石破首相、日米関税交渉で「早期合意より国益優先」-与野党党首会談
石破茂首相は12日昼、国会内で開いた与野党党首会談で、米国との関税交渉では早期合意を優先して国益を損なうようなことはしないとの考えを示した。
党首会談は来週前半にカナダで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に実施した。石破首相は、交渉の進ちょく状況と日本の方針について話したと記者団に党首会談の概要を説明。その上で、「日米双方にとって利益となる合意を実現するということが重要であり、早期に合意することを優先するあまり、日本の国益を損なうことはない」と語った。
サミットに合わせて実施する予定のトランプ大統領との首脳会談の日時に関しては「現時点で決まっていない」と語った。首脳会談までに「一定の前進があれば、 それはそれで良い」とした。
一方、党首会談に出席した日本維新の会の前原誠司共同代表は、石破首相から日米間の立場に相当な隔たりがあり、いつ合意できるかは念頭にないと発言があったと記者団に語った。前原氏は米国と関税率の引き下げで合意した英国の事例を挙げ、撤廃にこだわらず「現実的な落としどころ」を探るよう促した。石破首相は英国の事例は参考になると回答したという。
前回の党首会談は4月4日。米政府が日本からの輸入品に対し、基本税率10%と上乗せ税率24%を課すと表明したことを受け、一連の関税措置を超党派で対応すべき「国難」と位置付けた。カナダでのG7サミットに合わせた日米首脳会談を前に、与野党間で再度認識の共有を図った形だ。
米国債
国民民主党の玉木雄一郎代表によると、党首会談では日本が外国為替特別会計で保有する米国債の扱いについても話題になった。玉木氏が日本保有の米国債について、満期を迎えた後の再投資の際に、より長めの債券に投資をすることで金利の安定化に貢献できると提案した。石破首相からは、詳しい話はできないが日米間で話し合っているという回答があったという。
米国債に関しては、前原氏も石破首相から日米の閣僚間で協議しているとの説明があったと記者団に語った。
また、立憲民主党の野田佳彦代表は、首相から農産物を守りつつ、エタノール用とうもろこしの輸入なら良いのではとの発言があったとも紹介した。
トランプ大統領は11日(日本時間12日)、一方的に関税率を設定し、今後1週間半から2週間以内に各国・地域に書簡を送ると表明。それに先立ち、ベッセント財務長官は下院歳入委員会の公聴会で、誠意を持って交渉している貿易相手国に対しては、90日間猶予している関税率の発動時期をさらに延長する可能性が極めて高いと述べていた。
日米交渉を担当している赤沢亮正経済財政担当相は12日夕、ベッセント氏の発言について「注意を最大限払い、よく情報収集し、分析の上で間違いのない対応をしていきたい」と官邸で記者団に語った。
玉木氏らが石破首相の発言として指摘した米国債に関する議論については、あるとすれば加藤勝信財務相とベッセント財務長官の間で取り上げるべき課題だと指摘。その上で、実際に両氏の間で協議されているとは「特に承知はしていない」と述べるにとどめた。