「推し活」大進撃、我が道を行くエンタメ関連「人気沸騰の6銘柄」 <株探トップ特集>

「推し活」から生まれる人々の熱狂――。これをビジネスチャンスに業容を拡大し続けるエンタメ関連株からは目が離せない。
―政治・経済に不透明感は依然拭えず、成長路線走る“ディフェンシブ”な好業績株を選抜―  トランプ米大統領の動向に注意は怠れない。今月10日、レアアース規制を発表した中国に突如として100%の追加関税を課すと表明した。これを受けた株価急落ですぐに態度を軟化させたが、同氏の予測不能さを改めて認識させられた格好となった。通商問題は同氏の一丁目一番地であり、対中国に限らずディール材料としていつ何時持ち出してくるかわからない。先行き不透明感が依然として拭えないなか、この影響を受けにくいセクターの代表格、エンターテインメント株に改めて目を向けてみたい。数ある関連銘柄の中から、昨今広がりをみせる「推し活」の切り口で有望株を探ってみた。 ●ドンキが関連商品を発売

 推し活とは、お気に入りのアイドルやスポーツ選手、 キャラクターなどを応援する活動のこと。主にグッズ購入やイベント参加を通じて「推し」の活躍を支える。こうしたムーブメントは海外では「ファンダム(熱狂的なファン)」とも呼ばれ、その対象は例えば「BTS」をはじめとするK-POPグループ、あるいは米大統領選に影響を与えるとも言われる世界的歌手テイラー・スウィフト氏などが挙げられる。足もと爆発的な人気を誇る中国発のキャラクター「ラブブ」もその一つ。同キャラを手掛ける中国企業ポップマートの株価急騰は話題を呼んだ。

 もちろん日本でもこうした動きは盛んだ。独自に発展したオタク文化をベースに持ち、任天堂 <7974> [東証P]やサンリオ <8136> [東証P]といった有力IP(知的財産)を保有する企業を数多く抱えることからコンテンツの消費、供給ともに活発な「推し活の本場」として世界で存在感を示している。推し活の普及とともに、近年はその経済効果に着目する声もしばしば聞かれる。推し活消費の特徴として購買意欲の強さがよく指摘される。食費や交際費を節約してでも出費を惜しまない傾向があるとされ、国内外の政治・経済といったマクロ環境に左右されないディフェンシブ性があるとも評される。

 ビジネスチャンスを捉えようと企業の動きは相次ぐ。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]が運営する「ドン・キホーテ」は9月、推し活に対応したキャリーケースを発売した。前面の収納部分を透明にし、中に入っているグッズを外に見せることができるというもの。東芝テック <6588> [東証P]はレシートに広告を印字できるサービス「かみ推しレシート」を今年6月に開始した。JR東日本 <9020> [東証P]は駅構内や電車内にポスター、パネルなどを設置するサービス「推しSta!」を昨年からスタート。少額から駅ポスターを掲載できる取り組みが好評だったため正式サービスに格上げした。日本航空 <9201> [東証P]とKDDI <9433> [東証P]は新たな移動需要の創出を目指す「デジタル×推し活」プロジェクトを昨年に立ち上げた。

●最高益や増配、黒字予想など6銘柄

 パルグループホールディングス <2726> [東証P]は若者向けのアパレル事業が主力だが、雑貨事業として300円ショップ「3COINS(スリーコインズ)」を全国展開する。推し活においては推しの写真、ぬいぐるみを室内に飾る、あるいは持ち歩くということが一般的に行われるが、スリーコインズではこうしたニーズに応えるバッグやポーチ、インテリア商材を数多く取り揃えている。会社側では雑貨事業の更なる拡大に向け、新商品の投入や大型店の出店、海外進出の取り組みを加速させている。業績はここ数年、売上高・営業利益とも急拡大トレンドが続く。

 ハピネット <7552> [東証P]はバンダイナムコ系の玩具卸最大手。マンガやアニメなどのキャラクターのフィギュアが入った「カプセルトイ」を手掛け、この分野でも業界トップシェアを誇る。カプセルトイの自動販売機をショッピングモールや量販店、駅のコンコースなど全国各地に設置し、専門店「gashacoco(ガシャココ)」の出店も進めている。インバウンド需要に加え、子供だけではない「大人需要」も取り込み、25年3月期は営業35%増益で過去最高を更新。26年3月期も小幅ながら増益を確保する見通しだ。株価は上場来高値圏を舞っている。

 エディア <3935> [東証S]は保有するコンテンツIPを活用し、ゲームやCD、グッズ、出版などを展開する総合エンタメ企業。近年はオンラインくじサービスが成長し、アニメからアーティスト、アイドル、スポーツ選手までオールジャンルの商品を取り扱う「くじコレ」や、女性向けをターゲットとする「まるくじ」が収益を牽引する。電子書籍の売り上げも寄与し、上期(3-8月期)の営業利益は前年同期比2.3倍の2億9800万円と急増。通期計画(4億~5億円)に対する進捗率は約6~7割と良好だ。もちろん最高益予想であり、増配も見込む。

 東京通信グループ <7359> [東証G]はゲームアプリ開発を主力とするが、アーティストのファンクラブ運営やイベント開催といったエンタメ分野にも注力する。推し活メッセージアプリ「B4ND(ビヨンド)」も提供している。ゲーム事業の収益性向上に取り組み、25年12月期は4期ぶり営業黒字を計画。上期時点で既に黒字化を果たしている。同社株は数年前、作詞家・秋元康氏が手掛けるアイドルグループの所属企業に出資したことが材料視され、大相場を演じたことがある。その後株価は低迷していたが、今年に入り大底をつけ上昇基調を歩み始めている。

 エムアップホールディングス <3661> [東証P]は有料ファンサイトの運営からグッズ販売、コンテンツ配信、電子チケットまでアーティストの活動を支援するサービスを網羅的に提供。「Mrs. GREEN APPLE」「あいみょん」をはじめ数多くのファンサイトを手掛ける。新規アーティストの獲得や会費の値上げに取り組み、高成長路線をまい進。26年3月期の営業利益は47億円(前期比16%増)を予想し、第1四半期(13億8700万円)時点で順調な進捗。年間配当も増額を見込む。株価は短期的には調整場面もあるが、中長期では一貫して右肩上がりを続けている。

 トランザクション <7818> [東証P]は雑貨の企画開発・販売を手掛け、エコバッグをはじめとする環境配慮型商品を展開するが、もう一つの柱がエンタメ業界向けのグッズ製作。旺盛な推し活需要を追い風に、25年8月期は10期連続の営業増益を達成。続く26年8月期も増益予想で実質増配も計画する。2010年の上場以降、株式分割考慮ベースで毎年増配を継続している点はポイント。同社株も目先は売りに押される展開だが、こちらも時間軸を伸ばして眺めると長期上昇トレンドを描いていることがわかる。腰を据えて押し目をじっくり拾うスタンスが有効だろう。

株探ニュース

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