対インドの「トランプ関税」50%が発動 モディ首相は国民に自立呼びかけ

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画像説明, インドの独立記念日の式典で演説するモディ首相(15日)

世界最高水準のこの関税には、ロシアとの取引に対するペナルティーとしての税率25%が含まれている。ロシアにとって、インドとの取引は、ウクライナでの戦争の重要な資金源となっている。

インドは、アメリカの関税を不公正だとし、石油の購入においては国民14億人を守るため「最良の取引」を選ぶと宣言。ロシアからの購入をやめる姿勢は見せていない。

インドは世界5位の経済大国で、アメリカにとっては、インド太平洋地域における重要な戦略的パートナーとなっている。

一方、インドにとってもアメリカは、最近まで最大の貿易相手国だった。米政府の関税措置により、インドの輸出と経済成長に悪影響が及ぶことが懸念されている。

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画像説明, アメリカの関税に抗議し、トランプ氏の似顔絵に火がつけられた(13日、インド・コルカタ)

インド政府は、米関税をめぐる国民の不安や不満を抑えようとしている。

ナレンドラ・モディ首相は今月、関税の影響を和らげようと、減税を約束した。インドは衣料品やダイヤモンド、エビなどあらゆるものをアメリカの消費者に供給しており、関税はインドの輸出主導型産業に関わる数百万人の生活を破壊するとされている。

モディ氏は15日のインド独立記念日の式典で、「私たちは自立すべきだ。切羽詰まっているからではなく、誇りからだ」と演説。「経済的な利己主義が世界的に台頭しているが、私たちは困難な状況に泣き寝入りしてはならない。それを克服しなくてはならず、他者の支配を許してはならない」と訴えた。

モディ氏は今週に入って少なくとも2回、この発言を繰り返しており、「インドで作り、インドで消費する」という明確なメッセージを発信している。

だが、その言葉の前段部分は困難さを増している。モディ政権は長年にわたり、製造業に対する補助金や生産奨励策を打ち出してきたが、国内総生産(GDP)に占める製造業の割合は15%台に低迷している。

ただ、専門家らは、長く懸案となっている税制改革に拍車をかけ、国民の手元にある金を増やすことで、政府は打撃を和らげることができるとしている。インド財務省は現在、簡素化した2段階の物品・サービス税(GST)の制度を提案している。

個人消費はインド経済の柱で、GDPの6割近くを占めている。豊作に支えられた農村部では消費は好調を維持しているが、都市部における商品やサービスに対する需要は、新型コロナウイルス流行後にITなど主要産業で賃金低下や人員削減がみられたことから、鈍化が続いている。

投資銀行モルガン・スタンレーは、モディ氏の「財政刺激策」である減税は、消費回復に役立つだろうと分析。GDPを押し上げ、インフレを引き下げるとしている。

スイスの投資銀行UBSも、GSTの引き下げは法人税や所得税の引き下げよりも「乗数効果」が大きく、「購入時の消費に直接影響し、個人消費の増加につながる可能性がある」としている。

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画像説明, 繊維産業など輸出中心の業界で働く人々の生活に、関税は大きく影響する

しかし、長らく遅れていた改革をモディ氏が急ピッチで進めても、インドの成長見通しは数年前の8%水準から大幅に鈍化しており、対外危機も一向に収まる気配がないことから、厳しい状況がすぐに変わるわけではない。

インドとアメリカの舌戦は、特にロシアからのエネルギー購入をめぐって激化の一途をたどっている。今週開始される予定だった貿易交渉はキャンセルされた。

専門家らは、50%というインドへの関税について、世界最大かつ最速の経済成長を遂げている国同士においては、貿易での制裁措置に等しいと指摘。ほんの数カ月前までは考えられなかったシナリオだとしている。

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