ドコモユーザー以外は「d Wi-Fi」の使い勝手が変わる? 12月から

山口健太ITジャーナリスト
iPhoneを「d Wi-Fi」に接続した様子(筆者撮影)

NTTドコモが、公衆Wi-Fiサービス「d Wi-Fi」の提供条件や機能を2025年12月に改定することを発表しました。

これに伴い、ドコモ回線契約のないユーザーは使い勝手が変わる見込みです。なぜドコモは変更するのか、狙いを探ってみます。

ドコモユーザー以外は利用回数や時間を制限

2020年3月に始まったd Wi-Fiは、ドコモの回線契約を持っていない人でも無料の「dアカウント」と「dアカウントクラブ」の会員になることで契約できるため、実質的に誰でも無料で使えるサービスといえます。

今回発表された12月のサービス改定では、ドコモの回線契約を持っていない人はd Wi-Fiが自動的に解約されてしまいます。その代わり、誰でも利用できる「都度利用機能(仮称)」が始まります。

この都度利用機能により、ドコモ回線を持っていない人でも、引き続き無料でd Wi-Fiを使うことができます。この新しい方式になるメリットとして、ドコモは「利便性の向上」を挙げています。

というのも、これまでは無料とはいえ「契約手続き」が必要でしたが、都度利用機能なら「0000docomo」のアクセスポイントに接続すると出てくるウェブ画面(キャプティブポータル)から、そのまま利用できるというわけです。

たとえば店舗内など携帯電話の電波が届きにくい場所でも、d Wi-Fiに簡単につながるようになればdポイントやd払いを使うのに便利です。これは確実にメリットといえるでしょう。

ただ、接続時に「d Wi-Fiパスワード」の入力を求められる点は変わっておらず、事前に設定しておく必要はあるようです。このあたりはdアカウントへのログインだけで完結するようにしてほしいと思うところはあります。

都度利用機能でも、接続時には「d Wi-Fiパスワード」が必要になる(NTTドコモのプレスリリースより)

通常のd Wi-Fiとの違いとして、都度利用機能には「利用回数」と「時間」に制限があります。ドコモによれば具体的な制限内容は検討中とのことですが、これまでのように制限なく使えるというわけにはいかないようです。

また都度利用機能で利用できるアクセスポイントは「0000docomo」に限られており、SIM認証やIEEE802.1X認証に対応した「0001docomo」は対象外となっています。

0001docomoでは、ドコモのSIMカードが入っていないパソコンなどから自動ログインする機能が提供されており、スマホのテザリングなどを使うことなく無料でデータ通信ができるので、筆者も個人的に利用していました。

ただ、これまでは利用回数や時間に制限がなかったことから、一部の人が大量に使っていた可能性はあります。クラウドストレージの同期やOSのアップデートなど、意図せず大容量の通信をしてしまうケースもありそうです。

その場合でもd Wi-Fiのバックボーンが固定回線であれば問題はなさそうですが、携帯電話のネットワークや、最近ではStarlinkを利用する事例があることを考えると、誰でも無制限に使えるというのは限界があるのかもしれません。

こうした制限をかける意図をドコモに確認したところ、「従来のサービスに対するお客様の利用実態を踏まえ、変更を実施する」(ドコモ広報)との回答がありました。

なお、都度利用機能が始まるのは「2026年度中」となっていますが、d Wi-Fiを契約している人向けには「2025年12月」から先行して提供されます。特にドコモの回線契約がない人は、早めにd Wi-Fiの契約手続きをしておくとよいでしょう。

ドコモ経済圏にとっても重要な存在に

5Gのネットワークや無制限の料金プランが普及することで、公衆Wi-Fiサービスはやがて不要になるだろうと筆者は考えていました。

しかし実際には、サービスを終了する事例はたしかにあるものの、d Wi-Fiは無料のサービスにもかかわらず残り続けています。その理由の1つが「経済圏」でしょう。

ドコモは通信事業と同じくらい、金融やコンテンツなど非通信の事業にも注力しています。そうしたドコモ経済圏の利用者は、必ずしもドコモ回線を契約しているとは限りません。

またd Wi-Fiでは、利用者の同意に基づいて「どんな人が使っているか」というデータを収集しています。これはdポイントやd払いと同じように、マーケティングに活用できる要素といえます。

このことを踏まえると、他キャリアの利用者による大量利用は抑止しつつ、もっと気軽にd Wi-Fiを使ってもらうことで経済圏を広げたい、というのがドコモの思惑といえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、2012年にフリーランスのITジャーナリストとして独立。日経クロステック(xTECH)やASCII.jp、ITmedia、マイナビニュースなどの媒体に寄稿し、2021年からは「Yahoo!ニュース エキスパート」として活動しています。

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