屋外のバスタブが人気、英コッツウォルズ高級住宅市場の最新トレンド
7月のコッツウォルズ。蜂蜜色の石造りの家々の外ではバラが咲き誇り、人気ホテルやチャールベリーにあるしゃれたパブ「ザ・ブル」などは、地元の住民や観光客でにぎわっている。英国でも屈指の美しい田園地帯として知られるこの地域には、夏の週末を過ごす人々が続々と訪れている。
ある金曜日の朝、筆者はロンドン・パディントン駅から早朝の列車に乗り、コッツウォルズの小さな村、キンガムへ向かった。不動産エージェントやインテリアデザイナーと会う予定だった。その1人は、つい先ほど北米からの購入希望者との朝食を終えたばかりだった。
この季節、コッツウォルズの住宅市場は旬を迎える。バイイング・ソリューションでコッツウォルズ部門を率いるハリー・グラッドウィン氏によれば、今年は1000万-2000万ポンド(約20億-約40億円)の物件市場がかつてないほど活況だという。
「購入者は、ロンドンに住む超富裕層の英国人、新型コロナウイルス後の拠点を求める世界のハイテク・金融業界関係者、そして驚くほど多くの外国人バイヤーだ。外国人たちは単なる週末用の別荘を求めているのではなく、この地に根を下ろしたいと考えている」と語る。
コッツウォルズで高級住宅を求める買い手の間で、人気エリアに変化の兆しが見えている。
これまで最も注目されてきたロケーションは、バーフォード、ストウ・オン・ザ・ウォルド、グレート・チューという3つのマーケットタウンで構成される、いわゆる「ゴールデン・トライアングル」だった。
しかし、グラッドウィン氏によれば、近年はその傾向に変化が表れている。代わりに注目されているのが、スノースヒル、コールド・アストン、ウィッチフォードやコルン・バレー周辺だという。
「これらの地域は広々とした敷地、周囲からの視線の少なさ、そして十分な魅力を兼ね備えている」と話す。
コッツウォルズでは、人気の住宅設備にも明確なトレンドが見られる。
オーストラリア出身で世界的に知られるインテリアデザイナーのリサ・バーダス氏はこの地に拠点を移し、富裕層のニーズを日々体感している。
「気候が安定しているとは言い難い南イングランドでも、屋外のウェルネス空間への関心は確実に高まっている」と話す。
中でも人気を集めているのが、丸い銅製の屋外バスタブだ。酸化による経年変化が美しいとバーダス氏は語った。
また、「屋外ウェルネス空間で最も重要なのは眺め」で、コッツウォルズを一望できるようなシャワーやサウナ、バスが今年の夏のデザイントレンドだという。
インテリアデザイン事務所、シムズ・ヒルディッチの創業者兼クリエーティブディレクターのエマ・シムズヒルディッチ氏も、屋外のバスやシャワーに対する関心の高まりを感じている。
「顧客は、自然とのつながりを感じられる空間を求めている。湖、川、海などの自然の水域で泳ぐワイルドスイミングに引かれる感覚に近い」と述べた。
米国人がコッツウォルズの象徴的な高級不動産物件を購入するケースはこれまでにもあったが、ここへきてその勢いが増している。
グラッドウィン氏によれば、「夏を中心に、再び米国人バイヤーの波が押し寄せている」。
UKサザビーズ・インターナショナル・リアルティのシニアディレクター、アンドルー・バーンズ氏は、30年以上不動産業界にいるが現在ほど米国人顧客が多いことはかつてなかったと明かす。
そうした米国人バイヤーの目的は確実に変化しているという。「コロナ前はセカンドハウスを求める米国人がほとんどだった。 今は多くの買い手がこの地に移住するという前提で物件を探している」と語った。
原題:Outdoor Baths, Americans Are Driving Cotswolds Property Trends(抜粋)