2022年の海底火山フンガ・トンガ大規模噴火による重力波、宇宙まで届く

Image: NASA Earth Observatory / Joshua Stevens / Lauren Dauphin, using CALIPSO data from NASA/CNES, MODIS and VIIRS data from NASA EOSDIS LANCE and GIBS/Worldview and the Suomi National Polar-orbiting Partnership, and GOES imagery courtesy of NOAA and the National Environmental Satellite, Data, and Information Service (NESDIS)

宇宙まで届くレベルの衝撃…。

2022年に起こった現代史最大レベルのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山(以下フンガトンガ火山)噴火の衝撃は、宇宙空間にまで届いていたそうですよ。

海底火山噴火の衝撃、宇宙まで届く

噴火によって排出された火山灰とガスからなる巨大な噴煙は、旅客機が飛行し、ほとんどの気象現象が発生する領域をはるかに超える高度50km以上まで達したといいます。

でも、科学者を仰天させたのは、噴火の衝撃が人工衛星が周回する上層大気にまでおよんだことだったそうです。

AGU Advancesに掲載された新しい研究結果は、このとんでもない巨大噴火が、ほとんどの火山では到底届かない地球の領域にどのように衝撃を与えたのかを解き明かしています。

研究チームは、衛星データと大気モデル(大気の動きをコンピューターで再現する方法)を使って、地表にぴったり沿って進む圧力波のラム波と、最初の重力波が上空で崩れる際に生まれる二次重力波の2つの可能性を検証しました。

その結果、高速で大きな振幅を持つという特性が衛星データと一致していたことから、衝撃の原因は二次重力波であると結論づけました。つまり、フンガトンガの噴火は、空そのものを揺さぶるほど強烈な衝撃を生み出していたというわけです。

Image: Li et al. 2025 / AGU Advances

この図は、2022年のトンガ火山噴火による二次重力波が地球の上空350km(熱圏)に引き起こした変化を表しています。色は温度の変化を示していて、赤いほど温度が上がり、青いほど下がっています。

中心にある赤い三角が火山の位置、図の左手に見える青い小さな丸が地球の反対側の地点です。噴火による衝撃波が、池に石を投げたときの波紋のように、火山から同心円状に広がっていく様子も円や線で描かれています。

下のGIF動画は、この変化をタイムラインで追ったものです。研究結果の参考資料として添付されている動画の最初の30秒(実際の時間では約7時間分)を切り取ってあります。

Image: Li et al. 2025 / AGU Advances

噴火する場所とタイミングさえわかれば、前兆を把握できるかも

この研究結果は、フンガトンガ火山の噴火が始まる前に、かすかな地震波であるレーリー波が発生していたことを示した以前の研究を補う内容になっているそうです。

この人間には感じ取れないレベルのレーリー波は、640km以上離れた地震計で検出されたそう。大災害の前触れとして非常に貴重であるにもかかわらず、見過ごされがちなサインだったとのこと。

これらの研究をあわせると、大規模な火山噴火は、地面だけでなく、海底から宇宙空間の境界まで、地球の大気全体を揺さぶることを示唆しているといいます。

現在、科学者たちは、地球上で最も激しい噴火がいくつかの初期兆候を残している可能性があることに気づき始めています。ただし、いつ、どこを観察すべきかがわかってさえいれば、という前提条件付きですけど…。

火山噴火の影響が宇宙におよぶと生活の脅威に?

今回の研究結果は、地表で起こる現象が、私たちが通信や気象追跡、気候モデル、GPS(全地球測位システム)などのために、ますます依存するようになっている領域である宇宙空間の縁にまで影響を及ぼすことを改めて思い出させてくれます。

このような現象が発生源からどのように波及していくのかをよりよく理解することで、地上で生活する私たちが頼っているテクノロジーをより確実に保護できるようになるそうです。

火山の噴火は人間の力で止められないからタチが悪いですよね…。

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