ロシア停戦の米提案、ウクライナ寄りに条件変更で進展-当局者

ウクライナとその欧州支援国は、米国が受け入れを迫ってきた和平提案をよりウクライナに有利な条件へと変更することで一定の進展があったと、高位当局者らが明らかにした。ただ、依然として主要な対立点が残っているという。

  ドイツのメルツ首相は「幾つかの問題」を解決するため23日にジュネーブでウクライナと米国の交渉担当者が直接会談したことを評価しつつ、ウクライナに対する領土放棄や軍の縮小などを含むトランプ政権の当初の要求に疑問を呈した。週内の事態打開は想定していないと語った。

  メルツ氏は24日、欧州連合(EU)とアフリカ連合(AU)の首脳会議が開かれたアンゴラのルアンダで記者団に対し、「ウクライナに一夜にして平和が訪れることはない。ウクライナが一方的な領土割譲を強制されるようなことがあってはならない。侵略に対して有効な自衛の能力を持つことも必要だ」と述べた。

  米国が提示してきた28項目からなる当初の和平案は、ウクライナに北大西洋条約機構(NATO)加盟の断念や、ロシアが支配していない地域を含むドンバス地方の割譲などが含まれ、ウクライナやその支援国に不意打ちを食らわせた。

  だが、米国とウクライナの当局者はその後、和平案の詳細について協議を進めていると明らかにした。事情に詳しい関係者によると、現在では新たな案として19項目に絞り込まれているという。

動画:ブルームバーグのインタビューに応じるウクライナのブルシロ大統領府副長官

  トランプ氏も和平交渉に進展があったことを示唆。前日には感謝の意が伝わってきていないとしてウクライナ指導部を非難していた同氏だが、24日は「実際に目にするまでは信じるべきではないが、何か良いことが起きつつあるかもしれない」とトゥルース・ソーシャルに投稿し、交渉に弾みが付きつつあることをほのめかした。

  一方、ウクライナ大統領府のブルシロ副長官は同日行われたブルームバーグ・テレビジョンのインタビューで、和平交渉の核心である領土問題に関する議論は、ウクライナと米国の首脳会談で扱われることになるだろうと語った。

  ウクライナにとってNATO加盟は検討対象外ではなく、「ウクライナの安全を保証できる選択肢の一つ」だと述べた。

  トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領との会談を計画しているかについて、ホワイトハウス当局者からのコメントは得られていない。

ウクライナのゼレンスキー大統領(右)とイェルマーク大統領府長官(左)

  ゼレンスキー氏は同日、協議が「重大な局面」に差し掛かったと説明し、領土と主権を巡る議論は困難なものになるだろうとの認識を示した。

  ウクライナ大統領府が配布した原稿によると、ゼレンスキー氏は声明で、「プーチンは領土保全や主権という原則を犯して盗んだ物を法的に承認されることを求めている。これが大きな問題だ」と述べた。

  ロシア側は24日、新たな修正案に難色を示した。インタファクス通信によると、ウシャコフ大統領補佐官(外交政策担当)は「今朝になって欧州案を知ったが、第一印象ではまったく建設的ではなく、われわれには受け入れられない」と述べた。

  ロシア大統領府(クレムリン)の声明によると、プーチン大統領は24日、トルコのエルドアン大統領と米国案について協議。トルコはこれまでもウクライナ・ロシア間の調停役を務めてきた経緯がある。クレムリンによれば、プーチン氏はエルドアン氏に対し、これらの提案が原則的には和平合意の基礎となり得ると述べた。

  ウクライナ大統領府のイェルマーク長官は、同国と米国の交渉担当者が「精査され、更新された和平の骨組みに関する文書」をスイスで準備したと、テレグラムに投稿。協議では立場のすり合わせや今後の具体的な動きの明確化において、大きな進展があったと続けた。

  いかなる合意もウクライナのゼレンスキー大統領に加え、トランプ氏とロシアのプーチン大統領の承認を必要とする。

  ブルシロ氏は「ウクライナ側の代表団が提示した全ての立場を相手が受け入れる」と確認することが必要だとし、「条件の一部だけを抜き出して、これは良い、あれは駄目だ、などと議論することはできない」とも述べた。

  同氏によると、実務レベルでの交渉が今後数日間続く予定。

  ルビオ米国務長官はジュネーブでの会談後、トランプ氏がウクライナに要求した27日の回答期限は絶対的なものではなく、次の週にずれ込む可能性があるとの認識を示した。

最新案

  事情に詳しい関係者によると、最新案には約1000億ドルに及ぶロシア凍結資産を米国主導のウクライナ再建計画の費用に充てるとの文言は消え、欧州当局者らは安どした。当初案では、この資産は米国とロシアによる投資基金に移管され、プロジェクトで得た利益の50%を米国が受け取るとうたわれていた。

  欧州当局者らはまた、当初案には驚かされたものの、その後でトランプ政権が欧州と対話する姿勢を示していることに楽観している。

  関係者によると、国家安全保障担当の高官らは23日夜、当初案を縮小して可能な限り速やかな停戦を実現するため必要な主要項目のみを残す作業において、大きな進展を遂げた。その他の項目は今後の交渉で扱う別文書に取り分けられたという。

  ブルシロ氏は「全ての問題が解決された時、その一部、例えば領土問題などが議論されずに残っていれば、各国の大統領がそれを話すため連絡を取り、最終決着に向けた会談の用意を調えることになるだろう」と論じた。NATO加盟についても、「ウクライナにとっては、完全に協議の対象から外しているということはない」と付け加えた。

  23日夜から24日朝にかけ、ウクライナは再びロシアのドローン攻撃に襲われた。現地の当局によると、第2の都市ハルキウでは4人が死亡、南部のオデーサ州では港湾インフラが損傷した。同国北東部や中央部ではエネルギー関連施設が標的になったと、エネルギー省がテレグラムで報告した。

原題:Ukraine and Allies Warn US Against Rush to End Russia’s War (2)(抜粋)

— 取材協力 Oliver Crook and Iain Rogers

関連記事: