自宅待機1年半は会社のパワハラか 夫の死が問う「働く」意義
夫は2021年10月、57歳で自ら命を絶った。新型コロナウイルスが収束の兆しを見せ始めた頃だった。
大卒から約30年勤めてきた会社から自宅待機を命じられ、期間は1年半を超えていた。
いつまでたっても出社が認められないことを気にしていた。
「何がそんなに苦しかったの」
真実を知りたいと、妻(61)は夫のスマートフォンを開いた。
「僕だけ仕事させてもらえない」
<本日11時出社いたします>
<金曜朝から沖縄出張で土曜日帰りになります>
<息子の忘れ物を届けてから出社いたします>
夫が所属していた「営業統括第一G」のグループラインに、他の社員たちのメッセージが並ぶ。夫以外は皆、出社して業務報告をしていた。
意図的に夫を傷つけるような内容ではない。それでも妻の脳裏には、亡くなる4カ月前に取り乱した夫の姿が浮かんだ。
「僕だけ仕事をさせてもらえない」「みんな仕事している!」
自宅で一人、スマホを見つめていた夫の心境を思うと涙があふれた。
夫が会社から求められていたのは自宅でのウェブ研修とリポートの提出だった。
表計算ソフト「エクセル」の使い方や自己啓発――。一般的な研修が多かった。
リポートを提出すれば、新型コロナ対策で国から支給される「雇用調整助成金」が加算された。社会が自粛する中、多くの企業が助成金を利用していた。
<私は雇用調整助成金による、会社への収益貢献のため、ほとんど出社できませんでしたが、来年もよろしくお願いします。良いお年を>
夫は20年の年末にグループラインにメッセージを送っていた。
自分の役割は雇用調整助成金の「受け皿」。むなしい研修であっても、コロナで苦境にある会社のために受講する――。
そう自認しているようだった。
「1年半もの間、夫だけに仕事をさせず、突き放した」。妻は22年、大阪西労働基準監督署に労災認定を求めた。
夫の勤務先だった大和ハウスグループの広告・旅行会社「伸和エージェンシー」(大阪市)が最初に自宅待機を命じたのは、緊急事態宣言が初めて発令された20年4月。自死するまでの1年半、夫は出社が認められなかった。
妻は「精神的に追い込むパワーハラスメントだった」と訴えた。
しかし、会社は争った。
社員のSOSに企業は答えることができたのか。労災申請、損害賠償訴訟で異なる判断が示されます
「過小評価」を否定
「亡…
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