米選挙で共和党が歴史的敗北、国防費減額が濃厚になり米軍増強も不透明に
トランプ政権と共和党は今月3日の中間選挙で上院と下院の過半数支配を失う歴史的敗北が確定的になり、国防予算案を大幅減額(1兆5,000億ドルから1兆1,000億ドル程度への縮小)して再編成するという地獄絵図が濃厚になり、米軍の戦力増強と防衛産業界に大波乱が起きるのは確実だ。
参考:‘Massacre’: Democrats flip deep-red seats as they seize control of Congress 参考:Midterm elections lives update: Voters give Democrats control of Congress in rebuke to Trump
米国の中間選挙結果は確定していないものの、主要メディアはトランプ政権と共和党の歴史的敗北=上院と下院の過半数支配を失う敗北を一斉に報じており、国民に不評なイラン戦争についてトランプ政権との決別(イラン戦争における大統領権限を制限する法案への賛成)を試みた共和党議員5人中4人も落選し、下院のジョンソン議長も中間選挙での共和党敗北を認め、トランプ大統領も「投票用紙に私の名前があれば圧勝していた」と述べた。
Thank you to the great people of Louisiana’s 4th District for entrusting us with another term tonight! We are so grateful for your support, and I will never stop fighting for our community, state, or nation.
Over the past two years, House Republicans have worked alongside President Donald Trump to deliver massive wins for the American people, including secured borders, permanently lower taxes, and safer streets. We left it all on the field in this midterm to continue building on those accomplishments. However, the American people have made the same decision that has been made in all but two midterms in the last century.
Throughout this campaign, we knew we would have to defy history to keep the House majority. However, my optimism has been driven by the grassroots energy I witnessed firsthand from coast to coast and everywhere in between. From diners to small businesses, farms to warehouses, and at 490 events across 36 states this cycle, I spoke with hard-working Americans who believe in our vision and have benefitted greatly from our policies and fulfilled promises.
While the outcome of this midterm is not what we’d hoped and fought for, a new battle is just beginning.
This Democrat House majority will be led by the most radical and extreme leftists in American history. However, Republicans will never stop fighting to defend the Constitution and protect the foundations that have made America the greatest nation in the history of the world.
We will continue pressing forward with our agenda of common sense, and our vision to make America great again—and come 2028, we WILL take back the House and we will finish the job.
— Mike Johnson (@MikeJohnson) November 4, 2026
最終的な議席数の確定には時間がかかる見込みだが、民主党は定数100議席の上院で最低でも54議席、定数435議席の下院で最低でも225議席を現時点で確保しており、トランプ政権は民主党に法律や予算、さらに大統領が任命した国防長官を含む閣僚や各省次官、大使、連邦判事などの承認権、各委員会が政府高官や民間人に対して証言や関連資料の提出を強制できる調査権限=召喚権、大統領、副大統領、連邦判事、閣僚に対する弾劾決議の権限を握られる格好となる。
要するにトランプ政権は義務的支出の成立、欧州駐留軍の縮小、都合のいい人物を高官ポストに送り込むことが困難になり、召喚権を行使されれば政権関係者や政権に近い民間人が公聴会や調査で吊し上げられるという意味で、民主党は選挙前から「中間選挙で勝利すればヘグセス国防長官を徹底的に追及する」と述べ、下院軍事委員会のアダム・スミス議員も「民主党が勝利すれば監視体制を強化する」と約束し、議会や国民に対して透明性を欠いている国防総省に対して委員会の召喚権を行使することも辞さない構えだ。
出典:DoW photo by U.S. Navy Petty Officer 2nd Class Carson Croom
召喚権を行使するリストにはイラン戦争、南米地域における致命的な麻薬取り締まり作戦、ヘグセス国防長官による多数の軍上層部の解任や昇進の阻止、ワシントンへの州兵派遣、軍の政治化、トランプ一家のビジネス取引などが含まれており、新しい下院監視委員会の委員長を務めることになるロバート・ガルシア議員も「ヘグセスは国防長官の職にとどまるべきではないし、他にも弾劾されるべき人物はたくさんいる」と述べ、共和党にもヘグセス国防長官を嫌う議員が少なくないため、ヘグセス国防長官の弾劾が絶対に成立しないとも言い切れない。
もっと直接的な影響は予算に現れる可能性が高く、これまで何度も危惧してきた歴史的な国防支出=1兆5,000億ドルを構成する「義務的支出=3,500億ドル」の成立はもはや見込みがなく、上院歳出委員会のクリス・クーンズ上院議員も選挙前から「国防総省は財政調整措置(義務的支出のこと)によって3,500億ドルを獲得できると主張し続けているがそうはならない。彼らは補正予算で1,000億ドル以上を確保できるとも主張し続けているが、戦争が続く限りその可能性は極めて低いと見ている。国防総省が要求している予算額と実際に歳出として割り当てられる額との間には5,000億から7,000億ドル規模の乖離が生じる公算が大きい」と言及。
出典:U.S. Central Command
クーンズ上院議員が言及した「補正予算で1,000億ドル以上」とはイラン戦争の戦費補填のことを指しており、国防長官府はイラン戦争が今後も継続することを見越して876億ドルからの上積みを要求しているため「1,000億ドル以上」と表現した可能性が高く、仮にイラン戦争の戦費補填として1,000億ドルを要求していれば義務的支出と合わせて最低でも4,500億ドル=約70兆円の資金を失うことになり、特に義務的支出の3,500億ドルに依存している無人機分野、宇宙分野、ゴールデンドーム、F-35関連資金、弾薬調達の大部分は実現しなくなる。
国防総省もトランプ政権や共和党が中間選挙で敗北する可能性が高まってきたことを受けて、静かに1兆5,000億ドルではなく1兆1,000億ドルの国防予算案を作成しているらしいので、当初要求から4,000億ドル=約62兆円もの資金を失えば2027会計年度に予定していた壮大な計画の多くが実現不可能になり、さらにエミル・マイケル国防次官は「もし議会が義務的支出=3,500億ドルを可決しない場合、裁量予算=1兆1,500億ドルに含まれる高額な従来型兵器を削減してでも無人機分野の資金を守るだろう」と述べているため、F-35といった高額な従来兵器の調達などは最も影響を受けやすい。
出典:Lockheed Martin
PAC-3 MSE、THAAD、トマホーク、AMRAAM、SM-3 Block IB/IIA、SM-6などの生産能力増強も義務的支出に依存しており、これまでにPAC-3 MSE増産に586億2,000万ドル、トマホーク増産に229億ドル、AMRAAM増産に207億ドル、SM-6増産に244億ドルの契約を授与したが、義務的支出が消滅すれば裁量予算に含まれる計画を縮小もしくは中止して同額の資金を捻出するか、弾薬増産自体を先送りにするか、弾薬増産のペースを落として資金供給量を薄く引き伸ばすしかなく、いずれにしても生産能力増強への投資は不確実さの中で停滞するだろう。
2027会計年度がスタートしている中で当該年度の国防予算案を大幅減額して再編成という地獄絵図は現実のものになり、2年前の大統領選挙で勝利に酔いしれたMAGA支持者は歴史的な選挙での敗北を受けて「吊るし上げる対象」を探し始め、トランプ大統領も敗北の責任が自身に向かないようスケープゴートを仕立てるのに忙しく、今回の選挙で共和党に4億4,600万ドル=約700億円を個人で献金したマスク氏も民主党支配の下院に召喚権で吊るし上げられる可能性が高いため青ざめているはずで、1兆5,000億ドルもの投資を期待していた防衛産業界も溜め息をついているだろう。
関連記事:米国防総省、中間選挙での敗北を見越して国防予算の大幅削減を検討中 関連記事:米軍の2027年予算が危機的状況、最低でも約70兆円の資金を失う可能性 関連記事:民主党、中間選挙で勝利すればヘグセス国防長官を徹底的に追及 関連記事:ヘグセス国防長官との対立で米軍は内部崩壊、今度は国防副長官の後任探し 関連記事:米陸軍長官が辞任、ヘグセス国防長官は自ら命じた陸軍改革を台無しにする 関連記事:トランプ大統領が深刻な弾薬不足について説明を要求、高まる国防長官への不満 関連記事:米軍は対イラン作戦の戦費負担で資金が枯渇、即応性維持への影響が現実化 関連記事:米国の2027年度国防予算、中間選挙の結果次第で地獄絵図になる可能性 関連記事:対イラン作戦の戦費負担、米海軍の活動資金は夏までに枯渇する見込み
※アイキャッチ画像の出典:The White House