見事な完成度に唸った【家そば放浪記】第284束:いわきの台所「鮮場やっちゃば」内『食品サトー商会』で買った、松田製粉『ひっぱりそば』193円(1人前64円)
日本国内を旅した時、必ず行くのがスーパーである。どんなものが売っているのか軽く物色しつつ、向かう先は乾物コーナー。そこで、どんな干し蕎麦が並んでいるのかチェックするのだ。
干し蕎麦の連載を始めてから3年以上。誰に教わったわけでもないが、自然と「気骨あるメーカー」「その逆のメーカー」「関西に強いメーカー」なども把握できるようになっていった。
しかし、福島県、いわき駅から徒歩10分ほどの場所にある生鮮市場「鮮場やっちゃば」内『食品サトー商会』に売っていた干し蕎麦は、未だ体験したことのないメーカーだった。
松田製粉。宮城県のメーカー(製造所)らしい。なんだか今まで取り扱ったことありそうな名前だが、調べてみると当連載では “お初” だった。
さらに公式サイトをチェックしてみると、白石うーめん(白石温麺)で有名な製造所らしく、創業明治25年ということは……130年以上も続く老舗中の老舗。
こういったメーカーに出会えるのも、東京から遠く遠く離れた場所まで行く旅の醍醐味。足を使ってゲットした干し蕎麦なので、嫌が上にも期待は膨らむ。
その実力や、いかに?
デカい鍋に湯を沸かし……
5〜6分ゆでて……
冷水(氷水)で冷やし……
完成。
して、そのお味は──
ちょっとびっくり。かなりうまい。ものすごく昔、私の祖父が作った蕎麦にも似ていた。
小麦粉先行の蕎麦であるが、確かに感じる蕎麦の香りと味。山芋感もしっかりある。
太さも硬さも非常に気持ち良く、食べた後の余韻も素晴らしい。実に見事な完成度。
「家そば」か「外そば」かなら、完全に「外」。
十割、二八が比較的強い傾向にある干し蕎麦界において、何割かは不明ながら、小麦粉先行の蕎麦でここまで「うまい!」と思わせる商品に出会えたのは非常にラッキーに思える。
──と、ここまで書いて、松田製粉のサイトをあらためて熟読してみたところ、なんと松田製粉は「製麺」ではなく「製粉」と名乗る通り、粉(小麦粉)先行のメーカーだったのである。
以下に少しだけ引用したい。
「300年ほと前から、この白石市では白石温麺を作っている製麺所が数多くありましたが、その製麺所に麺の原料となる小麦粉を供給したのが弊社の始まりです。明治25年の事でした。
麺づくりを始める前に製粉業を営んでいたところから「松田製粉」という社名で現在に至っています。」
さらに引用させていただくと、
「製粉業のノウハウを生かして、ゴマ・くるみ・きな粉 などの農産乾物も製造販売致しております。全て自社で焙煎・粉砕・練りあげ~包装までを行っておりますので、美味しさや風味を逃さずお造りしています。」
──つまるところ、粉のスペシャリスト。どうりで、原材料にある小麦粉も、蕎麦も、そして山芋粉も、味と香りがしっかりしていて「ウマイ!」と感じさせるわけである。
旅中に見つけた意外な伏兵。やはり宝は、足を使って探さなければ……と痛感した会心の一撃であった。これは見つけたら、買いだ。