アングル:米小売業者、関税引き下げ合意で夏物商戦向け中国商品確保急ぐ
12日の米中合意により、向こう3カ月は中国からの輸入品に適用される関税率が145%から30%に低下。このため物流企業ポートレスによると、夏物ドレスや水着、サンダル、日焼け止めなどの商品を中国の工場に発注し、米国に出荷する手続きが再開された。
米国の電子商取引(EC)事業者が中国から航空貨物で商品を輸入する手伝いをしているポートレスのイジー・ローゼンツバイク最高経営責任者(CEO)は「関税引き下げが発表された途端、われわれの顧客は『行け行けどんどんモード』になった。彼らは『さあまた生産と出荷を始めよう』と口にしている」と語った。
夏物商戦の開始はメモリアルデーで、今年の場合は26日になる。米国の小売業者やアパレルブランドは通常、少なくともその2、3カ月前に中国から米国への商品出荷に乗り出す。
しかし今年はトランプ米大統領が4月9日に対中関税を累計145%にすると表明したことで、複数の米企業は発注をいったん停止。TDカウエンが提供するコンテナ追跡企業データによると、4月最終週に中国から米国向けのコンテナ予約は50%近くも落ち込んだ。
こうした流れは12日に逆転したが、コアサイト・リサーチの技術調査マネジングディレクター、ジョン・ハーモン氏は4月に休止したサプライチェーン(供給網)を再び稼働させるにはしばらく時間がかかる恐れがあるとの見方を示した。
中国南部の輸出拠点の1つ、東莞市にある玩具メーカー経営者のリューさんは「この2日間はとてつもなく忙しかった。われわれはコンテナを予約し、一部商品は既に深センの港に向かっている。ここ数カ月道路を通過するカーゴバスの数が少なくなっていたが、今日は港まで渋滞している」と話した。
リューさんの取引先には、個別企業としては貨物輸入規模が米国最大のウォルマートも含まれている。
<運賃高騰の懸念>
米国への出荷ラッシュが起きているにもかかわらず、貨物船運賃はまだそれほど跳ね上がっていない。国際貨物の予約・決済プラットフォーム、フレイトスのデータによると、中国から米西海岸までの12メートルコンテナのスポット運賃は12日時点で前週比3%上昇の2395ドル。これはトランプ氏の関税措置が本格化する前の駆け込み輸入が相次いだ2月の半値程度に過ぎない。
CFRAリサーチのアナリスト、アルン・スンダラム氏は、米中関税引き下げ合意は夏物商品の在庫を積み増したい米国のブランドにとって追い風とはいえ、現在の出荷ラッシュは、2021-22年のコロナ禍ほどでないにしてもサプライチェーンの目詰まりを生み出すかもしれないと警戒し、貨物運賃の上昇も予想する。
ハロウィーン用の飾りを製造する複数のメーカーは14日ロイターに、米中合意期間の90日以内で生産と出荷を急がなければならないと明かした。
ロサンゼルス港湾当局幹部のジーン・セロカ氏は、米国の事業者が夏物商戦と新学期商戦の準備を7月中には完全に整えられないかもしれないと話す。
米国アパレル靴協会(AAFA)のスティーブン・ラマー会長は、何百にも上る企業が足元で性急に商品を輸入すれば、港湾が渋滞するリスクがあると警告した。同氏は「関税戦争が新学期商戦の出荷タイミングを1カ月ほど遅らせてしまった」と述べた。
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Casey has reported on China's consumer culture from her base in Shanghai for more than a decade, covering what Chinese consumers are buying, and the broader social and economic trends driving those consumption trends. The Australian-born journalist has lived in China since 2007.