道路に倒れていた小さな犬「死体かと思った」…救出直後の衝撃と、飼い主の“信じがたい一言”(まいどなニュース)

「最初は死体だと思った」 加納さんがペキニーズを見つけたのは、片側2車線の道路沿い。 「道路にはいつくばっていて、最初は死体だと思いました」 抱き上げた瞬間、異常な臭いに気づいたといいます。 「皮膚はベタつき、落屑と傷が無数。掻痒がひどく、交番に連れていくと悪臭が充満して、所長も“ひどすぎる”と呆れていました」 その後、警察と保健所に通報し、一時保護へ。翌日、飼い主が名乗り出ましたが…。

「これでもしっかり飼育していた」 飼い主は、犬がこの状態であるにもかかわらず、こう主張したといいます。 「これでもしっかり飼育していた」とひと言。その日、便からは瓜実条虫(うりざねじょうちゅう、サナダムシの一種)が出てきました。加納さんは、話を重ねる中で“ある確信”に至りました。 「経済的なご事情や、理解・判断が難しい状況にあったのではないかと感じました。即時に所有権放棄の契約書を交わしました」

「全身の9割がただれ、爪は伸び切り…」 保護した時の健康状態は深刻でした。 ・マラセチアによる強いかゆみ ・皮膚が9割ただれ露出 ・傷の多発 ・長期間切られていない爪 ・強烈な悪臭 「深刻でない部分がひとつもない。全てが問題でした」

「赤みが引き、かゆみが和らいできた」 現在は、薬用シャンプー、複数の投薬、セラミド保湿、腸内環境の改善などを進めているといいます。 「まずはマラセチアの治療に専念しました。赤みやかゆみが少しずつ和らいできています」 しかし、加納さんは現実的な負担についても語ってくれました。 「完全に個人の保護なので、費用はばかになりません。相手方(元飼い主)は“すみません”と謝るだけです。また今回保護した子以外にも数匹飼っているようです。いわゆるアニマルホーダー(異常な数の動物を集めて飼うが、十分な世話ができない多頭飼育者)ではないかと思われます」


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それでも“動けない”行政の限界。最も胸を締め付けられるのは、行政対応の現状です。 「保健所も元の飼い主の状況は把握していたようですが、対応はやや慎重すぎる印象でした」 加納さんは、それでも“公務を果たしてほしい”と訴えます。 「保健所は限界を感じる必要はない。ただ職務を全うしてほしい」

今回のケースは、単なる虐待やネグレクトではありません。 背後には、 ・繁殖屋 ・アニマルホーダー ・行政の機能不全 この三つが複雑に絡む“悪循環”が存在しています。 加納さんはこう語ります。 「繁殖屋は犬を“物”としか思っていません。使い物にならないと遺棄する。同じ地域では数年前、生きたまま崖から投げる事件や置き去りが続きました」 「ホーダーには福祉の介入が必要。個人の努力では追いつきません」

保護から始まった“第2の暮らし”。最後に、加納さんはこう語ってくれました。 「この子には必ず幸せになってほしい。保護したその日から、そう思っています」 道路に倒れ、皮膚がただれ、全身が痛みに襲われていたペキニーズ。今、少しずつ表情が変わり始めています。 その裏で浮かび上がる、“日本のアニマルウェルフェアの課題”──。 この現実を知ることが、同じ運命にある動物をひとつでも救うことにつながるのかもしれません。 (まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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