日銀、年内利上げの可能性も 関税交渉妥結で不確実性後退

 7月25日、関税を巡る日米交渉が妥結したことで、日本経済を巡る不確実性が後退し、日銀が年内に利上げできる情勢が生まれる可能性が出てきた。写真は2024年3月、都内の日銀本店で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 25日 ロイター] - 関税を巡る日米交渉が妥結したことで、日本経済を巡る不確実性が後退し、日銀が年内に利上げできる情勢が生まれる可能性が出てきた。国内では企業の価格設定行動が積極化して食品の値上げが続いており、日銀では物価上振れリスクへの警戒感が強まりつつある。複数の関係筋によると、関税の影響をハードデータで見て、見通し実現のシナリオが確認できれば、利上げに踏み切ることが可能との見方が出ている。

ただ、日銀では、目先はまだ高関税率による経済・物価下振れへの警戒感が根強く、不確実性は依然大きいとみている。利上げはこうした不透明感が後退して、経済・物価への影響がある程度見通せるようになる必要がある。現時点ではそうした状況になく、30―31日の金融政策決定会合では金融政策の現状維持を決める公算が大きい。

23日に日米関税交渉の合意が発表され、相互関税は15%となった。日銀は前回5月の展望リポートで各国間交渉の「ある程度の進展」を前提に見通しを作成しており、相互関税15%は想定の範囲内との見方だ。一方で、関税を巡る中国や欧州連合(EU)と米国の交渉が決着していないことに加え、関税の影響が経済や物価にどの程度及ぶのかも見通せない。不確実性は引き続き大きく、日銀では、緩和的な金融環境を維持し、経済を支える必要があるとみている。

今回、日米関税合意を反映する展望リポートでは、25年度の物価見通しを引き上げる公算が大きい。前回リポート以降に発表された物価指標で、コメや食料品が主導する形で上振れが続いていることを反映する。前回リポートでは、25年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)が前年度比プラス2.2%、除く生鮮食品・エネルギー(コアコアCPI)がプラス2.3%となっていた。

ただ、26年度のコアコアCPIは前回のプラス1.8%から大きくは変わらない見通し。関税を巡り日米が合意に至ったとはいえ、関税率15%は高い水準で、今後経済が下押され、企業収益や賃上げに影響が及ぶとの見方は変わっていないという。

経済見通しも大幅な修正にはならない見通し。5月以降、関税による実体経済への悪影響が顕在化していないことや米国、中国経済の堅調推移により、25年度の実質国内総生産(GDP)は前回の前年度比0.5%増から小幅に上方修正される可能性がある。しかし、関税に伴う駆け込み需要の反動や実体経済への下押し圧力が今後顕在化してくるとみている。

日銀は前回の展望リポートで、25年度・26年度の物価見通しはともに「下振れリスクの方が大きい」とした。今回はリスクバランスの表記が変わる可能性もある。

5月以降の物価指標が上振れて推移する中、日銀では基調物価がさらに2%に近づいたとの見方が出ている。日米関税交渉の妥結を受け、各国の交渉の動向や影響をデータなどで見極めた上で、年内にも利上げに踏み切ることが可能になるとの声が出ている。

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