5分でサッと剥がせるジェルネイル、町工場勤務の女性が開発…製品化へ企業も熱視線

 爪を彩るジェルネイルを短時間で安全に剥がす技術を、大阪市西区の町工場で働く山下智奈美さん(32)が開発した。約30分かかる時間が6分の1程度まで大幅に短縮できる。特許申請中で、大手企業と提携に向けた協議も進んでおり、「業界革新を実現したい」と力を込める。(中山亨一)

キラキラ輝く爪に気分高揚

凝ったジェルネイルも簡単にはがすことができる

 今月6日、ネイル業界の大手企業の社員を前に、自らのジェルネイルを5分もかからず剥がすと、感心する声が上がった。製品化に向けた話し合いも進む。実家は西区の鉄工所、21歳からは鋼材会社で事務として働く。「町工場の中で成長した」という経験に、自身のアイデアを加えた技術が認められた手応えを感じる。

 ネイルを初めて試したのは成人式の時だった。キラキラと輝く自分の爪に気分が高揚した。以来、趣味になって毎月のようにネイルサロンに通った。

ジェルネイルの新たな剥離技術を開発した山下さん(大阪市で)

 つけ爪や、シールなどの種類があるネイルアートの中でも人気なのがジェルネイルだ。水あめ状のベース樹脂を爪に塗り、塗装やデザインを施すカラージェルを上塗りする。劣化を防ぐトップコートをして紫外線で固める。はがれにくいので1か月ほどもつという。

 剥がす際には、専用器具でトップコートを削り、溶剤を使ってカラージェルやベースを 剥離(はくり) させる。約30分かかり、削りかすを吸うことによる健康被害の恐れもある。

「工夫凝らして不可能を可能に」

 そこで山下さんは、爪に直接、樹脂を塗るのではなく、爪にシールを貼り、その上にネイルを施すことを考えた。ただ、シールの粘着力だけでは1か月ももたない。試行錯誤をしながら1年がかりで粘着度合いなどを繰り返し試し、接着面の新たな技術を考案した。

 これまでのジェルネイルと同様に剥がれにくく、専用器具を使うと簡単に外れる。「町工場では工夫を凝らして不可能を可能にする。そんな職人の姿を見てきたのであきらめなかった」。「MEKULERU」(めくれる)と名付け、2023年10月に特許申請した。

 開発のきっかけは、「自身の生活の質」を保つことだった。16年に出産すると、ネイルサロンを訪れる時間がなくなり、自宅でネイルを施してきた。だが、昼間に働き、夜は食事や洗濯などの家事に追われる。午後11時以降がネイルにさける時間で、睡眠時間を削ったという。「やめればいいと言う人もいるが、ネイルがあるから、家事や育児を頑張れる」。子どものためにも、自分が輝いていることが大切だと考えている。

 昨年秋、関西で行われた女性起業家のビジネスコンテストに応募すると、517社の中から30社が選ばれるセミファイナリストに進出した。そこで提携を進める企業の目に留まった。山下さんは「この技術が広がり、同じ悩みを持つママの力になれればうれしい」と期待を膨らましている。

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