人里離れた山頂で遺体が見つかった双子の兄弟、警察は「謎が解けた」と主張 米南部

ジョージア州にある実家の机の上には双子の写真が並べられている/Lynsey Weatherspoon/Redux for CNN

ジョージア州ローレンスビル(CNN) ナージル・ルイスさんと双子の弟カーディルさんは、5分違いで生まれた一卵性双生児。20歳の誕生日を間近に控えた今年3月、2人の遺体が人里離れた山頂で発見された。捜査当局は「自殺」と断定したが、親族は納得していない。

2人ともアニメが好きで、好きな色は同じ赤、好きなディズニー作品も同じ「プリンセスと魔法のキス」。ジョージア州アトランタ郊外に住む親族らは、2人を「ピンポン」兄弟と呼んでいた。玄関のインターホンが「ピンポン、ピンポン」と鳴るように、いつも一緒だったからだという。

3月8日、アトランタから北へ車で約2時間離れたベル山の頂上で、銃で撃たれた2人の遺体が見つかった時、遺族はぼう然とするばかりだった。

捜査当局者らは当時、予備的証拠から無理心中が疑われると述べたが、遺族は信じようとしなかった。

おばのヤスミン・ブラウナーさんは先月、フェイスブックへの投稿で「2人が互いを傷つけるはずがない。強い絆で結ばれていた」「だれかが命を奪ったのだ」と主張した。

しかしジョージア州捜査局(GBI)は21日、司法解剖などの証拠に基づく結論として、2人とも自殺だったと発表した。

捜査チームによると、現場で採取された証拠から、2人とも銃を発砲していたことが判明。さらに携帯電話のインターネット閲覧履歴で、2人が自殺や銃の装填(そうてん)方法について検索していたことも分かった。

GBIはそれ以上のコメントを控えている。CNNは22日、遺族にもコメントを求めたが、返答は得られなかった。ただ、遺族はフェイスブック上の声明でGBIに反論している。

ヤスミンさんのページに投稿された声明には、「私たちは今も捜査結果に疑問を持ち、(当局が)最終的な断定を急ぎ過ぎたと感じている」と書いてあった。2人には今後の計画があり、武器も持っていなかったという。

遺族はこれまでのインタビューで、何が起きたのか理解に苦しんでいる訴えていた。GBIの新たな報告には、依然として多くの疑問点が残る。特に不可解なのは、「野心的で有望な2人の若者が、どんな理由で自ら命を絶ったのか」という点だ。

前夜にスタンドでスナックを買っていた

遺族の話によると、遺体が見つかる前日の3月7日、ナージルさんは恋人の女性を訪ねて東部マサチューセッツ州ボストンへ飛ぶ予定だった。

記録によれば、ナージルさんはチケットを持っていて、アトランタの空港まで行ったが、飛行機には搭乗しなかった。遺族がこの女性に尋ねたところ、ナージルさんはフライトを逃し、翌8日午前7時の便に変更していた。2人の遺体が見つかった日だ。

それから何が起きたかは、今もあまり分かっていない。ナージルさんとカーディルさんの義母、カアリニ・ルイスさんは当日、アトランタ郊外ローレンスビルの自宅で2人と顔を合わせたという。2人は義母、実父とこの家に住んでいた。

2人は普段、2年前に共同で買った2009年式の黒い日産アルティマを乗り回していた。この車と2人の携帯電話から、死の直前の様子が垣間見える。

GBIの捜査員は携帯電話の位置情報に基づき、2人がベル山へ向かった足取りを割り出した。そのルートに設置された防犯カメラの映像を調べた結果、ほかに同行者はいなかったと判断した。遺族は映像の公開を求めている。

ジョージア州ハイアワシー近郊にある人里離れたベル山の山頂。背後にはノースカロライナ州との州境に面したチャトゥージ湖が見える/Eifel Kreutz/iStockphoto/Getty Images

GBIの報道官は、捜査が今後数週間で正式に終了するまで、それ以上の詳細は公表できないと述べた。

手がかりのひとつは、2人の自宅から10分ほどのガソリンスタンドにあった。

2人は7日夜、このスタンドに寄って水とチップス、ビーフジャーキーを買った。代金は10ドル24セント(約1480円)、レシートの時刻は午後10時24分だった。

その夜スタンドに勤務していた店員はCNNに、2人のことは覚えていないと話した。一方、スタンドの副店長は当日店に出ていなかったが、約2週間後にGBIに提出した防犯カメラの映像を事前に見たという。

副店長によれば、映像の中で2人は8番ポンプの前に車を止めた。車のドアを開けた時にバスケットボールがコンクリートの地面に飛び出し、1人が取り戻す一幕もあった。悲劇が起きる前のつかの間、10代の若者らしさがのぞく場面だった。

2人はスナックを買った後、車に乗り込んで夜の闇に消えた。その約12時間後、山の頂上でハイカーが2人の遺体を発見した。

最後の夜は姉の部屋で

ナージルさんとカーディルさんは幼い頃からほぼずっと、ひとつの部屋を2人で使っていた。何時間も一緒にテレビゲーム「モータルコンバット」に興じたり、アニメ「東京喰種トーキョーグール」や「進撃の巨人」を見たりして過ごした。

6歳違いの姉カイリー・パウエルさんによれば、夜になるとよく2人でカイリーさんの部屋に乱入してきた。

「私のことを妹扱いして、1人で買い物にも行かせてくれなかった」「放課後に部屋へ乗り込んできて、その日にあったことを話し始め、私にもどうだったかと聞いてきた」

パウエルさんはだんだんと消え入るような声になり、目に涙があふれた。「2人にはよくいらっとさせられた」と、優しい声で語った。

関連記事: