猟友会が反発、自治体は不安…クマへの新対策、見切り発車で開始
緊急銃猟開始を前に行われた訓練で、模型銃を構えて目標を狙うハンター=札幌市西区の宮丘公園で2025年8月14日午後2時49分、後藤佳怜撮影
住宅街にある真っ暗な空き地に、体長2メートルの獣が潜んでいた。
7月18日未明、北海道南部の福島町。数人のハンターらが対峙(たいじ)していたのはヒグマだ。
空き地は周囲より一段低く、銃弾が人や民家に到達するのを地面が遮る地形だった。それを確認した警察官がハンターに発砲を命令する。
ヒグマは明るみに出てくると、攻撃しようと四つんばいで前傾姿勢に。頭を下げた瞬間、ハンターが頭部に向けて発砲した。
福島町では6日前、住宅街で男性がヒグマに襲われて死亡していた。DNA型鑑定で射殺されたヒグマが男性を襲ったと特定され、町は安堵(あんど)に包まれた。
市街地に出没したクマを確実に駆除するには銃猟しかないが、鳥獣保護管理法は市街地での発砲を禁じる。福島町の事例は警察官職務執行法に基づく緊急措置だ。
そこに9月、新たな発砲の選択肢が加わる。
緊急銃猟と呼ばれる制度で、住民が銃弾に当たる恐れがないなど特定の条件を満たせば、市町村の判断と責任の下、生活圏で発砲できる。
警察官不在の場合や、警職法では対象外だった無人の建物内に侵入したケースでも銃猟が可能となる。
背景にあるのはクマと人のあつれきの高まりだ。
2023年度はクマによる全国の人身被害が198件、219人と過去最多を記録。市街地への出没が相次ぎ、銃猟の選択肢を増やすべきだとの声が強まった。
猟友会、市町村から反発や不安も
だが、制度開始を控え、実質的に駆除を担うことになる猟友会から反発の声が上がった。
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