南カリフォルニアの危機的な乾燥状態、地図データが明らかに
※本記事はクリエイティブ・コモンズのライセンスの下、『The Conversation』に当初掲載されたものである。
2025年1月上旬、南カリフォルニア全域の乾燥した状態は、強風に煽られて急速に拡大する山火事が次々と発生する要因となった。これらの山火事はロサンゼルス地域で数千軒の住宅やその他の建造物を焼失させ、深刻な被害をもたらしている。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の西部異常気象・水害センター(Center For Western Weather and Water Extremes、CW3E)の水文学者であるミン・パンは、州内の水の供給状況を調べている。この記事でパンは、南カリフォルニアの乾燥状態を図表や地図を使って説明する。
1月上旬に観測したその日、南カリフォルニアの広い地域における土壌水分量は、過去の記録のなかで下位2%に入るほど低かった。これは非常に低い数値である。
土壌水分量を示す図:2025年1月8日の計測において、ロサンゼルス周辺地域の約40インチ(100cm)までの土壌水分量は、過去の記録と比較して下位2%に位置していた。
カリフォルニア州の水文学者たちは、「水年」が始まる10月から、空の動きを注意深く観察する(訳註:水年とは、水文学において水文現象や水の流量を測定するための1年の区切りのこと)。
カリフォルニア州では5月から9月にかけての降雨が非常に少ない。そのため晩秋から冬にかけて貯水池を満たし、水の供給に必要な雪を蓄えることが極めて重要となる。カリフォルニア州は淡水の供給の約3分の1をシエラネバダ山脈の雪に依存している。
しかし、南カリフォルニアは2024~2025年の水年を非常に乾燥した状態で迎えた。11月に大気の川(細長い水蒸気の帯)によって少し雨が降ったものの、その量は多くなかった。その後、10月から1月にかけて西海岸に到達した大気の川の大部分が北上し、ワシントン州、オレゴン州、そして北カリフォルニアに流れ込んだ。
空気が暖かく乾燥していると、蒸散や蒸発によって植物や土壌の水分が失われる。そして乾いた植生は、1月上旬のロサンゼルスで見られたように、飛び火して山火事が広がる原因となるのだ。
PRISM(気候分析システム)による水年のデータ:2024年10月1日から2025年1月7日までの水年のデータにおける降水量と、1991年から2020年の平均値との差を示した図。
その結果、北カリフォルニアの水資源や積雪量は良好である一方で、南カリフォルニア州ははるかに乾燥しており、貯水の状況も芳しくない状況となっている。
シエラネバダ山脈の南部における積雪量は、1月上旬に平年を下回り始めた。
北カリフォルニア(上)とシエラネバダ山脈の南部(下)の積雪量と貯水池水位:2025年1月7日時点の積雪量と貯水池の水位を2000年から2015年の平均値と比較した図。色付きの部分はそれぞれ通常の貯水池の水位(青)と、貯水池水位に積雪量を加えた値(灰色)を表している。線は2025年の水年におけるそれぞれの推移を表している。
2025年の残り期間はどうなるか?
米気候予報センターの3月までの予報によると、今後数カ月以内にこの地域で干ばつが発生する可能性が高い。
この予報は、2025年初頭に太平洋で発生しつつある海水温の変化であるラニーニャ現象を考慮に入れている。ラニーニャ現象は南カリフォルニアに乾燥した状態をもたらす傾向にあるが、すべてのラニーニャ現象が毎回カリフォルニア州に同じ影響を与えるわけではない。
1〜2回の大雨で、南カリフォルニアの水の状況は一変する可能性がある。2023年には4月に大気の川がカリフォルニア州にやってきていた。
従って、現時点において、今後数カ月で南カリフォルニアがどれほど乾燥するかを予測することは難しい。とはいえ、乾燥する地域に住む人たちは、それがもたらすリスクに注意を払わなければならないことは確かである。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
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