスし、7周遅れと戦線離脱。それでも粘り強く走り続け、最終的に16位でチェッカーを受けた。
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
サルト・サーキットを走行するトヨタ・ガズー・レーシングの8号車GR010ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮)、2025年6月15日(日) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース
ブエミは、仮にアクシデントがなかったとしても優勝に足るペースはなかったとして、良くても「5位くらい」だったと分析。さらにハートレーも「レースペースが圧倒的に不足していた」と厳しく自己評価した。
一方で平川は、「今の僕らにできることは、前を向いて次戦サンパウロに向けて最善の準備を進めることだけ」と気持ちを切り替え、支えてくれたすべての関係者に感謝を示した。
Courtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION
トヨタ・ガズー・レーシングの8号車GR010ハイブリッドをドライブするセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮、2025年6月14日(土) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース(サルト・サーキット)
LMP2クラスでは、インターユーロポールの43号車(ヤコブ・シメホウスキー/トム・ディルマン/ニック・イェロリー)が優勝。GT3クラスでは、マンタイ 1ST フォームの92号車ポルシェ911 GT3 R(ライアン・ハードウィック/リカルド・ペラ/リヒャルト・リーツ)が頂点に立った。
Courtesy Of FIAWEC / DPPI
LMP2クラス優勝を経て記念撮影に臨むインターユーロポールの43号車(ヤコブ・シメホウスキー/トム・ディルマン/ニック・イェロリー)のドライバー達、2025年6月15日(日) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース(サルト・サーキット)
Courtesy Of FIAWEC / DPPI
KMGT3クラス優勝を経て記念撮影に臨むマンタイ・ファースト・フォーム92号車ポルシェ911GT3 Rのライアン・ハードウィック、リカルド・ペラ、リヒャルト・リーツ、2025年6月15日(日) FIA世界耐久選手権(WEC)第4戦ル・マン24時間レース(サルト・サーキット)
日本勢としては、佐藤万璃音を擁するユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレン720Sが、80周目にリタイア。木村武史がドライブしたケッセル・レーシングの57号車フェラーリ296は、LMGT3クラス8位で完走を果たした。