マレーシアを“属国化”?「米・マレーシア貿易合意」から読み解けること…ここでも目立つトランプ政権のご都合主義(Wedge(ウェッジ))
フィナンシャル・タイムズ紙貿易担当シニアライターのアラン・ビーティが、11月6日付の論説‘The US can’t force Asian countries into its trade camp’で、米国はアジアの国を力ずくで自分の貿易圏に入れることはできない、トランプのマレーシア、カンボジアとの貿易協定合意によってもこれらの国が冷戦時のような経済的衛星国になることはない、と述べている。主要点は、次の通り。 10月末、トランプと習近平の貿易休戦により、米中の全面貿易戦争は先送りされた。しかし、米中による他国を自らの経済圏に引き込むための争いは目立たなくも続くだろう。 米中首脳会談の数日前、米国はカンボジア、マレーシアと貿易合意に達し、東南アジアでの地経学戦争で勝ったように見えた。これらの、トランプにしては異例な程に詳細な合意は、米国の輸出品に対し大きな特恵待遇を与えるだけでなく、これら東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々を米の陣営に引き入れる最初の合意となった。 表面的には、関係国が迫られ米中のいずれかを選択する政治化された貿易体制の出現のように見えるが、これらの国々は引き続き米中の間をうまく擦り抜けて行くのではないかと思われる。 マレーシアとの合意を見ると、貿易協定というよりも公式化された威圧に近い。米国が自国の国家安全保障または経済安全保障上必要と判断する輸入制限を導入した場合、マレーシアは「同等の制限効果を持つ措置を採用・維持するか、…あるいは両国が合意する実施のタイムラインに同意する」と包括的な約束をしている。また、マレーシアは米国の輸出規制に相当する措置を執ることおよび米国の好まない国(すなわち中国)との取引を制限することについても規定している。 合意はマレーシアを属国にするものだ。さらに、独立したパネルによる正式な紛争解決の規定もない。その時はトランプが裁判官、陪審員、あるいは復讐的な執行官として決めることになる。 しかし、マレーシアは、致命的な義務が生じても交渉を通じてそれを回避できると判断したようだ。同国通産相ザフル・アジズは、この合意は正式な協議制度を設けており、自動的追随ではないと言う。