人口800人の町に初のコンビニ、数年前からの誘致が結実…「一つの店で買い物完結すればありがたい」
住民登録された人口が日本で一番少ない町・山梨県早川町で8日、町内初のコンビニ店がオープンする。わずか800人あまりの町民の大半は高齢者で、町内に気軽によれる買い物先がなかったことが課題だった。町では今春、約10年ぶりに食料品などを扱う売店が開店するなどしており、「開店ラッシュ」に住民からは歓迎の声が上がっている。(次井航介)
8日にオープンする「ヤマザキYショップ麓の直売所」(2日、山梨県早川町で)「人口が少ない町だが、(コンビニ店)一つで買い物が完結するようになればありがたい。生活が少しでも楽になればうれしい」
2日昼過ぎ、同町保の「ヤマザキYショップ麓の直売所」を訪れた同町の会社員(72)は、ずらりと店内に並ぶ商品を前に、うれしそうに目を細めた。
同店は8日からの本格始動を前に、8月25日からプレオープン。連日、多くの町民が訪れているという。
オープンするコンビニ店で商品を選ぶ男性(2日、早川町で)元々この場所には、日用品などを扱う「麓の直売所」があった。しかし、扱う商品数が限られており、お目当ての品がなければ、隣の身延町のスーパーなどに1時間ほどかけて行かなければならなかった。
売店で商品を整理する湯村さん(7月、早川町で)こうした状況を改善しようと、直売所を運営し、町の活性化などを目指す一般財団法人「南アルプスふるさと活性化財団」などが、コンビニの誘致を数年前から進め、ようやく実現することになった。
コンビニ店では、常時1000種類ほどの商品が用意され、菓子パンや弁当など食品も充実している。日用品に加え、地元で採れた新鮮野菜なども店頭に並ぶ。
誘致を巡っては、山間地にある早川町まで、商品を運ぶ業者がいないことがハードルとなっていた。しかし、身延町内の系列コンビニ店まで「ヤマザキYショップ麓の直売所」で扱う商品を運んでもらい、そこからは同法人の職員が持って行くことで課題をクリアし、設置が決まったという。
オープンとなる8日には、関係者を集めた式典も行われる予定だ。
10年ぶり「売店」も
早川町ではコンビニ店に先駆けて今春、食料品や日用品を販売する「売店」が、約10年ぶりに開店している。
温泉施設「西山温泉 湯島の湯」の敷地内に設けられ、カップラーメンやお菓子などの食料品や、日用品などもそろっている。
こちらも、同法人がオープンさせたもので、町民からは「買い物が便利になった」などと好評だ。
週に数回、友人たちと訪れるという同町の無職女性(87)は「今までは料理の時に何かほしいものがあっても、簡単に買い物に行くことができなかった。(売店が)できたことで気持ちが楽になった」と笑顔で話す。
早川町の人口は2017年から減少の一途。16年は1125人だったが、25年4月には812人。10年ほどで約3割減少した。半数に近い402人は65歳以上で、高齢化も深刻だ。
町内には約10年前、別の店が閉店して以降、売店が一つもない状況が続いており、1月、同法人の事務局長に就任した湯村進一さん(50)が「住民が生活しやすい環境を作りたい」と考え、売店の開店に向けて商品の集め方や従業員の確保などのために尽力したのだという。
早川町出身の湯村さんは、若い頃から「生まれ育った地元のために働きたい」と考え、大学卒業後に町に戻ってきたといい、「小さな町だが、住民の暮らしやすさや希望となるような明るい店舗にできるように努力したい」と話している。