ファンアールトが雨のパリ決戦で独走勝利 ポガチャルは2年連続、4度目の総合優勝に輝く
モンマルトルの丘が追加された新しいパリ決戦は、雨とサバイバルな展開に。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が最後の登りから独走し、ツール通算10度目の区間優勝を達成。レースを作ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)は、自身4度目の総合優勝に輝いた。最終日を迎えたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)ら4賞ジャージ着用者 photo:CorVosトリコロールが凱旋門の頭上に架かる photo:CorVos初代スーパー・チームメイト賞受賞者となったシモンズ photo:A.S.O.
7月27日(日)第21ステージマント・ラ・ヴィル〜パリ・シャンゼリゼ(平坦)距離:132.3km獲得標高差:1,100m天候:曇りのち雨
気温:19度
第21ステージ マント・ラ・ヴィル〜パリ・シャンゼリゼ image:A.S.O.ツール・ド・フランスが初めてシャンゼリゼ通りでフィニッシュを迎えてから今年で50年。この記念すべき大会の最終日に、主催者は「パレード走行〜集団スプリント」という近年の定石にひねりを加えてきた。3週間の戦いを締めくくる第21ステージは、パリ西部のマント・ラ・ヴィルをスタートし、前半に2つの4級山岳をクリア。その後はパリの観光地を巡る馴染みの6.8kmコースを3周。しかし、その後は中間スプリントを挟み、パリ五輪にも使用されたモンマルトルの丘(距離1.1km/平均5.9%)を含む、より難易度の高い16.8kmコースを3周するレイアウトだ。フィニッシュ地点は例年通りシャンゼリゼ通りだが、3度にわたる石畳のモンマルトルの丘でピュアスプリンターが生き残るのは難しい。そんな予測不能な展開が期待されたレースがスタートすると、まずは選手たちが互いの健闘を称え合うパレード走行とフォトセッションが始まった。肩を組み、総合連覇を喜ぶUAEチームエミレーツXRG photo:CorVos健闘を称え合うヴィンゲゴーとポガチャル photo:A.S.O.現役最後のツールを走るゲラント・トーマス photo:INEOS Grenadiersジョナタン・ミラン(イタリア)のマイヨヴェール獲得はもちろん、今大会存在感を示したリドル・トレック photo:CorVos今大会区間4勝を飾り、マイヨジョーヌとスペシャルカラーのバイクに跨るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)と、黄色のアクセントカラーが施されたスペシャルジャージに身を包んだチームメイトが横一列に並ぶ。また初出場ながら区間2勝を挙げ、中間スプリントではコツコツとポイントを重ねて見事マイヨヴェール(ポイント賞)を手にしたジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)も、チームメイトと肩を組み撮影に応じた。マイヨブラン(ヤングライダー賞)&総合3位と躍進したフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)はプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)らと笑顔でカメラに収まる。そしてリラックスムードの中迎えた最初の4級山岳は、フランス人3名による争いをリヨン出身のマッテオ・ヴェルシェ(トタルエネルジー)が先着。そしてポガチャル自ら先頭で牽引する場面もありながら、約1時間半の和やかなパレード走行を楽しんだ一行は、パリ市内へと到着した。凱旋門からパリ・シャンゼリゼ通りへ進む タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.ルーヴル美術館の中庭を駆ける photo:CorVosUAEチームエミレーツXRGの先導でベルサイユ宮殿の前を通過 photo:A.S.O.エッフェル塔を眺めながらルーヴル美術館の中庭を抜け、1度目のフィニッシュラインを通過。そして中間スプリントをミランが悠々と先頭通過すると、モンマルトルの丘を含む新しい周回コースに突入。それまでペースをコントロールしていたUAEチームエミレーツXRGが集団の中へと下がり、残り69.5km地点からレースが本格的に始まった。マグナス・コルト(デンマーク、ウノエックス・モビリティ)がアタックの口火を切り、今年新設された「スーパー・チームメイト賞」を受賞し、レース後にプロポーズも成功させたクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)がリポヴィッツと共に逃げを打つ。しかしアルペシン・ドゥクーニンクの牽引によって吸収されると、1度目のモンマルトルの丘(距離1.1km/平均5.9%)でジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)がアタック。その加速にはポガチャルも反応。頂上を先頭通過し、すでに獲得を確定させているマイヨアポワ(山岳賞)のポイントをさらに加算した。予報通りの雨が降り始め、2度目のモンマルトルへと入る頃に、先頭集団はポガチャルを含む28名に絞られる。その中にヴィスマ・リースアバイクは3名(ファンアールト、カンペナールツ、ジョーゲンソン)を送り込み、集団スプリントに持ち込みたいビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)やカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)、アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)らスプリンターの姿もあった。大観衆が詰めかけた1度目のモンマルトルの丘を登る photo:A.S.O.2度目のモンマルトルの丘で形成された、6名による先頭集団 photo:CorVos世界最大の自転車レースにふさわしいほど大観衆が詰めかけたモンマルトルでは、ここでもマイヨジョーヌを誇示するようにポガチャルが頂上を先頭通過する。そのハイペースにはファンアールトとジョーゲンソンらわずか4名しかついていけなかったが、石畳の滑りやすい下りを丁寧にクリアする間にマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)も合流。達成すれば43年ぶりとなるマイヨジョーヌでの最終日勝利に向け、集団先頭で踏み続けるポガチャルが意欲を見せた。2度目のモンマルトルで形成された6名に先頭集団
タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング)ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ)バッレリーニがアタックする場面もあったが決まらず、ファンアールトとジョーゲンソンを中心に全員がローテーションを回す。そして最後のモンマルトルの丘に突入。3度目もポガチャルが主導権を握ったものの、頂上手前でファンアールトがアタックを敢行した。3度目のモンマルトルでワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が仕掛けた photo:A.S.O.残り6.4km地点で飛び出したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.「最後の登りで全力を出すのは当初からの作戦だった」とレース後に語ったファンアールトは、濡れた石畳をシクロクロスで培った技術を使いながら、トラクションを掛けて駆け上がる。そしてマイヨジョーヌを引き離し、単独で頂上を通過。石畳からアスファルトに切り替わる下りを越え、フィニッシュまで続く平坦路へと入った。単独追走するポガチャルには、残り3.5km地点でジョーゲンソン、モホリッチ、バッレリーニの3名が追いつく。直後にアタックしたモホリッチはジョーゲンソンがマークし、ファンアールトへ間接的なアシストを見せた。そして水たまりのある石畳のコーナーも丁寧にクリアし、何度も振り向き後方との差を確認するファンアールト。そして20秒のリードを築き、最後までそれを守りきった。雨のシャンゼリゼに入り、勝利を確信して中継カメラに笑顔を見せたファンアールトは空を見上げ、手のひらを突き上げるポーズでツール区間10勝目をアピール。ハンドルを叩き、勝利の喜びを爆発させたファンアールトが、第112回ツール・ド・フランスを6.4kmの独走勝利で締めくくった。6.4kmの独走決め、ツール最終日を制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos「このツールで僕たちは、日々挑戦を続けてきた。今日だってチームは、僕の勝利を信じてくれた。レースを上手くコントロールし、最後の登りで全力を出した。他のステージでも同じように勝ちたかった。何度かは勝利に迫ったが、全然ダメな日もあった。自分を信じ続けることに苦労したよ。でも皆は変わらず僕を信じてくれた。今日、その努力がついに報われた」とファンアールトは語る。パリ・シャンゼリゼでの勝利は、2021年以来となる2度目だ。そしてステージ優勝こそ逃したものの、今大会区間4勝と圧倒的な強さを見せつけたポガチャルが、笑顔と共に区間4位でフィニッシュ。「言葉にならない。ツールで4度目の総合優勝と、6年連続の総合表彰台。今回は特に格別な気持ちがあり、このマイヨジョーヌを着ることができ、心から誇りに思う。中間スプリントではヨナス(ヴィンゲゴー)と、ここ5年でお互いがどれほど変化したかについて、またどれだけ高め合うことができたかについて話していた。ヨナスとの戦いはまたしても激しかった。彼には敬意を表し、彼の戦いぶりを心から祝福したい」とコメントした。最終日でも積極的に攻め、4度目の総合優勝を喜ぶタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVosチームメイトと喜ぶタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.ツールで通算10度目の区間優勝を飾ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVosツール・ド・フランス2025総合表彰台:2位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)、1位タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)、3位フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:A.S.O.総合敢闘賞に輝いたベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.初出場でマイヨヴェールを獲得したジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVosそしてライトアップされた凱旋門を背景に、今大会を締めくくる表彰式が行われた。ポガチャルら4賞ジャージの受賞者を筆頭に、総合敢闘賞に輝いたベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)、チーム総合成績でトップに立ったヴィスマ・リースアバイクがポディウムへ。選手たちは観衆からの万雷の拍手に笑顔で応え、3週間にわたる激闘は華やかに幕を閉じた。マイヨブランを守りきったフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos総合敢闘賞に輝いたベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.チーム総合でトップだったヴィスマ・リースアバイク photo:A.S.O.総合優勝に輝いたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 3:07:30 2位 ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ) +0:19 3位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス) 4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 5位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +0:26 6位 マッテオ・トレンティン(イタリア、チューダー・プロサイクリング) +0:38 7位 アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット) +1:14 8位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) 9位 マイク・トゥーニッセン(オランダ、XDSアスタナ) 10位 ディラン・トゥーンス(ベルギー、コフィディス)
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 76:00:32 2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +4:24 3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +11:00 4位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +12:12 5位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアール) +17:12 6位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +20:14 7位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +22:35 8位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +25:30 9位 ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) +28:02 10位 ジョルダン・ジェガット(フランス、トタルエネルジー) +32:42
1位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 372pts 2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 294pts 3位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) 232pts
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 119pts 2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 104pts 3位 レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) 97pts
1位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 76:11:32 2位 オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) +1:12 3位 ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) +11:35
1位 ヴィスマ・リースアバイク 232:01:32 2位 UAEチームエミレーツXRG +24:26 3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +1:24:47
text:Sotaro.Arakawaphoto:CorVos, A.S.O.