「自衛と言われても…」気付かぬ尾行、突然の悪意 困惑する女性ら
何の落ち度もない女性が、なぜ命を奪われなければならないのか。いくら考えても理不尽でしかない。
知らないうちに後をつけられ、エレベーターで容疑者と向き合った時、どれだけの恐怖だっただろう。
事件が起きる直前の約50分間、被害女性が歩いたのと同じ道をたどると、怒りがこみ上げてくる。
取材で訪ねた人たちは皆、我がこととして悩んでいた。「自衛と言われても……」
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約50分間、同じ道をたどる
8月平日の夕方。記者(29)は神戸市中央区のオフィス街に立った。まだ明るく、遠くにいる人の顔もはっきりと見える。サラリーマンや買い物客、犬の散歩。さまざまな人とすれ違う。
この場所から事件が始まったとされる。
8月20日午後6時半ごろ、会社員の女性(24)は勤務先を後にした。近くの防犯カメラは、女性の後を追いかける谷本将志容疑者(35)とみられる男性の姿を捉えていた。
歩いて約10分。女性と同じように郵便局に立ち寄り、阪神西元町駅から電車に乗り込んだ。
午後7時ごろ、神戸三宮駅に着いた。JRや阪急、地下鉄が乗り入れる三宮は大きなターミナルだ。繁華街もあり、駅構内や改札前の通りは騒がしい。
多くの人が行き交い、誰が自分の周りにいるかなんて、いつもなら気に留めないだろう。
背筋が凍る思い
女性はその後、洋上に浮かぶ神戸空港に向かうポートライナーに乗り、自宅に向かっていた。記者も駅で電車を待っていると、反対側の電車からスーツケースを持った外国人観光客が大勢降りてきた。
これだけの人混みの中で、後をつけていたとされる谷本容疑者は、女性を見失わずにいたのだろうか。誰かに目をつけられていると思うだけで、背筋が凍る思いがしてくる。
ポートライナーに乗って一つ目、貿易センター駅で降りた。三宮と比べ…