インド旅客機墜落、一つの問いに答え 浮かび上がったさらなる疑問
アーメダバードの空港付近の住宅街に墜落したエアインディア171便=6月12日/Sam Panthaky/AFP/Getty Images
(CNN) ここ10年で最悪の航空事故となったエアインディア旅客機の墜落。公式報告書は一つの重要な問いに答えを出したものの、さらなる疑問が浮かび上がった。
エアインディアAI171便は先月、滑走路を離陸した直後に失速し、インド西部アーメダバードの人口密集地域に墜落した。搭乗していた242人のうち1人を除く全員と、地上の19人が死亡した。
今回、インド航空事故調査局(AAIB)による暫定報告書で、機体が上昇する重要な数分間にエンジン2基への燃料供給が遮断されていたことが判明した。
報告書によると、フライトレコーダーの記録では、旅客機の対気速度が時速約333キロに達した時点で、エンジン2基の燃料制御スイッチが「RUN(運転)からCUTOFF(遮断)の位置へ相次ぎ切り替えられた」ことが示されているという。二つのスイッチは1秒以内の間隔で切られ、燃料の流れが遮断された。
報告書に言及されたブラックボックスの音声記録では、操縦士の1人がもう1人に、なぜスイッチを切ったのかと尋ね、尋ねられた操縦士はやっていない、と答えている。報告書は会話のどちらが機長で、どちらが副操縦士なのか明記していない。
数秒後、ボーイング787型機のスイッチは元に戻され、燃料供給が再開された。2基のエンジンは再点火に成功し、うち1基は「回復に向かい」始めたものの、機体の急降下を食い止めるには遅すぎた、と報告書は指摘している。
報告書は墜落の根本原因を明らかにしたものの、依然として未解明の点が多く残る。
切り替えられた燃料スイッチ、しかしどうやって?
今回の調査結果では、燃料スイッチが飛行中にCUTOFFの位置へ切り替えられた経緯については明らかになっていない。故意か偶然か、あるいは技術的不具合が絡んでいたのかは不明だ。
ボーイング787「ドリームライナー」では、燃料制御スイッチは操縦士2人の席の間、スロットルレバーのすぐ後ろの位置にある。両側面は金属で保護されている。
スイッチは誤って動かすことができないように意図的に設計されており、操作者はスイッチハンドルを物理的に持ち上げ、戻り止めを越えて動かす必要がある。
航空事故調査の経験が豊富な航空安全の専門家、ジェフリー・デル氏は、両方のスイッチが誤って切り替えられた可能性は考えにくいとの見方を示す。
デル氏はCNNの取材に「どちらのスイッチも少なくとも2段階のプロセスになっている」「まずスイッチを自分の方に引いてから、押し下げる必要がある。意図せずできるような操作ではない」と説明した。
離陸直後のパイロットが意図的に両エンジンへの燃料供給を遮断したとすれば、「奇妙」な話だと、デル氏は指摘する。
「離陸直後にそんなことをするシナリオはこの世に存在しない」(デル氏)
デル氏は、機体のフライトデータレコーダーがスイッチ切り替えの経緯を解明する一助になるはずだと説明する。ただ、AAIBは操縦士2人の間で交わされた会話の全文を公開しておらず、これなしで経緯を把握するのは難しいという。