クマの市街地出没、SNSに目立つメガソーラー原因説「すみか奪ってる」「クマ被害増加」

北海道や東北地方を中心に相次いでいるクマの市街地出没を巡り、山中に造られた大規模太陽光発電所(メガソーラー)の影響を指摘する投稿がSNSで目立っている。こうした声を支持する自然保護団体がある一方、否定的な見方をする専門家もいる。自治体には、発電所建造を規制する動きも出ており、アーバンベアの問題は再生可能エネルギーを問い直す議論へと発展している。

《メガソーラー周辺にクマ被害が増加している》《メガソーラーでクマのすみかを奪っている》

SNSでは、こうした投稿が数多く見られるようになった。

ネット上の検索の傾向を測る「グーグルトレンド」によると、ウェブ上での検索ボリュームは今年の7月1日から8月31日までの間に「クマ」は約1・5倍、「メガソーラー」は約5倍に増加しており、社会的な関心の高さがうかがえる。

再エネは、平成23年の東京電力福島第1原発事故をきっかけに存在感が高まった。太陽光発電は設置コストの低下によって設置が加速した経緯がある。

資源エネルギー庁によると、平成23年度末に531万キロワットだった導入量は、令和5年度末には7704万キロワットに到達。東電柏崎刈羽原発(新潟県、全7基計約800万キロワット)の10倍近くに相当する出力だ。

「明らかに一因」

一方、昨今目立っているクマ被害。環境省によると、4月から8月末まで、クマの襲撃が要因となった死傷者は69人だった。過去最多の219人となった一昨年の同時期(71人)とほぼ同水準となっている。

メガソーラーの建設は都市部から離れた山間部や里山に広がっており、野生動物の生息域と重なることも多い。SNSの投稿は、開発によってクマの行動範囲に変化が生じているのではないか、とするものだ。ただし、専門家の見解は分かれている。

自然保護団体「日本熊森協会」の室谷悠子会長は「クマ被害増加の背景にはさまざまな要因があるが、メガソーラーの建設がその一因となっていることは明らかだ」と話す。

室谷氏は、スギなどの人工林が増え生息域が縮小したり、温暖化で餌となるドングリが育たなかったりという理由で、クマがより標高の低い場所に移動。そこに、メガソーラー建設などに伴う森林伐採が重なり、結果として人里との距離が縮まったとの説を唱えている。

「一概に言えない」

こうした見方に対し、東京農業大の山崎晃司教授(動物生態学)は「因果関係があるとは一概には言えない」と語る。

山崎氏によると、メガソーラーの建設で山林が切り開かれることは事実だが、問題は「その土地が以前どのような環境だったか」にあるという。「たとえば、メガソーラーの建設地がスギやヒノキの人工林であれば、餌がないためクマがほとんど利用しない場所だった可能性もあり、その場合クマの出没増加にメガソーラーの建設は直結しない」と説明する。

市街地のクマ出没が増えている背景について、山崎氏は「クマの分布域拡大や個体数増加が考えられる」と分析した。

一部の自治体には、野放図な再エネ導入を見直す動きが出ている。

メガソーラー建設による希少生物への影響を懸念する北海道釧路市が6月に「ノーモア メガソーラー宣言」を行い、生息地を奪われた野生動物が人里に出没する危険性に言及。野生動物にはヒグマも想定されるという。同市は今月4日、10キロワット以上の事業用太陽光発電施設の設置を市全域で許可制とする条例案を市議会に提出した。可決された場合、施行予定は10月1日で、令和8年以降に着工する事業に適用する。(濵佳音)

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