勝利直前に浮かんだ“どん底” 菅沼菜々の「信じられない」復活V
◇国内女子◇パナソニックオープンレディース 最終日(4日)◇浜野GC(千葉)◇6751yd(パー72)◇晴れ(観衆3959人)
菅沼菜々が1年194日ぶりの復活優勝を遂げた。首位タイで出た最終日に5バーディ、2ボギーの「69」で回り、通算10アンダーとして後続を1打差で振り切った。
序盤は優勝を意識するあまり、ショットが少し乱れた。次週に控える国内メジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」に出場するには今大会で優勝するのが条件とスタート前に知り、「プロになってから一回も欠かしたことがない試合。優勝しないと出られないじゃん」と気持ちが前に出た。「私は緊張するとスイングが早くなって左に行くミスが多くなる。スイングが早かったのを4番ぐらいから気付いて、修正した」と心を落ち着かせた。
8番のパー3で同じ最終組の蛭田みな美がホールインワンしても、「キャディさんに『周りを気にせずに自分に勝ちなさい』って言われて。一打に集中できた」。11番でバーディを奪って単独首位に立つと、12番で2連続バーディとした。
残り3ホールで、後続に2打差の状況となる。しかし「終わりが近づけば近づくほど、めちゃめちゃ緊張して。早く(プレーを)終わらせたい」。17番で10mから3パットを喫し、「(ファーストパットが)ショートして『本当にやばい』って。でも、気持ちは切らさずに」と最終18番に進んだ。
優勝を確信したのは、18番(パー3)でグリーン左ラフからの2打目の後。56度のウェッジによるショットはピンそば40センチについた。パーパットを打つまでの間、シードを陥落して「どん底だった」昨季を思い出して涙が出そうになった。「昨年はティショットも曲がるし、パターも早いし。もう全部がうまくいかなかった。ゴルフ場に来ることも嫌になるぐらい。そんな感情的な部分を思い出した」
2勝を挙げた一昨年に対し、2024年シーズンは初戦の「明治安田レディス」から4試合連続で予選落ちした。試合を重ねるごとに「予選落ちが受け入れられなかった」と気落ちした。原因は右ひざのけがに起因するショット不振。飛行機や新幹線に乗れない“広場恐怖症”もあり、北海道などでの大会に出られず「試合数が減っていって、夏ぐらいから“やばい”」と焦った。
結局シード落ちが決まり、今季の出場権を懸けた昨年末の予選会は102位に沈んだ。「本当にボロボロだったので、自分の中でゴルフが好きになるまでは練習しない」。そう決めて、プロになってから初めて1カ月半という期間、クラブを握ることをやめた。「それで逆に変な癖が消えて。森守洋コーチに習いに行って、しっかりまた良かった時のスイングに戻せた」と振り返る。
「信じられない」という復活優勝により、次週の国内メジャーやフィールドが限られるシーズン最終戦「リコーカップ」にも出場できるようになった。「本当にすごくうれしいし、たくさん上位に入れる強い選手になりたい。あとは、ひとりでも誰かに勇気や希望が届けられるように。それが、私がゴルフをやっている意味だと思うので」と“ゴルフ界のアイドル”は再び目を輝かせた。(千葉県市原市/石井操)