世界卓球2025ドーハ 「梅村礼の眼」 混合ダブルス決勝 王楚欽/孫穎莎 対 吉村/大藤 「信頼」と「分担」のバランスで一段上を

[国際大会]

2025.05.25

 世界卓球2025ドーハでは、2019年以来6年ぶりに、元全日本チャンピオン、日本代表にして、現在はTBE(タマス・バタフライ・ヨーロッパ)に勤務し、世界の卓球事情に通じた梅村ならではの眼で世界卓球で繰り広げられた名勝負を解説する。 ここでは、混合ダブルス決勝 王楚欽/孫穎莎(中国) 対 吉村真晴/大藤沙月(日本)の一戦について話を聞いた。

王楚欽(左)/孫穎莎は決勝で圧巻のプレーを見せ3連覇 吉村(左)/大藤は大藤がレシーブでチャンスをつくった

▼混合ダブルス決勝王楚欽/孫穎莎(中国) 7,8,-7,8  吉村真晴/大藤沙月(日本)

 面白い試合でしたね。中国ペアの王楚欽/孫穎莎はやっぱり圧巻でしたけど、吉村真晴/大藤沙月ペアも決して悪くなかった。むしろ、内容を見れば可能性はあったというか、序盤から力が出せていたら......という試合でした。

大藤のレシーブが効いた序盤

 まず序盤、大藤選手のレシーブ、特にチキータレシーブがすごくよかったですね。いいレシーブから相手の3球目を封じる場面もあって、中国にしっかり攻めさせない形が作れていた。あの展開はよかったですね。 ただ、序盤は、吉村選手の方が中国相手ということで「自分が点を取りに行かなきゃ」という力みが前半に出てたのはもったいなかったですね。もちろん入れるだけでは、相手に主導権を渡してしまいますが、ある程度厳しく攻めて後はパートナーに任せるくらいのつもりで打てるとよかったかもしれません。

 日本ペアは3ゲーム目あたりでちょっと吹っ切れたようなプレーが見えましたよね。レシーブも安定してたし、3球目の決定率も上がったし。吉村選手もあれくらい肩の力を抜いて振れてたら、前半から違った展開になってたかもしれません。

中国ペアの強さ

 やっぱり王楚欽/孫穎莎ペアは、男子のボールも孫穎莎が普通に止めるし、カウンターまで入れてきます。しかも孫穎莎は、場合によっては相手の男子よりも威力のあるボール打ってきます。技術もパワーも男子に遜色がない。傑出した個の力に加えて、パートナーとの信頼関係もあるので、それは強いですよね。 一方で、日本ペアはどうしても「男子が決めなきゃ」っていう意識が見え隠れしてしまいました。混合ダブルスではそうなりがちですが、今日の内容を見ると、大藤選手が十分攻守で機能していたので、もっと任せてもよかった気がします。

吉村のフォアが「はめられた」感も

 もうひとつ気になったのが、吉村選手のフォアハンドです。準決勝までのような余裕や狙い打ちはあまり見られませんでした。特にフォアハンドを打つ時に台から下げられてしまっていて、逆に中国側に時間を与えてしまっていた印象です。 中国はその辺も徹底していて、3球目・4球目でわざと前に落とすボールを入れてきて、吉村選手がフルスイングできないようにしていました。さらに、そこから持ち上げたところをカウンターされるという展開に、完全にはめ込まれてました。吉村選手はバックハンドでは高い打球点でいいボールが打てていたので、もっとバックハンドを使ってもよかったかもしれません。

「信頼」と「分担」のバランスで一段上を

 試合終盤は、日本ペアが攻撃している場面でも、どこに打っても待たれてる感じがあって、無理してコースを変えてミスというパターンが見られました。 とはいえ、全体を通して言えば、日本ペアにもチャンスはありました。大藤選手のレシーブ、吉村選手の後半の切り替え、どちらも光る場面はありました。

 あとは本当に、「信頼」と「分担」のバランス。力まず、無理せず、でも攻める。その駆け引きをもう一段上のレベルでできるようになれば、中国ペアに対してももっと肉薄できるはずです。

卓レポX(旧ツイッター)

(取材/まとめ=卓球レポート)

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