皇嗣の秋篠宮さまでは引き継げない…皇室研究家が「"愛子皇太子"を実現するしかない」という深刻な理由(プレジデントオンライン)
現在の皇室には皇太子が存在せず、天皇陛下の弟、秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣だ。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「現時点では、天皇陛下の大切なお務めの一つである、皇室のさまざまな祭りを、次の世代に受け継ぐための経験をしている皇族が誰もいないことになる。そして、令和の皇室で皇太子になりえる資格をもっておられるのは、唯一の皇女、敬宮殿下お一方だけだ」という――。 【写真をみる】笑顔でスピーチをする愛子さま ■天皇陛下の「国事行為」というお務め 天皇陛下のお務めは、およそ3種類に整理できる。 その1つは、憲法に列挙されている国事行為。「内閣総理大臣の任命」や「国会の召集」など、13種類ある。 天皇陛下が法的な義務としてどうしてもなされなければならないのは、少し意外かも知れないが、じつはこの国事行為だけだ。 国事行為は、天皇陛下が必ずなされなければならないとともに、天皇陛下から正式の委任を受けた場合を除き、天皇陛下以外は誰も行うことができない。しかも、国家の運営にとって最も枢要な事項ばかりだ。 たとえば、国会の多数による議決で高市早苗衆院議員が内閣総理大臣に“指名”されても、天皇陛下によって“任命”されない限り、新しい内閣は発足できない……という具合だ。 ただし、国事行為については「内閣の助言と承認」が不可欠だ。よって、それは法的には“内閣の意思”による行為といえる。 たとえば、秋篠宮殿下が“傍系の皇嗣”でいらっしゃる既定の事実を改めて公示する、「立皇嗣の礼」という前代未聞の儀式が行われた。もともと“直系の皇太子”の場合は「立太子の礼」が行われる一方で、傍系の皇嗣は類似の儀式を行わないのが原則だった。しかし、それは国事行為だったので天皇陛下に選択肢はない。 これによって、天皇陛下がご自身のお気持ちによって秋篠宮殿下に次代を託そうとされた、と早合点してはならないだろう。むしろ、傍系の皇嗣を次の天皇として即位されることが確定している「皇太子」と同じ立場のように印象づけることを狙った、“内閣の思惑”が透けて見える儀式だった。 ■2大行幸啓から4大行幸啓へ 次に、象徴としての公的な行為がある。こちらは、もっぱら「日本国民統合の象徴」という憲法上の地位を根拠とするもので、具体的な内容は憲法にはいっさい記されていない。 しかし、恒例化した行事として、たとえば毎年、皇后陛下とご一緒に地方を訪れられる「4大行幸啓(ぎょうこうけい)」などは、広く知られているだろう。 この地方ご訪問は、昭和時代には「全国植樹祭」と「国民体育大会(今は国民スポーツ大会)」の2大行幸啓だけだった。 平成になると、それまで皇太子のご公務とされていた「全国豊かな海づくり大会」が、新しく天皇のご公務に格上げされた。その結果、3大行幸啓と呼ばれることになった。 令和の今は、天皇陛下が浩宮(ひろのみや)殿下と呼ばれていた頃に第1回から参加されてきた「国民文化祭」、および平成時代から始まった「全国障害者芸術・文化祭」が平成29年度から一体的に開催されることになり、皇太子のご公務から天皇のご公務へと引き上げられた。これによって、4大行幸啓という形が定着している。