Googleのデータセンター予定地、OK出す前に森がごっそり消えた。警察が捜査はじめる
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長谷川賢人 ( GIZMODO編集部 )森が、なくなってました。
広さは330ヘクタール、東京ドーム約70個ぶん。場所はフィンランド北部の町、ムホス(Muhos)。Googleがデータセンターを建てる予定の土地でした。
まずは衛星写真をどうぞ。こちらが2025年10月3日のもの。
Image: Contains modified Copernicus Sentinel data 2025-10-03, processed with Copernicus Browserそして、2026年10月18日のもの。左下にあるのがムホスの町で、そこから北東に約4km。画像中央の茶色くなったあたりが、伐採後の土地です。ぽっかり空いてます。
Image: Contains modified Copernicus Sentinel data 2026-10-18, processed with Copernicus Browser以前に、福島の廃ゴルフ場がいつのまにかソーラーパネルになってた話を書きました。あのときも、木が約7ヘクタール切られていましたが、今回は330ヘクタール。約47倍です。
しかもこちらは、警察が環境損害の疑いで捜査を始めたそう。
木を切ったのがアセスの途中だった
ことの発端は2026年9月です。Googleはフィンランドに130億ユーロを投じると発表しました。Gemini、検索、マップ、YouTubeを支える設備になるとのこと。
フィンランドは涼しくて、発電でCO2をあまり出さない電気も多い。データセンターの引っ越し先として、いま人気の国なんですよね(計画中のものが145件もあるとか)。
Googleの件で問題になった予定地は2つ。ひとつがムホス。もうひとつは、約100km離れたKajaani-Otanmäki(カヤーニ近郊のオタンマキ)です。工事を進めていたのは、Googleの子会社「Tuike Finland(トゥイケ・フィンランド)」でした。
今回、問題になっているのは工事の順番です。
大きな開発の前には、環境への影響を調べる「環境影響評価(アセス)」が要ります。ムホスもオタンマキも、そのアセスはまだ終わっていませんでした。
なのに、木を切り、表土をはがし、工事用の道路を通し、溝を掘っていた。
伐採や造成の範囲は、ムホスで330ヘクタール、オタンマキで200ヘクタール弱。合わせると東京ドーム100個ぶんを超えます。
切った本数の公式な数字はありません。自然保護団体の推計では、ムホスだけで約25万本。オタンマキでさらに約15万本だそうです。
森の話かと思ったら、警察が調べてたのは「水」
Image: Kent Hasegawa-generated with Flow正直、僕は「森を勝手に切った罪」なのかと思っていました。ところが、警察が見ているのは水への影響でした。
オウル警察によると、容疑は環境損害。川や溝など、水まわりのルールを定めた法律に違反していないかを調べているとのこと。いまのところ、現場の排水と水の管理に「不備や欠陥」があったと見ているらしい。そう聞くと、少し景色が変わります。
ムホスの現場には新しい溝が約9km掘られる計画で、その大半はもうできているそうです(歩いたら2時間くらいの長さ)。すぐ近くには、オウル川という大きな川も流れています。
監督官庁は、詳しい水の管理計画を11月5日までに出すよう求めました。大雨、雪解け水、そしてこのあたりに多い酸性の黒色頁岩の土まで計算に入れて、と。
木のなくなった土地に、雪解け水がザーッと流れる。その水が溝をつたって、川へ向かう。切ったあとの土地から何が流れ出すかを心配されているわけですね。
「本当に申し訳ない」でも「法律に則っていた」
ここから話が少しややこしくなります。双方の言い分を、起きた順に並べてみますね。
9月18日。フィンランドの許認可・監督庁である「LVV」が、Tuike Finlandと地元の自治体に説明を求めました。
10月6日。LVVは2つの予定地について、準備工事をすぐに、遅くとも23日までに止めるよう求めます。従わなければ行政処分も検討する、という強めのお願いです。
Google側の言い分はこう。「森林法の要件にきちんと沿って伐採した。区域全体で自然調査をして、価値の高い自然は守った」。実際、ムホスの建築監督の担当者は6月5日に「建築法109条にもとづく準備作業は可能だ」とTuike Finlandへ書面で伝えていたそうです。
しかし、これは建築の許可ではありません。ムホス町は、建築許可もほかの許可も出していないとLVVに答えています。
一方のLVVは、自治体が建築の手続きをどう扱おうと、アセスの法律に従う義務は残る、という立場。森林法とアセスの法律、どちらの物差しで見るかで、話がまるで変わってしまうわけです。
10月13日。Googleフィンランドのカントリーマネージャー、Antti Järvinen(アンッティ・ヤルヴィネン)氏が、公共放送Yleの取材で謝りました。
「こんな状況になってしまったことを、本当に申し訳なく思っています。お詫びしたい」
ただし判断はすべて「当時の法律の、最善の理解にもとづいていた」とも話しています。専門知識の不足や不注意だった、という見方は否定したとのこと。
翌14日、Tuike Finlandは両方の予定地で「準備工事を止めた」とLVVに回答しました。ムホスでは130ヘクタールに植樹する、とも表明しています。ただ、自然保護側は「足りない」と言っているそう(切ったのは330ヘクタールなので、半分にも届かないんです)。
計画が止まったわけじゃない
フィンランド国内の空気も熱くなっています。データセンターの規制強化と地元への負担金を求める市民発議の署名は、9万3,000人を超えたとか。投資の誘致を「最優先」としていたペッテリ・オルポ首相も、ムホスの件を「冷や水」と表現したそうです。
フィンランド緑の党のオラス・テュンキュネン議員は、Al Jazeeraにこう話しています。
「言い訳の余地はありません。地元の法律は理解しておくべきだし、最高の法律家を雇う余裕もあるはずです」
意外だったのは、その先でした。テュンキュネン氏によれば、フィンランドの生物多様性をいちばん減らしてきたのは、昔からの林業大手。Googleへの怒りで、そちらへの目が緩むのも心配だ、と。うーん、思ったより問題が込み入ってきたぞ…。
そして10月29日、警察が予備捜査を始めました。ムホスの件では、LVVからのものを含めて5件の捜査要請が届いていたそうです。
ただ、計画が止まったのは、ムホスとオタンマキの準備工事です。130億ユーロの計画が中止になったわけじゃありません。アセスが終わるまでの一時停止、という扱いです。
捜査には時間がかかりそうで、終わるのは2027年中の見込み。12月に続報を出すとのこと。有罪なら会社に罰金がありうるらしい。個人が対象になるかどうかは、警察もまだ明言していません。
日本のデータセンターとアセスは?
ここで日本に目を向けてみます。ちょっと意外だったのが、日本の環境影響評価法では、現状ではデータセンターが対象事業に入っていないこと。
2026年6月15日の参議院決算委員会で、共産党の山添拓議員が「少なくともアセスの対象に」と求めました。石原宏高環境大臣の答えはこうです。
「現時点ではアセス法の対象事業に追加する予定は環境省としてはございません」
影響が著しくなるおそれについて知見がまだ十分でないこと、データセンターに着目した許認可の仕組みがないこと、が理由だそうです(国会会議録より)。
一方、自治体は自治体で動いています。東京都日野市は、データセンターの事業者に自主的なアセスを求める提案をまとめました。東京都も7月、環境や地域に配慮したデータセンターを認定して補助する制度をつくっています。
AIのための土地と水を、誰が、どの順番で確かめるのか。ムホスの捜査が終わる2027年までに、日本でも聞かれることが増える事例かも。遠い北欧の話でしょ、で終わらずに。
Source: Yle, Yle, Yle, Al Jazeera, HDblog, Lupa- ja valvontavirasto, Lupa- ja valvontavirasto, DCD, Lupa- ja valvontavirasto, The Next Web, 国会会議録検索システム, 日野市, 東京都