THE YELLOW MONKEYの本編は始まったばかり!“野性の証明”したKアリーナの夜
THE YELLOW MONKEYの全国ツアー「THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~」の最終公演が6月13日に神奈川・Kアリーナ横浜にて行われた。
2024年5月に10枚目のオリジナルアルバム「Sparkle X」を発表したのち、同年10月に神奈川・神奈川県民ホール 大ホールにて「Sparkleの惑星X」をスタートさせたTHE YELLOW MONKEY。ツアーは「BLOCK.1」「BLOCK.2」「BLOCK.3」「FINAL BLOCK」に分けられ、Kアリーナ横浜公演は「FINAL BLOCK」の最終公演として実施された。
THE YELLOW MONKEYのど真ん中をお見せします!
8カ月におよぶロングツアーの終焉の地となったKアリーナは熱気にあふれ、開演時刻を迎えると手拍子が自然発生する。ステージ前方に張られた紗幕に吉井和哉(Vo)のシルエットが浮かび上がって聞こえてきたのは厳かな「アヴェ・マリア」だ。サポートメンバーの鶴谷崇(Key)のピアノ伴奏とともに吉井の祈りにも似た歌声が優しく会場を満たしたところで紗幕が落ち、吉井は「ようこそ!」と一言。その瞬間、まばゆい照明が場内を一気に照らし、「SPARK」のイントロが高らかに鳴り響く。菊地英二(Dr)の繰り出すアッパーな8ビートにオーディエンスが総立ちで盛り上がる中、吉井は客席を指差しながら「本当の君の顔が見える」と色っぽく歌う。あっという間にKアリーナを掌握したTHE YELLOW MONKEYはノンストップで「Chelsea Girl」の演奏に突入。菊地英昭(G)と廣瀬洋一(B)はステージ中央で向かい合って楽しそうにユニゾンを響かせた。
「今夜は俺たちが一番やりたかったメニューでお届けします。THE YELLOW MONKEYのど真ん中をお見せします!」と吉井が宣言してドロップされたのは、ハードロック直系のギターから始まる「罠」。続いて吉井もギターを持ち、「野性に帰ろうぜ」と呼びかけ観客とのコール&レスポンスを楽しむ。しばしメンバーとジャムセッションを繰り広げたのちに「Tactics」へとなだれ込むと、菊地英昭はステージの端まで移動してギターソロを奏で、オーディエンスの熱狂を誘う。また菊地英二のパワフルなドラムが口火を切った「VERMILION HANDS」では、中毒性のあるサビのリフレインが観客の脳内を侵食していき、サイケデリックな空間が広がった。
FINAL BLOCKは「野性の証明」とのコラボ
本ツアーでTHE YELLOW MONKEYはブロックごとに異なるセットリストを用意。「Sparkle X」を中心に、BLOCK.1は3rdアルバム「jaguar hard pain 1944-1994」、BLOCK.2は4thアルバム「smile」、BLOCK.3は5thアルバム「FOUR SEASONS」とのコラボレーションだった。そしてFINAL BLOCKは1996年に行われた初の全国ホールツアー「TOUR'96 FOUR SEASON“野性の証明”」とのコラボレーションであることが吉井の口から明かされる。バンドにとって1996年が非常に重要な年であったことを吉井が回想しながら、「この新しいKアリーナで、最新のTHE YELLOW MONKEYのサウンドで、その楽曲たちを披露するので、とにかく楽しんでほしいと思います」と語ると、その言葉通り、タイトルとは裏腹に終始重苦しい雰囲気に包まれた「天国旅行」と、吉井の怒気を孕んだ歌声が空間を支配する「Four Seasons」が続けて演奏される。吉井が両手を広げてカットアウトで曲が終了すると、それまで微動だにせず曲に聴き入っていたオーディエンスは、何かから解き放たれたように盛大な拍手をステージに贈った。またこのブロックでは「This Is For You」「Beaver」「Make Over」といった新旧の楽曲群も披露された。
ミュージックビデオの映像が映し出され、楽曲のダークファンタジー的な世界観をより強固にした「ソナタの暗闇」を経て、バンドは「MOONLIGHT DRIVE」をエンジン全開でパフォーマンス。その勢いのまま「ラプソディ」になだれ込むと、吉井は腰をくねらせながら「今一番欲しいのは皆さんの声とダンス」と呼びかけて「オパ オパ オパ オパ オパ」の合唱を引き出し、「いいね!」と笑顔を見せた。本編ラストナンバーの「ホテルニュートリノ」の演奏に入る前に、吉井は2022年の病気治療のことを振り返りつつ、この楽曲に込めた思いを語り始める。「ニュートリノという言葉を知って、目に見えないもの、祈り、願いといったものには周波数があることがわかりました。周波数って音楽には付きものの言葉で、もしかしたら昔から言われている神がかり的なことが科学的なことと一致するんじゃないかと思ってアルバムの制作に取りかかりました。この肉体は魂のホテルだと思います。そのホテルが汚いホテルになるか、一流のホテルになるか、癒やされるホテルになるか、それは住む魂次第。そんな気持ちで歌詞を書いていくうちに、これはずっとTHE YELLOW MONKEYが歌いたかった、“神様”、“祈り”、“魂”の思いに通じるなと気付きました」と真摯に語ったあと、「楽曲はノリノリなので、ぜひ皆さんで踊って、今ある魂を大いに楽しんでもらえたらと思います。THE YELLOW MONKEYの本編は始まったばかりです!」と力強く宣言。軽快なスカのリズムに乗せて、「人生の7割は予告編で 残りの命 数えた時に本編が始まる」という歌詞を高らかに歌い上げ、充実した表情でステージをあとにした。
また集まって素敵な波長を生みましょう!
アンコールの1曲目にセレクトされたのは、テレビアニメ「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」のオープニングテーマ「CAT CITY」だ。吉井が曲の紹介をしている間に廣瀬と菊地英昭が猫ポーズする一幕もありつつ、吉井は「THE YELLOW MONKEY史上最も凶暴で血みどろな歌詞です。気分が悪くなったら近くの係員にお知らせください」と煽るも、ステージ横のモニタに映し出されたのは「ネコニャンパリ」「モフモフでたまらんぜ」といった歌詞。客席には猫ポーズをしながら踊る人の姿も見られた。
続く「SUCK OF LIFE」では吉井がマイクで菊地英昭のギターの弦を押さえ、さらにマイクを“SUCK”する素振りをするなど、色気たっぷりの官能的なパフォーマンスが展開される。最後に吉井はツアーを振り返り、「去年の10月にツアーが始まったときは続けられるのか不安だったけど、皆さんの祈りや願い、歓声、いろんな周波数がこの細胞を活性化してくれました。まだまだ俺たち元気です。このメンバーの波長と皆さんの波長がぴったり合ってこの素敵な空間が生まれていると思うので、また集まって素敵な波長を生みましょう!」と挨拶して、1996年の日本の音楽シーンを代表するナンバーである「JAM」をドロップ。サビではこの日一番の大合唱が広がり、まさしくバンドとファンの波長が合致して感動的なフィナーレを迎えた。
なお、このFINAL BLOCKのプレイリストは現在各サブスクリプションサービスにて配信されている。また「CAT CITY」は7月9日に26thシングルとしてリリースされる。
セットリスト
「THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~」6月13日 Kアリーナ横浜
01. アヴェ・マリア02. SPARK03. Chelsea Girl04. 罠05. Tactics06. VERMILION HANDS07. This Is For You08. Beaver09. Make Over10. 天国旅行11. Four Seasons12. ソナタの暗闇13. MOONLIGHT DRIVE14. ラプソディ15. ホテルニュートリノ<アンコール>16. CAT CITY17. SUCK OF LIFE
18. JAM