兵庫・斎藤知事「告発6項目は事実とは認められなかった」発言を検証 [兵庫県]:朝日新聞

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 「うそ八百含めて文書を作って流す行為は、公務員として失格」――。兵庫県の斎藤元彦知事が強い言葉で非難した自身に関する告発文書について、事実関係などを調べる第三者調査委員会が県に報告書を提出してから、19日で1カ月。斎藤知事の発言を検証した。

【斎藤元彦・兵庫県知事の発言】

 「第三者委員会の報告書では、本件文書に書かれた七つの事項のうち六つの事項については事実とは認められないという旨が(指摘)されました」(3月26日、記者会見で)

斎藤知事「誹謗中傷性の高い文書」

 斎藤氏らが内部告発された問題を調べた県の第三者委は、3月19日に県に報告書を提出した。

 県の元西播磨県民局長(故人)が昨年3月、斎藤氏らに関する7項目の疑惑を指摘する文書を報道機関などに配布したことについて、第三者委は事実関係を調べていた。

 その結果、第三者委の報告書は、7項目の疑惑の一つ、パワハラについて、事実と認定した。また、告発文書の作成者を元県民局長と特定し、文書作成を理由の一つに懲戒処分した県の対応を「違法」と指摘した。

 斎藤氏は報告書の受け止めを語る記者会見で、「七つの事項のうち六つの事項については事実とは認められないとされた」と発言した。その上で「誹謗(ひぼう)中傷性の高い文書であるという認識に変わりはない」とし、第三者委が「違法」と指摘した県の対応について「県としては適切だったと考えている」と語った。

 斎藤氏の発言を引用する形で、SNSでは「怪文書と判断しても仕方ない」「斎藤知事はシロ」といった反応が広がった。

兵庫県の第三者調査委員会の報告書について見解を述べる斎藤元彦知事=2025年3月26日午後2時22分、神戸市中央区、原晟也撮影

 斎藤知事が「事実と認められないとされた」としたのは、パワハラ以外の6項目の疑惑。概要は次の通りだ。

 ①片山安孝副知事(当時)が「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の五百旗頭真理事長(当時)に副理事長2人の解任を通告。五百旗頭氏はストレスを受け、急性大動脈解離で急逝した。

 ②2021年7月の知事選で、県職員が斎藤氏への投票依頼などの事前運動をした。

 ③斎藤氏が次期知事選に向けて商工会などに投票を依頼し、県幹部が随行した。

 ④斎藤氏のおねだり体質は県庁内で有名で、企業や自治体から贈答品を受領した。

 ⑤県幹部が商工会議所などに、県庁出身の県信用保証協会理事長らが企業に、斎藤氏の政治資金パーティー券を購入させるなどした。

 ⑥阪神・オリックス優勝パレードの協賛金を集めるため、金融機関への県の補助金を増額し、キックバックさせた。

第三者委の評価は

 これらの6項目について、第三者委はどう評価したか。

 ①については「県側の行為と五百旗頭氏の死亡の因果関係は不明」とする一方、片山副知事が伝えた内容が「五百旗頭氏に日常的ではない大きなストレスを与えたことは推認される」と指摘。県側はより丁寧にコミュニケーションを取る余地があったと結論づけた。

 投票依頼の疑惑を指摘した②と③については「事実は認められなかった」とし、斎藤氏や県側の問題点は指摘していない。

 「おねだり」疑惑を指摘した④については、「贈収賄と評価できるような事実はなかった」としたが、外形的に見て、贈答品の要望と受け取りうる斎藤氏の発言が複数あったと指摘した。斎藤氏が視察先でベニズワイガニ2杯の贈与を受けて自宅に持ち帰るなど、特産品の農産物や食品を持ち帰っていたことは事実と認め、「疑惑の目で見られるケースがあった」と結論づけた。

 県幹部が斎藤氏の政治資金パーティー券を購入させたとする⑤については、県が商工会議所などに圧力をかけた事実は認められないとする一方、県庁出身の県信用保証協会理事長らが名刺を配ってパーティー券販売の一部を担ったことは事実と認定した。理事長らは現役の県職員ではないため、違法性はないが、信用保証協会の「公平中立性に対する信頼を傷つけるもの」だと指摘した。

 金融機関への補助金を増額し、パレード協賛金として「キックバック」させたという疑惑に関する⑥については、メールのやりとりなどを精査した結果、補助金増額の指示は、協賛金の不足が分かる前だったとし、キックバックや見返りではなかったと認定した。ただ、補助金の増額を指示したのも、協賛金を依頼したのも片山副知事だったことから、「外形的にみて疑わしい事実の指摘」だったと評価した。

【判定結果=ミスリード】

 第三者委の報告書は、告発された疑惑7項目中6項目について、「違法な点があったとはいえない」などと認定した。一方で、告発文書について「数多くの真実と真実相当性のある事項が含まれており、『うそ八百』として無視することのできないもの、むしろ、県政に対する重要な指摘をも含むものと認められた」と記した。「事実と認められなかった」側面だけを強調するのは、誤解を与える余地がある。

ミスリード

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この記事を書いた人

添田樹紀
神戸総局|兵庫県政
専門・関心分野
国内政治、東南アジア、性的マイノリティ

2024年3月、兵庫県の斎藤元彦知事らがパワハラ疑惑などを内部告発されました。告発への知事の対応をめぐって県議会と対立しましたが、出直し選挙では斎藤知事が再選を果たしました。最新ニュースをお伝えします。[もっと見る]

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