アメリカが新たな対ロ制裁発表 トランプ氏、プーチン氏との対話は「何も進展がない」
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バーント・デブスマン・ジュニア記者(米ホワイトハウス)、マックス・マッツァ記者
アメリカは22日、ロシアにウクライナでの和平合意に向けた交渉を促すための圧力の一環として、ロシアの2大石油企業であるロスネフチとルクオイルに対する新たな制裁を発表した。
前日の21日には、ハンガリーの首都ブダペストで予定されていたアメリカのドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談が無期限に延期された。
ロシアは21日夜から22日朝にかけ、ウクライナに対して激しい爆撃を行い、子どもを含む少なくとも7人を殺害した。
トランプ大統領は22日、ウクライナでの和平に向け、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長と会談。その後、「私はウラジーミルと話すたびに、良い会話をしている。しかし、それらはどこにも進展しない。ただ、どこにも進展しないんだ」と述べた。
ウクライナでの戦争をめぐっては今週、和平案に関してアメリカとロシアの間で大きな相違があることが明らかになった。トランプ氏は、現在の前線における戦闘をやめることをロシアが拒否している点が、和平の主な障害になっていると示唆している。
トランプ氏は、プーチン大統領が和平実現に真剣に取り組んでいないと批判。今回の制裁が打開策をもたらす助けになることを期待していると述べ、「今がその時だと感じた。我々は長い間待った」と語った。
また、この制裁措置は「非常に強力だ」とし、ロシアが戦争をやめることに同意し、制裁が迅速に解除されることを望んでいると付け加えた。
ルッテ事務総長はこの動きを称賛し、「プーチンにさらなる圧力をかけている」と述べた。
「圧力をかける必要がある。そして、彼(トランプ大統領)はまさに今日、それを行った」
ルッテ氏はこの日、欧州のNATO加盟国とウクライナが策定した12項目の計画についてトランプ氏と協議する予定だった。この計画には、現在の前線の凍結、連れ去られた子どもたちの帰還、両国間の捕虜交換が含まれている。
この計画にはまた、ウクライナの戦後復興基金、安全保障の枠組み、ウクライナのEU加盟に向けた明確な道筋、ウクライナへの軍事支援の強化、ロシアへの経済的圧力などに関する項目も盛り込まれている。
アメリカのスコット・ベッセント財務長官は、「プーチンがこの無意味な戦争を終わらせることを拒んでいる」ことから、新たな制裁が必要だったと述べた。ベッセント長官は声明で、これらの石油企業がクレムリンの「戦争マシン」に資金を提供していると主張。「今こそ殺戮(さつりく)を止め、即時停戦を実現すべき時だ」と述べた。
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イギリスも先週、ロスネフチとルクオイルに同様の制裁措置を科した。レイチェル・リーヴス財務相は、「ロシア産の石油は市場から排除される」と述べた。
これに対し、ロンドンのロシア大使館は、ロシアの主要なエネルギー企業を標的とすることは、世界の燃料供給を混乱させ、世界的な価格上昇を招くと主張した。
また、イギリスの制裁は開発途上国などの「エネルギー安全保障に悪影響を及ぼす」とした上で、「圧力は平和的対話を複雑にし、さらなる緊張の高まりを招くだけだ」と付け加えた。
ルクオイルとロスネフチは、1日当たり310万バレルの石油を輸出している。イギリス政府によると、ロスネフチはロシアの石油生産全体のほぼ半分を担っており、これは世界の石油供給量の6%に当たる。
石油と天然ガスはロシア最大の輸出品で、中国、インド、トルコなどが主な顧客。トランプ氏はこれらの国々に対しても、ロシア産原油の購入を停止するよう求め、ロシアへの経済的圧力を強めようとしている。
イギリスのイヴェット・クーパー外相は、アメリカの制裁の動きを「強く歓迎する」と述べた。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も、22日にベッセント米財務長官と電話で協議し、「ロシアが和平プロセスに真剣に取り組んでいないこと」について話し合ったと明らかにした。
フォン・デア・ライエン委員長はまた、この日に欧州連合(EU)が承認した新たな制裁パッケージを称賛した。この制裁には、ロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入禁止が含まれている。
「EUの第19次制裁パッケージの採択が間近に迫る中、大西洋の両岸から侵略者に対して集団的な圧力を継続するという明確なメッセージを発している」と、フォン・デア・ライエン委員長は声明で記した。
英米両国は今年、ロシアのエネルギー大手であるガスプロムネフチおよびスルグトネフチガスへの制裁も実施している。