名人戦で再び? 藤井聡太名人の歴史的一手「2手目の3四歩」の真相

第74期王将戦第5局で2手目の3四歩を指す藤井聡太王将=埼玉県深谷市の旧渋沢邸「中の家」で2025年3月8日午前9時1分

 歴史的な一手だった。

 将棋の絶対王者、藤井聡太王将(22)がプロ入り9年目にして初めて公式戦で指した「2手目の3四歩」。

 王将戦という大舞台で、この手を見せられたのは長年の研究仲間、永瀬拓矢九段(32)だ。

 藤井王将はなぜ一貫してこだわり続けた、いつもの手を指さなかったのか。

 挑戦者の永瀬九段は指された瞬間、何を思ったのか。

 名人戦七番勝負で再び相まみえる二人にインタビューし、「3四歩」の真相に迫った。

「異変」感じるも気付かず後悔

 驚きの一手は、3月8~9日に行われたALSOK杯第74期王将戦七番勝負(毎日新聞社、スポーツニッポン新聞社主催)の第5局で飛び出した。

 藤井王将は、2016年12月の加藤一二三九段(85)とのデビュー戦で後手番となり2手目に8四歩と着手。その後、後手番になった256局すべてで、先手番が何を指しても8四歩と応じてきた。

 「どんな作戦でもかかってきなさい」。そう言っているようだと感じる棋士もいた。

 永瀬九段は3四歩が指された瞬間をこう振り返る。

 「私が初手2六歩を指し、数秒で藤井さんは3四歩を指しました。2六歩を指してすぐ、藤井さんが指す前に3四歩が来るのが分かったんですよ」

 わずか数秒の間に永瀬九段が気付いた理由がある。藤井王将の様子が普段とは明らかに違ったのだ。

 対局前日の7日、埼玉県深谷市の埼玉グランドホテル深谷で午後6時から前夜祭が行われた。控室で、藤井王将と永瀬九段が背中合わせになって…

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