ビッグテックの終焉:メレディス・ウィテカー ──特集「THE WORLD IN 2025」

そして大資本家たちは批判の輪に加わるだけでなく、新しいパラダイムへの投資も模索している。テック業界の投資家たちは、監視や社会的統制、そしてあらゆる悪影響を拒否するテクノロジーに焦点を当て、目的に沿った資金調達モデルを開発している。これらの投資家たちと議論している魅力的なモデルのひとつは、伝統的なVCのインセンティブ(ユニコーン企業への投資、スケール、買収、富の獲得という流れ)と、基金の一定割合をテクノロジーのオープンで非営利的な重要インフラに充てるというコミットメントを組み合わせたものだ。これは投資としてではなく、テクノロジーの健全なエコシステムが存在できる基盤を維持するための"貢献"として(そして投資家と有限責任パートナーたちに税制上の優遇措置をもたらすものとして)機能する。

このような支援は国の資本によって補完されるべきだと、わたしは考えている。適切に実行するために必要な資金が、あまりに巨額だからだ。身近な例を挙げると、Signalの開発と維持には年間約5,000万ドル(約75億円)かかりるが、これはテック企業としては非常に少額といえる。

これに対してドイツの「Sovereign Tech Fund」のようなプロジェクトは前進への道筋を示している。これは国家資金をオープンソースの中核インフラに分配する手段だが、完全に独立管理され、支援対象の取り組みと国家との間で緩衝材の役割を果たしている。

堆肥化によって死んだ細胞から栄養が生み出されるように、2025年にはビッグテックの終焉が新しく活力に満ちたエコシステムの始まりになるだろう。聡明で本当にクールで、心から興味をもつ人々が、再びその時を迎えることになるのだ。これらの人々は単なる利益と支配のためではなく、本当の革新性と利益をもたらすテクノロジーのエコシステムを設計し、(再)構築するリソースと"許可"を得る。この流れが永遠に続きますように!

メレディス・ウィテカー | MEREDITH WHITTAKER通信内容が暗号化されるメッセージアプリ「Signal」を運営するSignal Foundationのプレジデント。AI Now Instituteのチーフアドバイザー。以前はAI研究者としてグーグルに勤務していた。

(Originally published in the January/February 2025 issue of WIRED UK magazine, edited by Daisuke Takimoto)

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