藤井聡太名人が「負けてもおかしくない」と感じた局面 名人戦第1局
東京都文京区のホテル椿山荘東京で9、10の両日指された第83期名人戦七番勝負の第1局(毎日新聞社、朝日新聞社主催)。
藤井聡太名人(22)は不利とされる後手番ながら、永瀬拓矢九段(32)との角換わりの熱戦を制して3連覇に向け、好スタートを切った。
Advertisement終局後の報道陣との主なやりとりは次の通り。
【新土居仁昌、丸山進】
事前に研究も、難しさあった
――後手番で角換わりの将棋になったが、序盤を振り返って。
藤井名人 (3月の)棋王戦で増田康宏八段に指された作戦で、壁銀にはなるが、一瞬、玉が深い形なので、それを生かして攻めていけるかどうかという感じで、(攻めが)細い感じもあるが、難しいのかなと思ってやっていました。
――前例もあって、十分やれるとみていたのか。
◆いや、先手の指し方は相当いろいろあるかなと思っていたので、どういう展開になるかなと思っていました。こちらは桂馬を取っているが、歩損で馬を作られているので、本譜のように攻め合いにこられるか、受け止めにこられるか、どちらもあり得るのかなと思っていました。
――封じ手前の8八歩(78手目)から9八歩(82手目)の局面はどうみていたか。
◆かなり難解な局面で、8八歩はいったん打ってみたいところかと思ったが、9八歩は7五歩と比べて損得がかなり際どい感じがしていました。
――事前の研究はどこまでしていたか。
◆一応、8八歩と打って、かなり際どいので、そのあたりまで考えていて、難しいのかなと思っていました。
かなり怖い局面
――封じ手のあたりの形勢は難しかった?
◆終盤なので明確な判断はできないですが、難しいかなと思ってやっていました。
――2日目に入って、4四角(86手目)や7六歩(88手目)もかなり時間を使って、今までの2日制の時間の使い方より慎重だったようだが。
◆7五歩(84手目)に6六銀と立たれて、ちょっと7六歩が成算が持てなかった。4四角も本譜のように支えられて、角を手放してしまっているので、攻めが続くかどうか微妙なところかなと思っていました。
――7七銀(90手目)と打ち込んだところの手応えは。
◆6五桂を外されてしまうとかなり(相手陣が)堅くなるので、消去法で仕方ないと思っていたが、こちらも4三桂打ちの筋を与えることになるので、どうなっているかは分からなかった。
――終盤、8一飛(100手目)の局面は攻める手もあったようだが。
◆最初は6六角と打とうかなと思ったが、7六金と打たれて、7七角成、同玉のようになると、玉が中段に来られて、ちょっと先手玉の急所を突く手が分からなかった。ただ、8一飛自体は全く詰めろになっていない手なので、うまく攻められたら負けてもおかしくない。かなり怖い局面かなと思っていました。
――勝ちに近づいたのはどの辺りか。
◆9七金(112手目)と打って、読み抜けがなければ詰んでいるんじゃないかと考えていました。
一手一手に時間かけ
――一局を通して。
◆本局は1日目から終盤戦のような展開になって、これまでの2日制の対局でもそういった展開は多くはなかったですけど。そういった終盤戦で一手一手、時間を使って考えたが、結局、分からないところがかなり多かったと感じています。
――3連覇に向けて大きな1勝を挙げた。
◆ずっと際どい局面だったが、持ち時間9時間の将棋で目いっぱい考えることができてよかった。
――第2局への抱負を。
◆期間が3週間弱空くので、しっかり準備をしていきたいと思います。
――後半に長考した手がかなりたくさんあった。1カ月間、公式戦を離れていた影響はあったか。
◆持ち時間がまだ残っている状況だったのと、終盤戦で一手が重い局面だと思っていたので、それで一手一手考えてという感じになりました。